新型コロナウイルスの中和抗体、半年持続

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横浜市立大学の研究チームは12月2日、新型コロナウイルスの感染者のほとんどが、再感染を防ぐ抗体(中和抗体)を半年後にも持つことを確認したと発表した。症状の重かった人ほど多く残る傾向だった。

感染して回復した376人の血液を調べた。ワクチンが普及すれば中和抗体を持つ人が増え、感染の拡大防止につながる可能性が示された。

今後、感染から1年後に中和抗体が残っているかどうかについても調べる。

感染から6か月たっても中和抗体を保有している割合は下記の通り。

無症状  15人 97%
軽症 265人 97%
中等症(酸素投与) 71人 100%
重症(人工呼吸器等) 25人 100%
全体 (20~70歳代) 376人 98%

但し、中和抗体の量が重症化や再感染を防ぐのに十分なのかは分かっていない。

横浜市大の山中教授は記者会見で、「一般に中和抗体を保有している人が再感染するリスクは低いと考えられている」とし、さまざまなワクチンの感染予防効果がどれぐらい続くかについては「自然感染による免疫とワクチンによる免疫は必ずしも同一ではないが、自然感染による免疫が少なくとも半年続くと分かり、ワクチンに一定の期待を持たせる」と述べた。

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横浜市立大学では、東京都医師会・神奈川県医師会より後援、地域医療機関の協力を得て、新型コロナウイルス感染症より回復した人を対象に、「コロナ回復者専用 抗体検査Project」を実施した。

発症日から半年後と1年後の2回、微量の血液を採取。抗体の有無と、抗体が「中和抗体」かどうかを調べる 。
(感染抗原のあらゆる箇所に反応する抗体が産出されるが、そのうち、抗原を失活させ、病原性を抑える作用のある抗体を「中和抗体」と言う)

感染後に回復したフリーアナウンサーの赤江珠緒さん などが協力した。「医療体制や研究が充実したものになるよう協力したい」とし、多くの参加を呼びかけた。

回復者の体内に中和抗体が確認されれば、再感染する可能性が低くなる。また1年後までの中長期を経た後の各種抗体の減少率などについて調査をすることで、新たな生活様式・社会活動のあり方に関する提言やより正確な既感染率の推定などに繋がり、今後実施される多様な抗体保有率調査などにも活用されることが期待される。

8月よりコールセンターにて予約受付を開始し、9月より各協力医療機関での血液検査を行ってきた。

グループが独自に開発した精度の高い検出法を用いた。

横浜市立大学大学院医学研究科 微生物学の共同研究グループは7月28日、新型コロナウイルスに対する中和抗体を簡便かつ迅速に測定できる新しい手法(新規中和アッセイhiVNTシステム)の開発に成功したと発表した。

実際の感染性ウイルスや遺伝子組換えウイルスを使用せず、ウイルスの殻だけからなる、ウイルス様粒子 (VLP) を使用することで、特殊な実験室や設備を必要としない。

発光によって標的タンパク質を定量するHiBit(11アミノ酸のペプチドタグ)を活用。表面に新型コロナのSタンパク質があり、HiBitで目印を付けたウイルス様粒子(VLP)を試験用細胞に投入した後、細胞内にあるLgBiTタンパク質とHiBitの相互作用で光る酵素の活性度合いで、中和活性のレベルを測る。酵素の発光量が少ないと、VLPが細胞に侵入している量が少なく、中和活性が高いと判断する。

https://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/202007ryo_covid_hibit.html


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海外でも複数の抗体調査が行われているが、英国のKing's College London は7月13日、横浜市大とは逆の報告をしている。

King's College London のSchool of Immunology & Microbial SciencesのNature Microbiologyでの発表によると、3~6月に陽性と診断された患者と医療従事者、計96人(無症状者を含む)に抗体検査を複数回実施した。

中和抗体の量は発症後約3週間でピークに達し、その後は減った。抗体の量は重症者が多かった。

発症後65日たつと、中和抗体が強く働いていた人は2割もなく、一部の軽症者はほとんど検出されなかった。

様々な研究報告から、新型コロナ感染症から回復後、抗体が急速に減る可能性が示されている。

横浜市大では、海外の研究は減少しやすい抗体を見ているのではないかと見ている。


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