韓国、ユネスコに「軍艦島の世界遺産登録取り消し検討 依頼」書簡発送

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韓国外交部は6月23日、外交部長官が世界遺産委員会事務局長に日本の端島(軍艦島)など近代産業施設の世界文化遺産登録取り消しを検討してほしいという書簡を発送した明らかにした。

康長官は前日に送った書簡で、「第44回世界遺産委員会で関連施設に対し日本の忠実な後続措置履行を促す決定文が採択されるよう協力してほしい」としながら「世界文化遺産登録取り消しの可能性も検討してほしい」と要請した。


当局者によると、世界遺産委員会の規定上、登録の取り消しは遺産が毀損されたか保全に問題がある場合のみに可能だが、登録時に行った約束を履行しなかった場合も取り消しが可能かを確認するため書簡を発送したという。

日本政府は2015年7月の世界文化遺産決定時に、「該当施設で本人の意志に反する労役があったという点を含め歴史を知らせる情報センターを作る」と文書で公言したが約束は守られなかった。

6月14日に軍艦島をはじめとする明治時代の産業化施設23カ所の歴史を知らせる産業遺産情報センターが新宿に開設されたが、ここには強制徴用被害を否定し日本の産業化の成果を浮き彫りにする内容だけが入れられた としている。

報道官は「日本が自ら約束した後続措置を忠実に履行するためのあらゆる案を講じたい」とした。

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ユネスコの世界遺産委員会は2015年7月5日、長崎県の端島(軍艦島)など全国23施設の「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録を全会一致で決めた。

しかし、それまでに日本と韓国の間で揉めに揉めた。

韓国政府は、「明治日本の産業革命遺産」の23施設のうち7施設について、「戦時中に強制徴用された労働者がいた」と主張し、登録に反対した。

その後、韓国側は6月の日韓外相会談で、徴用工を含む「歴史の全容」を施設の説明を加えれば反対しない姿勢を示し、事態は決着したかにみえた。

しかし、委員会の開幕後、再び対立が表面化した。

意見陳述で韓国側が徴用工の歴史に言及するのに加え、「強制労働」という表現を使おうとした。

日本側は当時は法令に沿った動員がされたとし、韓国での損害賠償請求訴訟など元徴用工をめぐる動きに悪影響を及ぼす恐れがあるとして修正を要請し、韓国側が反発、折り合いがつかなくなった。

調整が難航し、当初予定された7月4日の審議は先送りされた。

一時は次回への延期の懸念もあった。他の各国も採決でどちらかに投票するのを嫌った。

最終的に調整の結果、韓国側が発言案を修正し、日本側も次のように述べ、合意に達した。

日本側は徴用工について、本人の意思に反したという意味の「against their will」という表現を使って、植民地時代に朝鮮半島から連れてこられたと言及、厳しい環境で労働を強いられたなどとも述べた。また、こうした歴史を記憶するために、適切に対応すると表明した。

日本の佐藤 地(クニ)ユネスコ大使(女性初の局長級)は下記の発言を行った。(外務省発表)

議長、

日本政府を代表しこの発言を行う機会を与えていただき感謝申し上げる。

日本政府としては、本件遺産の「顕著な普遍的価値」が正当に評価され、全ての委員国の賛同を得て、コンセンサスで世界遺産登録されたことを光栄に思う。

日本政府は、技術的・専門的見地から導き出されたイコモス(国際記念物遺跡会議)勧告を尊重する。特に、「説明戦略」の策定に際しては、「各サイトの歴史全体について理解できる戦略とすること」との勧告に対し、真摯に対応する。

より具体的には、日本は、1940年代にいくつかのサイトにおいて、その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと、また、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる所存である。

日本は、インフォメーションセンターの設置など、犠牲者を記憶にとどめるために適切な措置を説明戦略に盛り込む所存である。
日本政府は、本件遺産の「顕著な普遍的価値」を理解し、世界遺産登録に向けて協力して下さったベーマー議長をはじめ、世界遺産委員会の全ての委員国、その他関係者に対し深く感謝申し上げる。

外務省注

【注1】「意思に反して連れて来られ(brought against their will)」と「働かされた(forced to work)」との点は、朝鮮半島出身者については当時、朝鮮半島に適用された国民徴用令に基づき徴用が行われ、その政策の性質上、対象者の意思に反し徴用されたこともあったという意味で用いている。
【注2】「厳しい環境の下で (under harsh conditions)」との表現は、「戦争という異常な状況下」、「耐え難い苦しみと悲しみを与えた」との当時の労働者側の状況を表現している。

当日の岸田外務大臣の談話は下記の通り。

1 本5日、ドイツのボンで開催されている第39回ユネスコ世界遺産委員会において、我が国が世界遺産に推薦していた「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が、世界遺産一覧表に記載されることが決定されました。誠に喜ばしいことであり、関係者の皆様と共にこの決定を歓迎し、祝意を表したいと思います。

2 本件は、1850年代から1910年にかけて、我が国における製鉄・製鋼、造船、石炭産業といった重工業の産業化に中心的役割を担った遺産群として、高く評価されました。試行錯誤の中、非西洋で初めて産業化に成功した先人達の努力に心から敬意を表するとともに、今回の決定により、同遺産群の果たした世界的役割が一層広く世界に知られる契機となることを期待します。

3 本件の登録決定後、我が国は、世界遺産委員会の責任あるメンバーとして、国際記念物遺跡会議(イコモス)の勧告に真摯に対応していく姿勢を示すため、発言を行いました。この発言は、これまでの日本政府の認識を述べたものであり、1965年の韓国との国交正常化の際に締結された日韓請求権・経済協力協定により、いわゆる朝鮮半島出身者の徴用の問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は完全かつ最終的に解決済みであるという立場に変わりありません。

4 今後とも、同遺産群を含めた日本の資産について、世界中の方々に世界遺産としての価値を御理解いただけるよう、関係省庁と連携し、その魅力を更に世界に発信してまいります。

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新宿区にある総務省 第2庁舎別館内の産業遺産情報センターが6月15日に一般公開された。(3月31日に開所式を行ったが、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、これまで臨時休館していた。)

韓国側は産業遺産情報センターでは強制徴用を否定する証言と資料を展示し、韓国政府は日本が約束した措置を履行していないとして強く抗議してい る。

産業遺産情報センターは前日の14日、東京特派員共同取材団に「当時、朝鮮人と日本人は皆、同じ日本人だったので差別はなかった」という証言映像を紹介したという。

菅官房長官は6月22日の定例会見で、「我が国は今まで世界遺産委員会の決議と勧告を真剣に受け入れ、約束した措置を含めてこれを誠実に履行してきた」と 述べ、「日本政府は引き続き適切に対応していく」とした。

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