英国 「合意なき離脱」辞せず

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英国のジョンソン首相は9月7日、難航する英国とEUの将来関係交渉について声明を発表した。

「EUとの交渉は最終局面に入った」とコメントした。 「2020年末までに施行するならば、10月15日の欧州理事会までに欧州の友人との協定の妥結が必要」とし、「それまでに合意できなければ、両者間に自由貿易協定(FTA)は成立せず、われわれはこれを受け入れて前進すべきだ」と述べ、10月半ばで交渉を打ち切る考えを明らかにした。

今回示した期限までに交渉が妥結しない場合、両者の通商関係は「オーストラリア型」(FTAのないWTOルールに基づく関係)になるとし、 それが英国にとってよい結果になるとする。

英国は自らの法律、ルール、そして海域を完全にコントロールする、世界の全ての国と貿易協定を結ぶ。独立国としての基本条項で妥協しないとする。

I want to be absolutely clear that, as we have said right from the start, that would be a good outcome for the UK.

We will have full control over our laws, our rules, and our fishing waters. We will have the freedom to do trade deals with every country in the world. And we will prosper mightily as a result.

We cannot and will not compromise on the fundamentals of what it means to be an independent country to get it.

英国政府は9月7日、EUの企業に2020年末までの移行期間終了後も英国と取引を続けるための準備を呼び掛けるキャンペーンも立ち上げた。
   
Prepare your business for January 2021 if you are based in the EU

英・EUは9月8~10日の日程でFTA交渉の第8回協議を行ったが、協定書き換え問題(別記事)が尾を引き進展はなかった。

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英国と欧州連合(EU)は3月2日から5日まで、将来的な貿易関係の 最初の交渉を行なった。

漁業から金融サービスまで10分野の作業部会に分かれて専門的な協議を行った。

①製品貿易、②サービス貿易・投資、③運輸(航空)、④エネルギー(民間原子力協力) 、⑤漁業、⑥オープンで公正な競争のための対等な競争環境(LPF:Level Playing Field)、⑦法執行・犯罪問題における司法協力、⑧EUプログラムへの参加、⑨移動・社会保障協力/テーマ別協力 、⑩水平的アレンジメント・統治――の10分野にわたる。

2020/3/12 英国とEU、貿易交渉を開始 

これまでの交渉で、運輸やエネルギー、司法協力、英国のEUプログラムへの参加などで進展を見せている。しかし、「公正な競争環境の確保」や「漁業」の2点でなお対立が続き、打開の糸口は見えていない。

2020/4/30 英国の「EU離脱後」交渉、難航

特に溝が深いのが「公正な競争の確保(Level Playing Field)」 である。

EUの欧州委員会は2月3日、基本方針案を公表したが、関税ゼロを目指すFTAの締結の条件として、労働者や環境保護、国家補助の規制、競争法、税制などのルールをEUの水準に合わせるよう求めることを明確にした。

英国が過度な規制緩和で不当に競争力を高めて、域内企業が競争上、不利になることを恐れ、「競争を開かれた公平なものにする必要がある」と、関税・数量割り当てゼロのFTAは、Level Playing Fieldの徹底した履行義務が条件としている。

EUは、英国が税制や雇用政策などの面でEUルールに合わせるべきだとの立場を変えておらず、英側は「EUが他の国と結んだFTAの前例にはないことを要求している」と批判し、一歩も譲らない姿勢を見せている。

漁業に関する問題は下記の通り。

1983年にEEC水域に対する年間総許容漁獲高(TAC)が導入され、毎年、加盟国間で配分されるようになった。

英国の漁民は割り当てられた漁獲枠に制限される一方で、他国漁船が自国EEZで操業するのを黙認せざるを得ない状態に長年置かれてきた。

英国はEU離脱で主権を回復し、領海内での漁業を自国で管理しようとしており、逆にEUは従来通りとすることを求めている。

ジョンソン首相によると、これらは独立国としてのFundmentals であり、妥協できない。

EU側がこの2点を絶対条件とし、一切の妥協を認めない場合、英国としては関税ゼロのFTAを諦めざるを得ない。移行期間を延長しても意味はないことになる。

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英国は正式に離脱して初めて、他国とFTAを結ぶことができる。

韓国国会は2019年10月28日の本会議で、英国とのFTAの批准同意案を可決した。英国がEUを離脱した場合、自動的に発効される。

アジア諸国のうち、英国とのFTA批准を完了したのは韓国が初めて。

2019/9/5 韓国、韓英FTAをBrexit前に批准へ

英国はこの時点までにチリ、アイスランド、ノルウェー、スイス、カリブ海諸国、東南部アフリカ市場共同体、イスラエルなど38カ国と13件のFTAを締結している。

日英両政府は新たな通商協定締結で大筋合意する見通しとなった。9月中をメドに署名し、年内に両国の議会で承認して2021年1月1日の発効を目指す。

付記 日英両政府は9月11日、経済連携協定(EPA)の締結で大筋合意した。

英国のトラス国際貿易相は9月9日、日本を含む環太平洋連携協定(TPP)参加11カ国の首席交渉官と会談した。テレビ会議とみられる。
英国はTPP参加に強い意欲を示しており、正式な交渉入り表明前に意見交換を行った。

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一方、離脱交渉の最大の懸案だった北アイルランドの税関と国庫補助を含む分野でEU離脱協定の効力を弱めかねない法案を英政府が準備していることも明らかになった。

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