米議会共和、民主両党の指導部は12月19日、新型コロナウイルス感染拡大の影響に対応する総額9000億ドルの追加経済対策案で大筋合意に達した。
連邦準備制度の緊急融資制度の扱いを巡る対立で妥協が成立し、最終合意に向け最後の大きな障害が取り除かれた。
2021会計年度(2020/10~2021/9)の本予算もつなぎ予算の期限が12月20日で、これに含まれる予定の追加経済対策案がまとまらないため、採決できないでいたが、ようやく採決される。
上院のMcConnell院内総務は12月20日、上下両院のトップ4人が追加経済対策の最終案で合意し、直ちに文章化に入ったと述べた。当日中の議決を狙う。
家計 2,860億ドル 家計への支援は1人600ドル、子供も対象のため4人家族なら2400ドルとなる。
失業保険上乗せは週300ドルとなる。(当初は、州の支給分 平均370ドルに600ドルが上乗せされた。)中小企業 3,250億ドル 雇用を維持すれば、給与支払い補填 運輸業界 450億ドル 航空、鉄道会社など 医療 690億ドル ワクチン普及、検査費用 その他 1,830億ドル オンライン教育、家賃補助その他
最後に障害として発生したFRB緊急融資プログラム復活禁止問題(後記)については、現在のプログラムの復活は認めないが、同様のプログラムの新設は妨げないとした。
しかし、合意を法律にするのに時間が足らず、下院はつなぎ予算を21日まで延長、上院も夜遅く、これを可決した。大統領は深夜までにサインした。
但し、1日しか余裕はないため、法案が完成すれば、議員は2時間ほどで膨大な法案を読んで、討議、議決をする必要がある。
12月21日午後2時過ぎに、1兆4千億ドルのオムニバス歳出法案(2021年9月末までの予算)と9千億ドルの新型コロナウイルス追加景気対策予算案(合計5,593ページ)が完成した。
これは2つに分かれており、一つは歳出のうちの国防総省、商務省、司法省等々の予算、もう一つはその他の省庁の予算と追加景気対策予算案である。
12月21日の夕方、下院が前者を327対85(棄権18)で可決、続いて後者を359対53(棄権17)で可決した。
両法案はまとめて一つにして上院に送られ、賛成 92、反対6 (棄権2)で可決した。反対は全て共和党であった。
法案は直ちにホワイトハウスに送られた。但し、大統領がすぐにはサインできない。5,593ページの法案を政府の法律家がチェックする必要があり、コロナ問題とクリスマス休日もある。
このため、両院は21日に7日間のつなぎ予算を可決し、大統領がサインし、成立した。
政府機関の閉鎖がギリギリで回避できた。
最終的に2021年度予算は、10月1日~12月11日、~18日、~20日、~21日、~28日と、つなぎ予算で賄うこととなる。
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経緯:
2つの問題が難航に難航を重ねた。
1つは2021会計年度(2020/10~2021/9)の本予算で、もう一つは新型コロナウイルス追加景気対策予算である。
本予算はまだ成立せず、12月11日までのつなぎ予算で手当てしてきたが、期限が来るため、とりあえず12月18日まで延長したが、それも期限が来る。
追加景気対策は、失業保険特例措置や中小企業の雇用維持策が12月末で期限が来るため、延長するための第4弾が必要である。
上下院は12月19日からの休会を予定していたが、休会を先延ばしし、週末返上で協議した。
1) 2021会計年度(2020/10~2021/9)の本予算
Mnuchin 財務長官と民主党のPelosi下院議長が9月1日、11月の大統領選後までのつなぎ予算(10月1日~12月11日)を手当てすることで合意した。政府機関の閉鎖などで大統領選に悪影響が及ぶことを避けることで一致した。
下院は9月22日夜、暫定予算案を可決し、上院に送った。上院は9月30日にようやく可決した。
大統領は10月1日早朝、期限切れの1時間後にサインし、法律となった。
2020/9/25 米、2021会計年度のつなぎ予算(10月1日~12月11日)成立へ
米下院は12月9日、つなぎ予算の期限を12月18日まで1週間延長する法案を可決、上院も11日に可決、トランプ米大統領が同日法案に署名し、法案が成立した。
大統領選が終わっても、トランプが敗戦を受け入れず、混乱が続き、つなぎ予算の期限が来る。
上下両院はとりあえず、12月20日までの2日間の短期のつなぎ予算を可決した。大統領は期限の18日にこれに署名した。
予算が成立しなければ、政府機関の一部閉鎖となる。
12月20日、上下両院のトップ4人が追加経済対策の最終案で合意し、直ちに文章化に入ったが、議会採決まで時間がないため、下院はつなぎ予算を1日延長した。
2) 新型コロナウイルス追加景気対策予算
COVID-19経済対策第4弾は、5月に3兆ドル(コスト予想に幅があり、高い見積もりでは3.4兆ドルになる)の民主党案が下院で可決された。
しかし、上院で多数を占める共和党は上院では即否決するとした。米共和党の議会指導部は下院可決後の2か月半後の7月27日、ようやく1兆ドル規模の追加の新型コロナウイルス対策法案を正式に提示した。
差が大きく、まとまらないまま、夏季休暇に入った。
米上院共和党のマコネル院内総務は9月8日、従来案(1兆ドル)から規模を縮小した5000億ドル規模の対策法案を提出した。
上院共和党は、60議席の賛成を得られる目途が立たないまま、審議に入るべく、9月10日に動議を採決したが、審議入りに必要な60票に届かなかった。
2020/9/14 米議会再開、COVID-19経済対策と2021会計年度の連邦政府予算が争点に
下院は10月1日、民主党が単独で提案した2兆2000億ドル(約230兆円)規模の経済対策案を賛成214、反対207で可決した。5月の3兆ドルから引き下げた。
2020/10/2 COVID-19経済対策 第4弾 下院が修正案を可決、但し選挙前の成立は困難
トランプ大統領は10月6日、COVID-19経済対策 第4弾の民主党の2兆ドル規模の対策案を「拒絶する」とし、「11月の大統領選後まで、代表団に協議の打ち切りを指示した」と表明した。
一方で同日、追加経済対策の協議から切り離し、航空業界と中小企業保護に関してのみ、支出を即時認めるよう求めた。航空業界の給与助成の予算250億ドルと、中小企業を対象とする「給与保証プログラム(PPP)」の予算1350億ドルである。
更に、下院が決議した案に含まれている大人1人あたり最大1200ドル(扶養家族には500ドル)の現金給付について、単独法案でこれを通すように 促した。直ぐサインすると。
2020/10/9 トランプ大統領、コロナ対策予算問題で「いいとこ取り」作戦
双方が妥協せず、対立が続いたが、超党派議員が協議を続け、12月1日に9080億ドルの救済法案を提出した。
中小企業や失業者、航空業界などへの新たな緊急支援を巡る共和・民主両党間の約1カ月にわたる行き詰まり打開を目指す。
ホテルやレストラン、中小企業を支援する2280億ドルの追加給与保護プログラム(PPP)を含む緊急支援を3月31日まで実施する。
州や地方自治体は同法案の下で直接支援を受けることになる。
米輸送部門に対する450億ドルの支援のうち、給与支援として4カ月で170億ドルが航空会社に割り当てられる見込み。
また、交通システム向けに150億ドル、空港向けに40億ドル、民間バス向けに80億ドル、全米鉄道旅客公社(Amtrak)向けに10億ドルが振り向けられる。
新型コロナ流行に対応する企業や学校向けの新たな補償など共和党が求めていた内容が含まれている。
失業給付上乗せも含まれており、4カ月間にわたり週300ドル増額される見込み。(民主党は週600ドルの上乗せを要求していた。)
この案について、協議が進められた。
協議は合意に向け前進しているものの、つなぎ予算が切れる18日深夜までに合意できるか不透明な情勢となっている。
一部の共和党上院議員が、12月末に終了する米連邦準備理事会(FRB)の緊急融資プログラムを復活できないようにする文言を盛り込むよう求めており、合意の新たな障害となる可能性が浮上した。
ムニューシン米財務長官は11月19日、新型コロナウイルス危機を受けて導入した連邦準備理事会(FRB)の緊急融資プログラムの一部について、期限を延長せず12月31日に終了する考えを示した。
3月の新型コロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES法)に基づき、財務省には4550億ドルが割り当てられ、その大半はFRBの企業や非営利団体、地方政府向け緊急融資資金に確保された。
ムニューシン長官は、これらの資金の未使用分を財務省に返却するよう要請。返却された資金を議会が景気対策に回せるようにすべきとした。共和党上院議員の案は、これについて、今後、FRBや財務省がこれを復活できないようにすることを求めた。金融市場が再び混乱に陥った場合、イエレン次期財務長官は緊急対策の手段が限られることになるため、バイデン次期大統領の政権移行チームは打ち切り決定を「極めて無責任」と批判した。
これもあって、合意は遅れた。
上院共和党トップのMcConnell院内総務は、「成立まで上院は審議を継続する」とし、週末返上で採決を目指す考えを表明した。
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