英EU、通商協定で合意 

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英国と欧州連合(EU)は12月24日、新たな自由貿易協定(FTA)など将来関係を巡る交渉で合意した。ジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長がそれぞれ表明した。英・EU間の関税ゼロでの貿易が維持される可能性が極めて高くなった。

当初は12月24日朝になると言われていたが、英海域での漁業権について詳細の詰めが続き、同日午後になって双方が合意成立と発表した。

英首相官邸は、「Brexitを実現した。これからは、待ち受ける素晴らしい機会を全面的に活用することができる。2016年の国民投票と昨年の総選挙で英国民に約束されたすべてのことが、この合意で実現する。我々は自分たちの金、国境、法律、貿易、そして漁業水域の決定権を取り戻した」と述べた。

ジョンソン首相は次の通り述べた。

年間6680億ポンド相当の過去最大の合意に達した。
イギリスとEUの間の、カナダ式の包括的な合意だ。この国の雇用を守り、イギリスの製品をEU市場で無関税のまま、数量制限もなく売れるようにする合意だ。この国の企業が今まで以上に欧州の友人たちと取引できるようにする合意だ。この合意は欧州全体にとって良いものになる。

私たちは1973年以来初めて、自分の海域について全面的な決定権をもつ独立した沿岸国になる。漁業関係者の船舶刷新のため1億ポンドを提供する。

本当に大変だったこの1年の終わりに際して、何より重視しているのはパンデミックに打ち勝つことと経済の再建だ。実現可能だと完全に自信を持っているが、今のこの瞬間がいかに重要か認識して、それを最大限に活用するためは、私たち全員が新しい本当の意味で独立した国として、まとまるかどうかにかかっている」と呼びかけた。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「The long and winding road(ビートルズの曲)だったが、その分だけ良い合意に至ることができた。公平で、バランスのとれた合意で、双方にとって正しく、責任ある行動だ。今はページをめくり、将来を見つめるべき時で、(イギリスは今後も)信頼できるパートナーであり続ける」と述べた。

協定は約2000ページに及ぶ。Brexitの移行期間が終了する12月31日までに双方の議会で承認される必要がある。

英政府は年内中に議会でFTA合意の批准を済ませる方針。
欧州委は各国の承認が必要なため、欧州議会の同意なしに合意を発効させる暫定適用を閣僚理事会に提案する。欧州議会は各国の承認をもとに、1月にも判断する。

2016年のEU離脱を問う国民投票から約4年半を経て、英国とEUは通商協定に基づく新たな関係に入る。

付記

EUのMichel大統領とvon der Leyen欧州委員長は12月30日、英国との間で合意したFTAなど将来関係についての文書にブリュッセルで署名した。

EUは12月28日の加盟国大使級会合で、EU欧州議会の批准を待たず、31日深夜に暫定適用することを全会一致で承認している。

英国下院は12月30日、521対73の大差で離脱関連法案を承認した。これを受け、Johnson英首相は郵送された文書にロンドンで署名した。
同日夜、英国上院がこれを承認、エリザベス女王の裁可も得て法律となった。

これで12月31日深夜の英国のEU正式離脱が確定した。

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これまでの経緯については下記を参照

2020/9/11 英国「合意なき離脱」辞せず

特に溝が深いのが「公正な競争の確保(Level Playing Field)」、漁業に関する問題 である。

更に下記の問題が発生した。

2020/9/11 Brexit:英国のInternal Market Bill 

離脱協定で定められた北アイルランドに関する議定書の一部を無効とする条項を含んでいる。

下院は議決したが、上院は問題個所を削除した。

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主な合意内容

関税をゼロとするFTA
 「関税割当枠」も設けない。
FTAでは優遇関税の対象となる品目の原産地が限定される。「原産地証明」要

英・EU以外の国からの原材料の比率が大きい製品は、今まで無関税だった品物でも関税がかかる可能性がある。

製品・食品が規制を満たしているかどうかの確認といった通関作業

付記

原産地規則に関して、電気自動車関連で例外が認められたことが分かった。

今回のFTAの原産地規則では、英EU間の完成車の貿易で、EUまたは英国製の部品以外の比率が45%を超えた場合は無関税にせず、乗用車で最大10%の関税がかかる。

但し、EVやHV、プラグインハイブリッド車(PHV)については、これを2026年末まで緩和する。

2023年末までは60%まで、2024年~26年末は55%まで域外部品を使用しても無関税とする。
2027年以降は45%までになるが、FTA発効から4年以降に締約国の要請があれば見直すこともできる。

EVなど向けの電池セルやモジュールについても同様に、

2023年末までは最大70%、2024年~26年末までは50%までは域外部品を使用しても無関税とする。


英とEU間のヒト・モノ・サービスの自由な移動は終了 今まで自由に移住を受け入れていたEU市民を他の外国人を同様に扱う。

新たに年収や英語力などに基づいたポイントで移民希望者を評価する仕組みを導入
  一定基準以下の低技能の労働者を受け入れないようにする。

  • No free movement of people: UK citizens will no longer have the freedom to work, study, start a business or live in the EU. They will need visas for long-term stays in the EU. Border checks will apply, passports will need to be stamped, and EU pet passports will no longer be valid for UK residents.
  • No free movement of goods: Customs checks and controls will apply to all UK exports entering the EU. UK agri-food consignments will have to have health certificates and undergo sanitary and phytosanitary controls at Member States' border inspection posts. This will cost UK businesses time and money.
  • No free movement of services: UK service providers will no longer benefit from the country-of-origin principle. They will have to comply with the - varying - rules of each EU country, or relocate to the EU if they want to continue operating as they do today. There will be no more mutual recognition of professional qualifications. UK financial services firms will lose their financial services passports.
英はEU単一市場・関税同盟から抜け、通関手続きが復活 英国は日本をはじめ各国と自由にFTAを発動
 2020/12/8 
日英EPA、2021年1月1日発効

今後、対米FTAや環太平洋経済連携協定(TPP)をテコに2021年以降の成長戦略を描く。
 

金融などの各種規制・監督を英とEUで分離 There will be no more mutual recognition of professional qualifications.
UK financial services firms will lose their financial services passports.
航空、鉄道、陸路、海上交通は現状維持
英はEUルールや欧州司法裁判所の影響から外れる
公正な競争環境を確保するため、英はEUルールを尊重
公正な競争をゆがめられた場合は必要な措置をとる
UK and the EU will be able "as sovereign equals" to take action if the other side undercuts their industry and thus it will provide a level playing field to both sides.
EUの英水域での漁獲割り当ては5年半にわたり現状から25%削減 初年度15%減、その後毎年2.5%ずつ削減を増やす。
英国は当初 80%減を求めていた。

その後は英はEU漁船を水域から除く権利を持つ。
EU側は継続のための武器ありとしている。(英水産物への関税、税金など)


「公正な競争の確保(Level Playing Field)」については、英国が妥協したように見える。

この問題では、EU側は、英国が過度な規制緩和で不当に競争力を高めて、域内企業が競争上、不利になることを恐れ、「競争を開かれた公平なものにする必要がある」と、関税・数量割り当てゼロのFTAは、Level Playing Fieldの徹底した履行義務が条件とした。

ジョンソン英首相は2月27日、EUとの間にカナダ型のFTAが成立する見通しが立たないのであれば、6月にEUとの交渉を打ち切る意向を鮮明にした。

「対等な主権を持つ二者間の友好的な協力に基づく関係」を目指しており、「英政府が自国の法律や政治生命に対して自ら統制を取れないような取り決めについては一切交渉しない」とした。

カナダとEUのFTAにはこのような「公正な競争条件(Level Playing Field)」の規定はない。

今回、下記の通りとなった。英国は「過度な規制緩和で不当に競争力を高める」ことはやりにくい。

UK and the EU will be able "as sovereign equals" to take action if the other side undercuts their industry and thus it will provide a level playing field to both sides.

英側が強制的にEUルールに従う枠組み導入や、紛争解決での欧州司法裁の関与は見送り。
独自に政府補助金を管理し、税制や税率の制約もない。
一方で、労働基準や環境、税制で「共通の高い基準」を保つことを約束
産業規制を過度に緩めた場合、是正、仲裁に乗り出す専門家委員会の設置

相手の政府補助金で大きな損害を受けた場合、追加関税などで報復できる仕組みを導入

通常のFTAでは「公正な競争条件」規定はないが、UK-EUの場合は関税は即時ゼロであり(EUとカナダのFTAでは、一部は3年、5年、7年以内に漸進的にゼロにする)、EU側からは、英国が離脱して得をするのは他の離脱を防ぐ意味から避けたく、厳しい条件もやむを得ないと思われる。


英国海域での漁獲についての問題点

1983年にEEC水域に対する年間総許容漁獲高(TAC)が導入され、毎年、加盟国間で配分されるようになった。

英国の漁民は割り当てられた漁獲枠に制限される一方で、他国漁船が自国EEZで操業するのを黙認せざるを得ない状態に長年置かれてきた。

英国は自国の水域からEU漁船を締め出したい。

但し、英国の水産物の輸出の大半はEU向けで、EUがこれに高関税をかけると、英国は漁獲物を輸出できない。


追って、補足します。

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