住友化学の樹脂製蓄熱材、建材メーカーのシート状潜熱蓄熱建材に採用、カネかも同様製品を発売

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住友化学は6月18日、同社が開発した樹脂製蓄熱材「ヒートレージ®」が、このたび、建材メーカーから販売されたシート状潜熱蓄熱建材に採用されたと発表した。

同社は2016年に熱を蓄える機能を備えた樹脂「ヒートレージ®」を開発した。

分子構造を設計する際に一定の温度で「相変化」が起きる特徴を持たせた。
この樹脂に熱を加えると、内部の結晶の構造が変化しながら、熱を蓄える。
熱を蓄えた状態から冷却すると、今度は熱を放出しながら徐々に元の構造に戻っていく。

従来の低分子系蓄熱剤は温度が上がると、固体から液体に変る。
このため、蓄熱して液化した場合に樹脂が漏洩しないよう、アルミパックやプラスチック、カプセルなどの容器に封入する必要がある。


「ヒートレージ®」は蓄熱する温度域においても固体の形状を維持する。熱を蓄えた状態では樹脂を触った感触がやや柔らかくなるものの、形状を保持する性質が高い。
熱を蓄えた状態から冷却すると、熱を放出しながら徐々に元の構造に戻っていく。


「ヒートレージ®」は相変化を利用して、20~50℃の範囲内の所望の特定温度域で熱の出し入れをするように設計された樹脂で、 一般の樹脂と同様、押出や射出、紡糸などの成形加工を容易に行うことができる。

蓄熱しても、液化して漏洩することがないため、容器に封入する必要がない。そのため、蓄熱材成形品の切断や釘打ちといった加工の自由度を高めることができる。

通常の樹脂と同様、射出成型機での加工に対応する。発泡剤を混ぜると発泡樹脂にできるなど、通常の樹脂材料と同じような加工ができる。粒状のペレット状で出荷する。

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一般的に、潜熱蓄熱建材は冬期に限定した目的で使用されている。

冬季において昼間の熱を潜熱蓄熱建材て蓄熱して、日射による室温の温度上昇(オーバーヒート) を抑え、夜に放熱することで夜の暖房負荷低減と室温の安定化 が可能になる。


 日本潜熱蓄熱建材協会

しかし、夏期では日中の屋根面の表面温度は外気温に対して非常に高温になり、室内温度の上昇につながる。一度室内空間に入った熱は夜間も逃げにくいといった課題もある。


住友化学は、建材メーカーとともに、日本の家屋の弱点の一つである夏期の屋根の熱遮断能力不足を克服するための材料として「ヒートレージ®」を活用できないか検討を進めてきた。

その結果、屋根材料の発泡プラスチック系断熱材の中間に「ヒートレージ®」を配置することで、夏期日射ピーク時には室内侵入熱を大幅に削減する効果があり、さらに一日を通して、冷房負荷の軽減と省エネルギー効果が得られるため、今回の採用に至った。


「ヒートレージ®」を用いた製品が社会で実装・ 販売されることは、今回が初めて。

同社では、建材用途以外でも、さまざまな分野で省エネルギー化や人々の暮らしの快適性向上に寄与すると考えている。

例えば、シート状または綿状にして自動車のルーフや内装材に用いることで、家屋の屋根材の場合と同様に省エネルギー性や快適性を高める 。
服飾では、衣服内気候を快適に保ち、心地良さを継続させることが可能になる。

これからも市場の潜在ニーズを発掘することで、既存事業の枠を超えた新たなアプリケーションへの展開などにつながる新規製品・技術を開発し、サステナブルな社会の実現に貢献できるソリューションを提供して いくとしている。

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カネカは6月18日、特殊樹脂製潜熱蓄熱材を用いたシート状の潜熱蓄熱建材「パッサーモシート」を開発し、6月から販売を開始したと発表した。

「パッサーモシート」は、特殊樹脂製潜熱蓄熱材を使用し、厚さ約1mmのシート状に押出成形した潜熱蓄熱建材。

屋根部に「パッサーモシート」と押出法ポリスチレンフォーム断熱材(「カネライトフォーム」)などを組み合わせて使用することで、屋外からの熱を「パッサーモシート」が蓄熱し熱の流入を抑え、夏期日中の日射ピーク時の室内への熱流入を削減する。加えて、夜間には蓄熱した熱を屋外に排熱することで、一日を通して冷房負荷を軽減し、省エネに貢献する。

熱材の相変化を利用して、20~50℃の範囲内の特定温度域で熱の出し入れをするように設計されており、押出成形したシートは、従来とは異なり、蓄熱する温度域において固体の形状を保つ。

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