EU、トランプ大統領要望の米産ロブスター関税を撤廃 

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米国とEUは8月21日、一部の輸入関税を見直すことで双方が合意したことを明らかにした。

EU側が米国産のロブスター(生鮮と冷凍)の関税(種類によって6%と8%)を撤廃する。かわりに、米国はEU産のガラス製品やライターなど1億6千万ドル相当の輸入品の関税を半分に引き下げる。

米国とEUの貿易交渉は対立点が多く、進んでいないが、ライトハイザーUSTR代表とEUのホーガン欧州委員(通商担当)は「追加の合意につなげる出発点としたい」との共同声明を発表した。

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トランプ米大統領は6月5日、EUと中国が米国産ロブスターに対する関税を撤廃しなければ、対抗措置として関税を発動すると警告した。

「EUが早急に関税を撤廃しなければ、EUから輸入する自動車に同等プラス("equivalent-plus")の関税を課す」と述べた。

メーン州で面会した漁業関係者が「隣のカナダはEUと貿易協定を結んでいるのでロブスターに関税がかからず、我々は不利だ」と不満を伝えると、「欧州や中国がロブスターへの関税をやめなければ、我々も関税を課す」と述べた。

EU市場は米国のロブスター輸出の15~20%を占め、2億ドルの市場であるが、これまでカナダとは市場を分けており、カナダ産は主に北欧、米国産は南欧(スペイン、イタリア、ギリシャ)が主であった。

カナダ・EU包括的経済連携協定(CETA)が2017年9月21日に暫定適用が開始され、カナダ産ロブスターはこれまでの関税 1ポンド当たり約1ユーロがゼロとなり、競争力が高まった。

この結果、カナダ産ロブスターは南欧でも米国産の市場を奪うようになった。

中国については、2020年1月15日の「第一段階貿易合意」で、米国は1次~3次の2500億ドル相当分の25%関税は据え置き、中国もこれに対応する1100億ドル相当分の関税を(9月11日除外分を除き)据え置いた。

この結果、米国産ロブスターへの25%追加関税は残ったままである。

2020/6/11 トランプ大統領、ロブスターでEUと中国に対抗関税警告 

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今回、EUは米国のロブスターの関税を撤廃する。2017年の米国のEU向け輸出額は111百万ドルであった。撤廃期間は5年であるが、欧州委員会はこれを期限無しにする手続きを開始する。

関税撤廃は最恵国待遇ベースとなり、他国にも適用される。

WTOの規定は原則、最恵国待遇であり、FTA契約を締結する場合には、これが実質的にすべての貿易を対象とし、原則10年以内に関税撤廃を行うなどの条件を満たせば、FTA相手国のみに適用できる。

今回は特定の製品を対象とした契約のため、最恵国待遇ベースとなる。

米国は見返りに、EUの特定の調理済み食品、クリスタルガラス製品、surface preparation、発射薬、シガレットライター、ライター部品などを含む年間160百万ドル相当の製品の関税を50%引き下げる。これも当然、最恵国待遇ベースとなる。

関税引き下げはいずれも、8月1日に遡って適用される。

米国とEU間の関税削減は初めて。

本件は、カナダがEUとのFTAで勝ち取った関税免除の影響であり、EUが不当なやり方をした訳ではないのに、トランプ大統領がメーン州の漁業関係者の陳情を受け、自動車への課税などの脅しで米国産の関税撤廃を要求したという、ごり押しである。

それが通って関税が免除されることとなり、トランプ大統領にとって政治的な支援材料になる。

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