公取委、コンビニの実態調査から改善要請

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公取委は9月2日、「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査について」の発表を行った。

発表   https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/sep/200902_1.html

ポイント https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/sep/kitori0902/200902_03.pdf

24時間営業をはじめとして、本部と加盟店の在り方を見直すような動きが生じていること、前回(2001年)調査から期間が経過していることから、過去最大規模のアンケート調査を実施した。

アンケートでは、現在の経営状況について、肯定的な回答は28.2%に対し、否定的な回答は44.7%もあった。

調査の結果、「予想売上げ又は予想収益の額に関する説明」「仕入数量の強制(無断発注の問題を含む)」「年中無休・24時間営業」及び「ドミナント出店」等、今なお多くの取り組むべき課題が存在することが明らかとなった

今後の対応

・本部に対する改善要請
・業界団体に対する要請
・フランチャイズ・ガイドラインの改正
・報告書等の周知
・違反行為に対する厳正な対処


公取委事務総長は9月2日に記者会見し、「本部自ら現状を点検し、取引環境が改善に向かうことを強く期待する。もし違反行為に接した場合は厳正に対処したい」と述べた。

調査内容と独禁法上の問題点は下記の通り。

1.本部による加盟店募集時の説明状況

「予想売上又は予想収益の額に関する説明」について、「加盟前に受けた説明よりも実際は悪かった」との回答が41.1%となっている。

重要な事項について、十分な開示を行わず、又は虚偽若しくは誇大な開示を行い、これらにより、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合には、不公正な取引方法の「ぎまん的顧客誘引」に該当する。

2. 本部の加盟者に対する取引上の地位

 仕入数量の強制・無断発注

本部から強く勧められ、意に反して仕入れた商品があると答えた割合は51.1%に上った。また、必要以上の商品を仕入れるよう強要されたことがあると回答したオーナーも47.5%にのぼり、本部に強制される形で商品を仕入れている実態が明らかにな った。

フランチャイズ契約又は本部の行為が、フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度を超え、加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には、「優越的地位の濫用」に、また、加盟者を不当に拘束するものである場合には、「抱き合わせ販売等」又は「拘束条件付取引等」に該当することがある。

公取委は仕入れの強制について「多くのオーナーから強い懸念が示され、事実関係によっては独禁法上の問題が生じうる」と強調した。

 見切り販売の制限

2009に排除措置命令*が出ており、その後の状況を調査。
時短営業店の増加に伴い見切り販売のニーズも高まると考えられるところ、本部においては問題が生じないよう特に留意する必要がある。

公取委は 「柔軟な価格変更をしたいという事業活動を制限しないようにする必要がある」と改めて注意を促した。

*セブン―イレブン・ジャパンが加盟店に対し、売れ残り商品の値引き販売を不当に制限したとして、公取委は独禁法違反(優越的地位の乱用)で排除措置命令を出した。

3. 年中無休・24時間営業

77.1%の店舗が深夜帯は赤字、93.5%の店舗が人手不足を感じている。

加盟者募集の段階で十分な説明がなされている場合には、直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

加盟者の募集に当たり、年中無休・24時間営業に関する重要な事項について、十分な開示を行わず、又は虚偽若しくは誇大な開示を行い、これらにより、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合には、「ぎまん的顧客誘引」に該当し得る。

本部の配布している加盟店募集用のパンフレット等では、深夜帯の採算性の悪さや深刻な人手不足の実態等について積極的に開示している例はみられず、特段触れていないか、「従業員を育成すればオーナーは休暇をとることができる」などと記載しているものもあった。

本部と加盟店とで合意すれば時短営業への移行が認められているところ、そのような形になっているにもかかわらず、本部がその地位を利用して協議を一方的に拒絶し、加盟者に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には、「優越的地位の濫用」に該当し得る。

本部が「交渉に応じていない(交渉自体を拒絶している)」との回答が8.7%みられた。

本部においては、時短営業を容認することとした場合には、そのことについて社内に周知徹底するとともに、24時間営業を行う加盟者から時短営業に係る協議の要請があった際には、加盟者の立場に配慮した丁寧な対応を行う必要がある。新型コロナウイルス感染防止のための対応も含め、24時間営業を巡る事業環境が大きく変化している昨今において、このことは特に留意すべきものと考えられる。

*セブン-イレブン・ジャパンは2019年10月21日、全国で2万を超える加盟店を対象に深夜休業を容認し、従来の24時間営業を転換すると発表した。希望する場合の移行手順などを「ガイドライン」で明確化した。

4. ドミナント出店 (チェーンストアが地域を絞って集中的に出店する経営戦略)

一般論として、本部がどのような場所に新しい店舗を出店するかは原則として自由であり、既に加盟者が出店している店舗の周辺に、新たに店舗を出店すること自体は、直ちに独占禁止法上問題となるものではない

ただし、加盟者募集時に近隣に出店しない旨説明しているにもかかわらず出店した場合などには、独占禁止法上問題となるおそれがある。

本部が加盟店募集時の説明において、本件について十分な開示を行わず、又は虚偽若しくは誇大な開示を行うことにより、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させる場合には「ぎまん的顧客誘引」に該当し得る。

「加盟前に受けた説明よりも実際の状況の方が悪かった」との回答が22.6%となったほか、「説明を受けていない」との回答も19.6%にのぼり、「500m以内に出店しないと口頭で説明されたが、300mの場所に出店された」など、事前にテリトリー権的な内容の約束があったのに反故にされたといった報告も寄せられた。

加盟店募集時の説明において、周辺地域への追加出店について、実際には配慮するつもりがないのに「配慮する」と説明することにより、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合にも、「ぎまん的顧客誘引」に該当し得る。

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