OPECプラスの協調減産が3月31日に期限切れとなった。原油価格は既に大きく下がり、WTI原油は3月30日に一時19.27ドルと、2002年2月以来、18年ぶりの安値となった。
トランプ米大統領は3月30日、ロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、ロシアとサウジアラビアが繰り広げている石油価格戦争などについて話し合った。大統領は原油安の行き過ぎを懸念していると述べた。
ロシア大統領府によると、この日の会談は米国の提案によって開かれ、「長時間」に及んだ。両首脳は両国のエネルギー当局者が原油について協議することで一致した。新型コロナウイルスについても話し合い、感染の規模に対する懸念を共有した。
ホワイトハウスは声明で、両首脳が「世界のエネルギー市場における安定の重要性について一致した」と表明した。
トランプ大統領は電話協議に先立ち、「原油価格があまりにも安い」と不満を示した。協調減産を見送ったサウジアラビアとロシアを名指しして「気が狂っている」と痛烈に非難した。
国内のシェールオイル生産者を念頭に「ある産業が消滅してほしくない」と指摘、原油安が米国内の石油産業に打撃になるとの懸念を強調した。
大統領の懸念する通り、シェール大手のWhiting Petroleumが4月1日、Chapter 11を申請した。
ノースダコタ州のバッケン鉱区の主要業者で、2019年の売上高は約15億ドル。債権者と再編計画と基本合意しており、事業は継続する。
3月19日に、ロシアとサウジアラビア間で勃発した石油の価格戦争に自身が「適切な時期」に介入するだろうと述べている。
「ロシアは経済全体が原油収入を基盤に成り立っているが、石油価格がここ数十年で最も低くなっている。壊滅的な事態だ。サウジにとっても状況は非常に悪い。だが、両国は価格と生産の面で戦っている。適切な時期に私が介入する」と述べた。
トランプ米大統領は3月31日、歴史的な原油価格急落に歯止めをかけるため米国にはロシアとサウジアラビアと会合を開く用意があると表明した。
「われわれが共に集まり、何ができるかを見極めることなるだろう」と述べた上で、ロシアとサウジの協議に「必要なら私も適切な時期に加わる」と明言した。
大統領は4月2日、ツイッターで 、両国が最大で日量1500万バレルの減産に踏み切る可能性があるとの見通しを示した。(MBSはMohammad bin Salman)
Just spoke to my friend MBS (Crown Prince) of Saudi Arabia, who spoke with President Putin of Russia, & I expect & hope that they will be cutting back approximately 10 Million Barrels, and maybe substantially more which, if it happens, will be GREAT for the oil & gas industry!
Could be as high as 15 Million Barrels. Good (GREAT) news for everyone!
しかし、米政府当局者は同日、トランプ大統領はサウジアラビアとロシアによる原油供給削減策の正式な詳細について情報を持っていないと述べた。また、大統領が国内石油企業に対し協調減産に同意するよう要請しないことも明らかにした。
トランプ大統領の要請をうけ、サウジアラビアは4月2日、「OPECプラスとその他の国」に対し、石油市場の安定のため、緊急の会合を開くことを要請した。
「その他の国」は米国を念頭に置いていると思われる。米国抜きの従来のOPECプラスだけの減産は考え難い。
プーチン大統領は4月3日、「パートナーとして」最大の産油国である米国にも応分の負担を求める考えを示唆した。
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OPECとロシアなどのOPECプラスは過去3年余り協調減産を実施し、原油価格の維持に努めてきた。しかし、枠組みの外にいる米国のシェール業界が増産を続けた結果、参加国にはシェアを奪われただけとの不満がある。今回、サウジとロシアが大規模の増産に踏み切ったが、米国のシェールオイルが狙いであるとの見方が強い。
原油価格急落に歯止めをかけるためには、OPECとロシアの減産に加え、米国も増産しない約束が必要であるが、独占禁止法のもとで業者が協調することは違法であり、政府が生産を規制することもできない。
米下院司法委員会は2019年2月7日、石油輸出国機構(OPEC)加盟国を反トラスト法違反で提訴することを可能にする「石油生産輸出カルテル禁止(No Oil Producing and Exporting Cartels Act : NOPEC法案)」を全会一致で可決した。同様の法案が上院の財政委員会に提出された。 しかし、上院では投票に至っておらず、法律としては成立していない。
米国政府がOPEC加盟国をSherman Antitrust Actで訴訟できるというもので、Aramcoが米国での上場を避ける理由の一つである。
OPECそのものさえも独占禁止法違反としながら、トランプ大統領はこの問題にどう対応しようというのか。
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Saudi Aramco は増産と輸出拡大の準備を着々と進めている。
まず、現在の輸出量は日量10百万バレルだが、発電の燃料をAl-Fadhili gas plantからの天然ガスに切り替えることによる余剰と需要減による余剰の60万バレルを輸出に回す。
Aramcoは主要な石油関連サービス企業に対し、生産量を4月から現在の最高の12百万バレルに引き上げる計画を支援するよう要請した。更に、能力を13百万バレルに引き上げるため、必要な労働者、機器を準備するよう要請した。
業界筋では、Aramcoは「適者残存戦略」(survival-of-the-fittest oil strategy)により高コストのライバルを長期的に排除する積りだろうとしている。
Aramcoは海外にはオランダのロッテルダム、エジプトのSidi Kerirと沖縄に原油を貯蔵しているが、3月末から大量の原油をロッテルダムに送り込んでいる。早期納入可能をうたい、需要を獲得する。
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