トランプ大統領、ロブスターでEUと中国に対抗関税警告

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トランプ米大統領は6月5日、EUと中国が米国産ロブスターに対する関税を撤廃しなければ、対抗措置として関税を発動すると警告した。

メーン州で面会した漁業関係者が「隣のカナダはEUと貿易協定を結んでいるのでロブスターに関税がかからず、我々は不利だ」と不満を伝えると、「欧州や中国がロブスターへの関税をやめなければ、我々も関税を課す」と述べた。

EUに対しては、「EUが早急に関税を撤廃しなければ、EUから輸入する自動車に同等プラス("equivalent-plus")の関税を課す」と述べた。 中国に対しては、追加関税対象となる中国製品(中国にとって大事なもの)を特定するようナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)に指示とした。

トランプ大統領は同時に、オバマ前大統領が課したメイン州海岸沖の5000平方マイルの海域での漁業制限を直ちに撤回する命令にサインした。

メイン州ロブスター商工会議所会長は、「メイン州には許可証を持ったロブスター養殖業者が約4500人おり、2018年のロブスター産業の雇用者は約1万~1万2千人ほどだった。中国市場への再進出が私たちロブスター関係者の長期的な経済成長にとって非常に重要だ」と話す。

メーン州は小さな州だが、トランプ大統領は2016年の前回の大統領選で僅差で敗北しており、重要視している。

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(EU)

EU市場は米国のロブスター輸出の15~20%を占め、2億ドルの市場である。

これまでカナダとは市場を分けており、カナダ産は主に北欧、米国産は南欧(スペイン、イタリア、ギリシャ)が主であった。

カナダ・EU包括的経済連携協定(CETA)が2017年9月21日に暫定適用が開始され、カナダ産ロブスターはこれまでの関税 1ポンド当たり約1ユーロがゼロとなり、競争力が高まった。

この結果、カナダ産ロブスターは南欧でも米国産の市場を奪うようになった。

FTAを締結して関税を下げるのは当たり前のことであり、米国もEUとFTAを結べば、同様の優遇が受けられる。それを不当として制裁関税をかけるというのはおかしい。

トランプ大統領は2018年にもEUの自動車に追加関税をかけると脅している。

米政府は2018年5月31日、カナダ、メキシコ、EUに対し鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税を適用すると発表した。適用は午前0時からで、税率は鉄鋼が25%、アルミニウムが10%。

これを受け、EUの欧州委員会は6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

トランプ大統領は6月22日、「EUが関税や障壁をすぐに取り除かないなら、輸入自動車全てに20%の関税をかける。米国で生産せよ!」と呟いた。

これに対し、EU側は米国産の大豆とLNGの調達を減らすと対抗した。

結局、トランプ米大統領は7月25日に、訪米中のJean-Claude Juncker 欧州委員長と会談し、関税引き下げに向け EUと協力することで合意したと述べた。

米国は2019年5月17日、輸入自動車や部品に対する関税の判断を最大6カ月延期すると正式発表した。

2019/5/20 米、輸入自動車・部品の通商拡大法232条の判断延期

今回も、脅しは効かないだろう。

(中国)

10年前までは中国のロブスター輸入は少額であった。その後、ミドルクラスが増えた中国では、ロブスターは新たなステータスシンボルとなり、輸出は毎年倍増してきた。

アメリカ海洋漁業局によれば、2019年前半の中国へのロブスターの輸出は、前年比で量にして82%、金額では79%も減少した。
2019年上半期のカナダ産ロブスターの対中輸出量は約1万3600トンに上り、2018年全体の輸出量とほぼ同じだった。

カナダ・ロブスター協会では、中国のロブスター消費は近年増加しているが、いまのように輸出が絶好調なのは、米国への中国の追加関税がなければありえなかっただろうしている。

米国産の輸出減は自業自得である。

トランプ米政権は2018年6月15日、中国の知的財産権侵害への制裁措置として、中国による知財侵害の被害額と同規模の500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課すと発表した。

これを受け、中国商務省は2018年6月16日、報復措置として、659品目、総額500億ドル規模の米国製品や農水産品に25%の追加関税を課すと正式発表した。 ロブスターはこれに含まれた。

米国は第二次、第三次、第四次と制裁を引き上げ、中国も対抗した。

米中両政府は2019年12月13日、貿易協議の「第一段階」で正式合意したと発表した。2020年1月15日、「第一段階貿易合意」の署名を行った。

米国は1次~3次の2500億ドル相当分の25%関税は据え置き、中国もこれに対応する1100億ドル相当分の関税を(9月11日除外分を除き)据え置いた。

この結果、米国産ロブスターへの25%追加関税は残ったままである。

2019/12/16 米中貿易協議、第1段階で合意 


今回のトランプ大統領が問題視するロブスター関税は、自らが発動した中国品への追加関税への対抗であり、半年前に自らの判断で据え置きを認めたものである。

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