Bayer、子会社Monsantoの訴訟の大半を決着

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Bayerは6月24日、2018年6月に買収したMonsantoの訴訟の大半を決着させたと発表した。除草剤 Roundupの発癌問題、除草剤dicamba の飛散による農産物被害問題、Monsantoが製造していたPCBの水質汚染問題などである。

Roundup訴訟では将来の訴訟分も含め、101~109億ドルを支払う。dicamba訴訟では4億ドル、PCB訴訟では8億2千万ドルを支払う。

支払は内部留保分とAnimal Health部門売却収入で賄う。

Bayerは2019年8月20日、米国の Elanco Animal Health との間でBayerのAnimal Health 事業を売却する契約を結んだと発表した。2020年央に取引を完了する。

売却額は76億米ドルで、うち53億ドルは現金で、残り23億ドルはElanco株で決済する。Bayerは受け取ったElanco株式を時間をかけて売却する意向。

2019/8/27 Bayer、Animal Health事業をElancoに売却 

1) Roundup

BayerによるMonsanto買収直後の2018年8月10日に、カリフォルニアの陪審員がモンサントの除草剤 Roundup による発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。Roundup については、全米で7月末で約 8千件の訴訟があるが、最初の裁判である。

原告は学校の校庭の管理人で、30年以上にわたって除草剤を扱ってきたが、非ホジキンリンパ腫にかかっており、医者は2020年まではもたないだろうとしている

米カリフォルニア州地方裁判所の陪審は2019年3月19日、「Roundup」を長年使用し、喉に悪性リンパ腫を患った男性がモンサント側を相手取って訴えていた裁判で、ラウンドアップががんを発生させた「事実上の要因」だったとの評決を下した。

2018/8/28 Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決 

これらを含め合計3件で陪審員による多額の懲罰的賠償評決があり、それらを裁判官が大幅に減額した。

原告   陪審員 裁判官判断
1 校庭の管理人   カリフォルニア 2018/8/10 Superior Court 2018/10/23
損害賠償 39百万ドル 39百万ドル
懲罰的損害賠償 250百万ドル 39百万ドル
2 Edwin Hardeman   カリフォルニア 2019/3/27 地裁 2019/7/16
損害賠償 527万ドル 527万ドル
懲罰的損害賠償 75百万ドル 20百万ドル
被害に対して15倍もというのは違憲
3 Pilliod 夫妻   カリフォルニア 2019/5/13 Superior Court 2019/7/25
損害賠償 55百万ドル 17 百万ドル
懲罰的賠償 20億ドル 69百万ドル 
陪審の懲罰的賠償は過大で憲法違反

2019/7/27 モンサントの除草剤 Roundup による発癌被害裁判、裁判官が陪審の懲罰的賠償を大幅減額 

今回の解決は、訴訟分とまだ訴訟に入っていない分を合わせて約125千件のうち、約75%を包含するものである。将来の訴訟分も含めるメカニズムになっている。

現在の訴訟分については88~96億ドルを支払い、予想される将来の訴訟については12億5千万ドルを引き当てる。

Bayer内部では承認済で、最終的にカリフォルニア連邦地裁の判事の承認が必要となる。Bayerは責任も不正行為も認めていない。


なお、既に1審が終わっている3件はこれに含まれず、控訴審で審議される。

2番目の裁判では、1審で「除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されておらず欠陥である」との陪審員の判断を裁判官は否定せず、有罪にした。

米EPAと司法省は12月20日の控訴審で、friend of the court brief (=amicus curiae:個別事件の法律問題で第三者が裁判所に提出する情報または意見)を提出した。

このなかでEPAは、EPAはRoundupのラベルを調べ、承認したこと、Roundupには発癌性はなく、このため、発癌性の危険を表示する必要性はないとした。判決は覆すべきであるとしている。

EPAは発癌性を認めず、製品ラベルには当然、発癌性の危険は表示されていない。しかし、カリフォルニア州は発癌性製品のリストに含めており、発癌性の危険が表示されていないのは違法となる。
原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こし、一審の裁判官もこれを認めたもの。

EPAと司法省は、ラベルは法律で認めたもので、それと異なるやり方での使用は法律違反であるとし、州は農薬の販売や使用を制限することは出来るが、国が承認したラベルと異なるもの、追加したものを求めることは出来ないとしている。

控訴審の裁判官は

IARC は'probable carcinogen' としたが、カリフォルニア州の 'known to the state of California to cause cancer' とするのはミスリーディングである。

IARC以外は全て、glyphosateには発癌性はない、又は、発癌性を示す十分な証拠はないとしている。

2) 除草剤dicamba 訴訟

Bayer(旧 Monsanto)とBASFの除草剤で収穫被害を受けたとして、米国の農業従事者が両社を相手取って起こしている係争で、ミズーリ州の連邦裁判所の陪審団は2020年2月15日、総額265百万ドルの損害賠償を命じた。うち15百万ドルが損害に対するもので、残り250百万ドルが懲罰的賠償である。

ミズーリ州最大の桃の栽培業者のBader Farmsが訴えていたもので、近在の農家が散布した除草剤ジカンバ(Dicamba) の影響で桃が枯れ、2000年代初めに平均して162千ブッシェルあった収穫が2018年には12千ブッシェルまで減り、廃業に追い込まれたとして、20.9百万ドルの損害賠償を求めて訴えていた。

2020/2/26 BayerとBASFによる除草剤被害で米裁判所が損害賠償命令

同様の被害を受けたとして多くの原告が訴えている。

Bayerはミズーリ地裁で争っている2015~2020農業年度の被害について和解する。Bayerは共同被告のBASFも参加することを願っている。

同社は同剤とその散布技術(VaporGrip™) の安全性と有効性に自信を持っており、これを使う農家の教育・訓練を高めるとしている。

3) PCBによる水質汚染

Monsantoは1977年に止めるまでPCBを合法的に生産していた。

PCBにより被害を受けたとする地方政府のクラスアクションで、650百万ドルを支払う。

別途、New Mexico, Washington, District of Columbiaの司法長官に対し、PCB被害に対し合計170百万ドルを支払う。

なお、2003年8月に、旧Monsantoがアラバマ州で健康への危険を隠蔽しながら河川にPCBを投棄したとの住民訴訟に対し和解が行われ、Solutia、Monsanto、Pharmacia の3社が不正行為を認めないまま総額6億ドルの賠償を行なうこととなり、Solutia はそのうち5千万ドルを負担した。

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