米上院、中国企業の上場規制強化案を可決 

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米上院は5月20日、米国に上場する外国企業に経営の透明性を求める法案(Holding Foreign Companies Accountable Act)を可決した。

2019年に共和党と民主党の議員が超党派で提出し、継続審議になっていた。今後は下院の審議に委ねられる。

米国内で上場する外国企業に対し、米企業と同じ規制に従うことを求める形をとる。

米国に上場する外国企業で、①その監査法人が3年以上連続して米国公開企業会計監視委員会(PCAOB)による検査を受けないもの、②外国政府の支配下にないことを示す書類を提出しない企業は上場廃止とするというものである。

対象となるのは、その企業の監査をする監査法人が① 外国にあり、②米国公開企業会計監視委員会(PCAOB)による検査を受けないもの。米国の監査法人が監査をする場合は対象外である。

米国公開企業会計監視委員会(PCAOB:Public Company Accounting Oversight Board)は2002年にアメリカ合衆国の上場企業会計改革および投資家保護法(SOX法)に基づき設置された非営利法人で、企業の監査を監督することを通じ、投資家利益の保護及び監査報告書発行における公益性を高めることを目的とする。

日本における公認会計士・監査審査会(金融庁の下部組織)に相当する。

この法案で、対象企業の監査法人が3年以上連続してPCAOBの検査を受けない場合、米国で上場廃止となる。

中国政府はPCAOBによる自国監査法人の検査を認めておらず、米国上場の中国企業で中国の監査法人の監査を受けている場合が問題となる。その中国監査法人が3年以上連続してPCAOBの検査を拒否した場合、その中国企業は米国で上場廃止となる。

また、対象企業は、自社が外国政府の所有でないこと、又は外国政府に支配されていないことを示す書類の提出が求められる。(そうでないことの証明は難しいが。)
提出しない場合、上場廃止となる。

提案議員は背景を下記の通り説明している。

米議会は2002年に公開企業の監査を検査するためにPCAOBを設立した。企業が大衆に供与する情報が正確で、独立性があり、信頼性があることを保証するためである。

しかし、中国政府はPCAOBが中国と香港に登録された企業の監査を検査することを認めていない。

SECによると、米国で上場されている224の企業がPCAOBの検査を受けない国にある。

PCAOB はこれまで、米国上場を求める中国企業の中国の監査法人からの数値の正確性について多くの懸念を示してきた。

過去10年で、米国で資金を得るために米国に上場する中国企業の数は著しく増えている。

この法律は、実際には中国企業を対象としており、中国企業の「締め出し」につながりかねない内容で、中国政府の反発を招きそうだ。

中国側が自国監査法人の検査を認めるか不透明である。

現在拒否している理由は明らかではないが、米規制当局による「主権の侵害」を気にしているとの見方がある。
監査法人の持つ自国企業の財務諸表に共産党に関連する内容が含まれ、検査を通じた情報の漏洩を懸念しているとの指摘もある。

実際に法律が執行された場合、中国企業の上場維持は難しくなる可能性がある。

米株式市場には電子商取引大手のアリババ集団やインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)、中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)系の音楽配信サービス会社など中国の有力民間企業が多数上場するが、こうした企業は中国・共産党の影響下にないことをSECに説明する必要がある。

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別途、米証券取引委員会(SEC)は2月19日に、4大会計事務所に対して、米国上場の中国企業への監査態勢を強化するよう促した。特に新型コロナウイルスの感染拡大によって事業リスクが増大している点を考慮するよう求めている。

BIG 4 は米上場中国企業合わせて約140社の監査を担当しており、これらの企業の経営やリスク開示の状況をきっちり監視することを求めた。



NASDAQは近く、新規株式公開(IPO)に関する新たなルールを発表する。

中国を含む一部諸国の企業のIPO規模について、最低2500万ドルか、上場後の時価総額の少なくとも4分の1という基準を設ける。

中国企業による多くのIPOの規模はこの基準を下回っており、株式はインサイダーの少数グループが保有し、流通量が少ない。一部の中国企業のNASDAQ上場が難しくなる。

上場申請企業の監査状況もより厳しく審査する方針。

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