東北大学と住友化学、高純度アルミニウム箔使用のリチウムイオン二次電池の負極を開発

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東北大学金属材料研究所の研究グループと住友化学は4月27日、高純度アルミニウム箔のみの負極材で充放電時に起こる巨大体積ひずみを回避するという、新しい機構を解明したと発表した。

リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解質およびセパレータの主要4部材から構成されており、リチウムイオンが正極と負極間を移動することで充放電が行われ、負極は、充電時に正極から移動してきたリチウムイオンを取り込む役割を果たしている。

現在の負極は炭素系材料が主流だが、電池のさらなる高容量化のために、炭素系材料に比べて3~10倍のエネルギーを蓄えられるシリコン、スズやアルミニウムなどの金属系材料の使用が期待されている。

しかし、それらの材料は、多くのリチウムイオンを取り込み大きなエネルギーを蓄えられる反面、充放電時に2~4倍も膨縮するため内部の電極構造が崩れやすい点が、実用化の課題となっている。

東北大学と住友化学は、2019年4月より連携してリチウムイオン二次電池の高容量化のための新しい負極の研究開発を行ってきた。

今回、グループは、高純度アルミニウム箔の硬さを最適化することにより、課題であった充放電時の体積膨縮の制御が可能なことを見いだした。

  • 炭素系負極に比べて数倍のエネルギーを蓄えられるアルミニウム負極について、課題であった充放電時の体積膨縮を、高純度アルミニウム箔の使用により制御できることを見いだし、その機構を解明した。

  • さらに、従来の負極は、リチウムイオンを蓄える機能の炭素系材料と、電流を集め基材の機能も果たす銅箔の積層構造とする必要があったが、高純度アルミニウム箔の使用により双方の役割を両立する「一体型負極」となることを突き止めた。
  • これらの成果は、電池の製造工程の大幅な簡素化と高性能化に貢献するものである。
  • 高容量化や軽量化、低価格化なども期待できる。

  • 次世代電池として注目される全固体電池にも、本研究の成果を適用できる可能性がある。

技術の説明:

  • 高純度アルミニウム箔の硬さを最適化することで、充電時に、箔全面で均一なリチウムイオンの受け入れが可能になる

  • 全面均一にアルミニウム-リチウム金属間化合物が形成されるが、比率が1:1でなくても化合物を作るその金属間化合物の特異な性質によって、箔表面と深部とで濃度勾配ができる。それにより、箔深部にあるアルミニウムが全面一様に表面へ押し上げられて、厚み方向のみに体積膨張が進み、充電(リチウム化)が行われる

  • 放電時は、リチウム化により体積膨張したアルミニウム-リチウム合金電極箔の表面から、リチウムイオンが放出される。リチウムイオンを放出すると、次の充電においても効率的にリチウムイオンを受け入れるよう、多くの孔が開いたアルミニウム構造を作り出す

  • 箔の底部のアルミニウムは変化せず、電流を集め、電極構造を維持する銅箔の代替となる。すなわち、高純度アルミニウムだけで双方の役割を両立する一体型負極となり得る

本成果は、Nature Communications誌に4月13日付けでオンライン掲載された。
   Circumventing huge volume strain in alloy anodes of lithium batteries



住友化学グループはすでに正極材、セパレーターを事業展開しており、今回の成果を基に負極材にも参入を目指す。

まず3年後をめどに試作品を開発したのち事業化する考えで、事業売り上げ数百億円を視野に入れていく。

リチウムイオン二次電池用セパレータ(「ペルヴィオ®」)

ポリオレフィン基材にアラミド樹脂で耐熱層を形成することにより電池の安全性確保に寄与する点が特長で、主に車載用途で採用されている。

大江工場(愛媛県新居浜市)、韓国大邱市の子会社SSLMで製造

正極材(「エナヴィオ®」)

世界的に供給が不足しているレアメタルのコバ ルトを使用しない正極材

子会社田中化学研究所(福井市)で製造


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