米、スイスとベトナムを「為替操作国」に指定

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米財務省は12月16日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表し、スイスとベトナムを「為替操作国」に指定した。
このほか、台湾、インド(いずれも過去には指定あり)とタイを「監視リスト」に追加した。


米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。

  従来の基準 2019/5より改正
①重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 同左
②実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 GDPの2.0%以上
③外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月
同左
(12カ月のうち、6カ月


財務省は2016年4月の報告で、3つの基準全てに当て嵌まる国はないことを確認したが、3つの基準のうち2つに該当する国を「監視リスト」に載せ、監視していくこととした。


なお、監視国が翌年に対象外となった場合は、その年は監視国とし、その後は指定が外れる。

中国については、2016/4に監視国となり、その後は、①の1つしか基準を超えていないが、対米貿易黒字が膨大なため、次回の報告書でも自動的に指定される。

2016/5/2 米、日本や中国などを為替操作「監視リスト」に


中国は、2019年8月に人民元が急落、これを受け、財務省は半期為替報告書の枠外で、中国を為替操作国に指定した。

その後、人民元が戻したため、半期為替報告書ベースでは①のみでの監視国としている。

2020/1/15 米、中国の「為替操作国」解除 

今回も同様だが、為替管理、特に中国人民銀行と国有銀行との関係について「透明性の向上」を求めた。


日本は当初から①重大な対米貿易黒字、②実質的な経常黒字で監視国になっている。


今回、スイスとベトナムが「操作国」になった。両国とも3基準全てに該当した。2016年4月以降、3基準該当で「操作国」となったのは初めて。

財務省は、スイスとベトナムが2020年6月まで、外国為替市場に介入したと指摘、スイスの介入の少なくとも一部は、国際収支の調整を防ぐためのスイスフラン押し下げが目的だったとしたほか、ベトナムもドンを押し下げ貿易上の優位性を獲得するために介入の少なくとも一部を利用したとした。

スイス国立銀行(中央銀行)は、為替操作は行っていないと主張している。

ベトナム国家銀行は、「過去の為替管理はインフレの抑制とマクロ経済の安定を目的とするもので、不公平な貿易競争による利益を狙ったものではない」と反論し、将来もこの政策を維持すると発表した。

③で監視対象となった国には、インドとシンガポールがある。

米財務省は為替操作国に認定した国に対して2国間協議を求め、問題が解決しない場合は輸入品への関税引き上げなどの制裁措置を検討する。

これまでと今回のリストは下記の通り。

操作国
3基準
監視国
2基準
監視国
前年に監視対象   丸数字は問題となった項目
  日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド アイルランド ベトナム イタリア マレーシア シンガポール タイ
2016/4
2016/10
2017/4
2017/10
2018/4
2018/10
2019/5
 

①②



①②

 

 

①②

①②

①②

①②

②③
2019/8   操作国  
2020/1
①②


①②

①②

①②

 



①②

①②

②③
2020/12
①②


①②

①②

①②
操作国
①③
操作国
①②

①②

②③

①②


報告書 https://home.treasury.gov/system/files/206/December-2020-FX-Report-FINAL.pdf



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