ファイザー、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を米国で開始

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米製薬大手Pfizer Inc.は5月5日、ドイツのバイオ医薬スタートアップ企業のBioNTech SE と共同開発する新型コロナウイルスの予防ワクチンの臨床試験(Phase1/2) を米国でも始めたと発表した。

4種類のRNA(リボ核酸)ワクチン候補 BNT162 をヒトに接種し、安全性を確認する。ドイツで4月に先行して同段階の治験を開始した。早ければ年内に数百万本を生産する。

ワクチンの臨床試験では通常、安全性の検証(Phase 1)から開始するが、今回はワクチン開発を加速化させるため安全性と免疫システムの反応(Phase 2) を同時に検証する。

先ず、NYU Grossman School of Medicine と University of Maryland School of Medicineで始め、その後、University of Rochester Medical Center/Rochester Regional Health とCincinnati Children's Hospital Medical Center で実施する。

健康な360人を18-55歳と65-85歳の2グループに分けて実施する。先ず、若いグループで安全性と免疫システムの反応が確認された時点で、高齢者層のグループの臨床試験を開始する。

世界各地でワクチンの開発が進められており、いくつかの種類があるが、同社のは「mRNAをベースにしたワクチン」で、抗原となるたんぱく質をmRNAで発現させ、それに対応した抗体が体内で産出されるよう促すもの。

それぞれ異なるmRNA構造と標的抗原を有する4種のワクチンをテストする。
4つのワクチン候補のうち2つは修飾ヌクレオシドmRNA (modRNA)を含み、1つはウリジン含有mRNA(uRNA)を含んでおり、4つめは自己増幅 mRNA(saRNA)を利用している。

まず、18~55歳の健常成人を約200名組み入れ、1~100 µgの用量を投与して今後の臨床試験の至適用量を検討するとともに、ワクチン候補の安全性と免疫原性を評価する。
加えて4つのワクチン候補のうち、uRNAまたはmodRNAを含む3つを反復投与した際の効果も評価する。

COVID-19感染症が重症化するリスクの高い被験者(65-85歳)は、本試験の2つ目のパートに組み入れる。

臨床試験に当たり、BioNTechがワクチンを提供する。

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BioNTech はオーストリアのPolymun Scientificと組んで、ドイツのMainz及びIdar-Oberstein工場でmRNA を生産している。


Pfizer とBioNTech は
2018年にインフルエンザ予防を目的としたmRNAワクチンの開発のために共同開発契約を結んだ。

この契約に基づき、両社は3月19日にコロナウイルスに対するmRNAワクチンの共同開発および流通(中国を除く)に関する覚書について合意した。

BioNTechのmRNAワクチンBNT162の開発を加速することを目的とする。米国とドイツを含む両社の複数の研究開発施設を活用する。

これを基に、今回の契約となった。

BioNTech は3月16日、Shanghai Fosun Pharmaceutical (上海復星醫藥)との間で、BioNTechのCOVID-19のmRNAワクチン候補であるBNT162の中国での開発のための戦略的開発及び商業化協力契約を締結した。

BioNTechの供給するBNT162を使い、復星醫藥の中国における広範な開発、規制対応、商業化の能力を活用し、中国で共同で臨床試験を実施する。

中国で承認を得られた場合、復星醫藥が中国で販売する。中国以外の全世界での開発・販売権はBioNTech が持つ。

なお、復星醫藥BioNTech に50百万ドルを出資した。

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臨床試験の成功を予想し、両社は供給体制を増強している。

Pfizerは承認を前提に世界中に供給すべく拡張に着手している。同社の米国3工場 (Massachusetts, Michigan and Missouri) とベルギーのPuurs工場を製造工場に決め、更に追加工場を決める。2020年に数百万本を供給、2021年に数億本に増やす。

BioNTechも既存のドイツのMainz及び Idar-Oberstein工場で能力増強を図る。

承認取得後、BioNTech と Pfizer は中国を除く世界全体で共同で販売する。

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世界で開発中の新型コロナウイルスワクチンは70種類に上るとされる。

米国のModerna, Inc. がmRNAワクチン「mRNA-1273」の臨床試験(Phase 1) を行っている。

同社は4月16日、開発加速のため米厚生省の生物医学先端研究開発局から最大4億8300万ドルの拠出を受けると発表した。

付記

スイスの製薬会社Lonzaは5月1日、Modernaのワクチン「mRNA-1273」の製造契約を締結したと発表した。

7月にもLonza U.S. で製造した最初のバッチを供給する。

また、INOVIO Pharmaceuticals がDNAワクチン「INO-4800」の臨床試験(Phase 1)を行っている。

中国では、Cansino Biologics(康希諾生物)と中国人民解放軍軍事科学院軍事医学研究院生物工程研究所が共同開発したウイルスベクターワクチンが第2相試験の段階にある。




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