米、デジタル税を巡る国際協議からの撤退を示唆

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米通商代表部(USTR)のRobert Lighthizer代表は6月17日、下院歳入委員会の公聴会で証言し、Mnuchin米財務長官がデジタル税を巡る国際協議からの撤退を決めたと伝えた。

「さまざまな国が歳入を増やす最も簡単な方法は他国の企業に課税することだと決めている状況にあり、それが米企業に降りかかっている 。米国はそれを許さない」と述べた。米テクノロジー企業の収益に課税しようとする各国と合意に至らなかったという。

但し、交渉の余地を認めた。

英 Financial Times は先に、Mnuchin財務長官が6月12日の書簡で欧州に米国の決定を通知したと報じていた。

財務省の報道官は声明で、各国政府が新型コロナウイルス対応と経済再開に集中できるよう、米国は「協議の一時停止」を提案していると述べた。

フランス経済・財務省の報道官は、同国が書簡を受け取ったことを電子メールで明らかにし、政府として他のEU諸国と共に対応に取り組んでいると述べた。

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デジタル課税を巡る議論は経済協力開発機構(OECD)を中心に2020年末の最終合意をめざすが、各国の意見が折り合わず議論が難航している

OECDは2019年10月9日、高収益を上げている多国籍大企業(デジタル企業を含む)の消費者向け活動の拠点がどこにあるか、どこで収益を上げているかにかかわらず、確実に納税するための新枠組み案を公表した。

一部の利益とそれに対する課税権を多国籍企業の市場がある国・地域に割り当てることを提案している。

対象は連結の売上高が7.5億ユーロ以上で、利益率が10%超の「消費者向け」ビジネスを行う大規模企業
採掘産業、コモディティ、金融サービス等は除外)

対象となるグローバル企業の利益を分割し、それぞれに別個に課税する。

通常利益 一般的な利益
(OECD案では利益率10%分)
従来通り 恒久的施設(Permanent Establishment) を置く国が課税権を持つ。
超過利益 ブランド力や知名度といった「無形資産」で全世界の消費者から稼いだ利益 各国での売上高の割合に基づいて課税

「2020年までに合意に達することができなければ、各国が一方的措置を執るリスクが高まり、すでに脆弱なグローバル経済にさらにマイナスの影響を及ぼすことになる。それを座視するわけにはいかない」としている。

2020/1/29 デジタル課税を巡る問題 

Mnuchin米財務長官は2019年12月3日付でOECDのグリア事務総長に 書簡を送った。

「米国は独自のデジタル課税に強く反対する。米企業活動に差別的な影響を及ぼす」 とし、改革案に強い懸念を示した

国際課税ルールの改革を大筋で受けれ入れているものの、既存もしくは新しい課税ルールいずれを適用するかは多国籍企業に選択肢を与えるべきと主張し、「セーフハーバー(適用免除)制度」を提案した。

これは骨抜きであり、他国にとっては許容しがたいものである。

米国にとっては、問題になっているのはAmazon、Google などほんとんどが米国企業であり、これらに対する課税は米国が行うべきで、他国の課税は国益に反するとの立場である。
これらの会社が他国で利益を出しながら、恒久的施設を持たない方法によりそれらの国の課税を妨げているという事実を無視している。


国際的な合意がとれないまま、多くの国が独自のデジタル課税を実施又は計画している。


米通商代表部(USTR)は2020年6月2日
Digital Services Taxを巡り、英国など10カ国・地域を調査すると発表した。
不公正だと認定すれば制裁関税を含む対抗措置を検討する。

フランスでは2019年7月にDigital Services Tax法案が成立し、トランプ大統領はフランス産ワインに関税を課すことをほのめかした。(のち、暫定合意)

2020/6/4 米、10カ国・地域にデジタル税の対抗措置検討

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