新型コロナウイルスの変異種、急拡大

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12月18日に下記の通り書いた。

英保健相は12月14日、英国で新型コロナウイルスの「変異種」が検出され、この変異種が最近の感染者数急増に関係していると述べた。

英保健相は、ロンドンと、イングランド南部の多くの地域で新型コロナウイルスの感染者数が「急増」しているのを受け、新たに規制を強化すると述べた。

「現在、この変異種による感染が1000件以上、確認されている。おもにイングランド南部で、60近い地方自治体におよんでいる」と述べた。

この変異種が、感染者急増にどの程度関与しているのかはまだわかっておらず、重症化しやすいという証拠も、ワクチンに耐性を持つことを示す証拠も何もない。

2020/12/18  COVID-19関連の動き

この変異種が急速に広がっている。英国のハンコック保健相は、「制御不能になりつつある」とし、感染力が最大70%高いとされる変異種への警戒をあらわにした。変異種の発見は9月だが、11月にはロンドンでの感染の4分の1、12月半ばには3分の2近くを占めるようになった。

変異種はすでにイタリアやオランダ、デンマークなどでも確認され、欧州以外でもオーストラリアで見つかった。南アフリカでは英国のものとよく似た変異種が急速に広がり、感染の80~90%を占めるようになった。

加藤官房長官は12月21日の記者会見で、「国立感染症研究所によると、日本で同様の変異したウイルスは確認されていない」と説明した。

付記

厚労省は12月25日、英国から航空機で入国した男女5人(2人は羽田、3人は関西空港)からウイルス変異種が検出された発表した。
政府は26日以降、英国や南アからの入国者に指定宿泊施設などで3日間の待機を求め、再検査で陰性を確認する。

12月26日には、東京都内在住の男性機長(英国から帰国、検疫除外)と家族の女性から変異種が検出された。いずれも入院しているという。

英政府は警戒レベルに「Tier 4」(自宅待機)を新設、何百万人もが対象となっている。イングランド、スコットランド、ウェールズでは、クリスマス時期の人々の交流を厳しく制限した。
独、仏、加、アルゼンチン、トルコ、香港、インド、ロシアなどが英国からの渡航や航空便受け入れを停止した。
英とEUの貿易の要であるドーバー港が閉鎖に追い込まれ、ユーロトンネルを利用したトラックの往来も事実上できなくなった。

トヨタ自動車は英国とフランスの工場の稼働を22日から順次停止すると明らかにした。英国で新型コロナウイルス変異種感染が拡大している影響により両国間の物流が停滞しているためで、24日からの冬季休業を前倒しする。

付記  

英政府は12月23日、新型コロナウイルスの新たな変異種を確認したと発表した。すでに見つかった変異種よりも、さらに感染力が強いという。

新たな変異種は2人から見つかった。いずれも南アフリカからの渡航者と接触があった。

ハンコック保健相は「すでに見つかっている変異種よりもさらに感染力が高い」と述べ、南アに過去2週間以内に渡航した人や接触者などに隔離を求めた。

この新型コロナウイルスの変異速度は、24.7塩基変異/ゲノム/年、(1年間で平均24.7カ所の変異が起こる) と推定されている。

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BBCは「新型ウイルスの変異種、いまわかっていること」を明らかにした。

今回の変異種(H69/V70)は、次の3点がみられることから注目を集めている。

・新型ウイルスの他の変異種と急速に入れ替わっている
・新型ウイルスの重要と思われる部分に影響を与える変異をしている
・変異の一部は新型ウイルスの感染力を強めることが研究で確認されている

今回の変異種が最初に見つかったのは9月だった。11月にはロンドンで確認された感染の約4分の1が、この新たな変異種だった。12月中旬になると、感染の3分の2近くが変異種となった。

Milton Keynes Lighthouse laboratoryによると下図の通りで、赤が変異種。


北アイルランドを除くイギリス各地で見つかっているが、ロンドン、サウス・イースト、イングランド東部にかなり集中している。

新たな変異種に関する初期段階の分析によると、重要な影響を与え得る17種類の変化が特定されている。

変化はウイルスのスパイクタンパク質で確認されている。
N501Yと呼ばれる変異は、スパイクタンパク質の最も大事な部分で、人体の細胞の表面に最初に触れる受容体結合ドメイン(RBD)を変える。変化によってウイルスが人体の細胞に簡単に入り込めるようになるのであれば、そのウイルスは強化されていると考えられる。

一方、スパイクタンパク質の一部が失われる、H69/V70削除と呼ばれる変異も、これまで何度か出現している。新型ウイルスに感染したミンクからも、この変異が見つかっている。
ケンブリッジ大学研究は、こうした変異によってウイルスの感染力が2倍に高まることが実験で確認されたとしている。
この変異が、新型ウイルスに感染して回復した人の血液から取った抗体の攻撃力を弱める可能性もあるとしている。

致死率の上昇を示唆する研究はない。


新型ウイルスのワクチンは、少なくとも現時点では、ほぼ確実に効く。

先行している3種類のワクチンすべてが、現存のスパイクタンパク質に対して免疫反応を生み出す。ウイルスのいくつかの異なる部分を攻撃できるようにするため、スパイクタンパク質の一部が変異しても、ワクチンは効果を発揮するはずである。

ただ、さらなる変異を許した場合には懸念が生じる。「このウイルスは、ワクチンから逃げ延びる過程にあるのかもしれない」

今回の変異種は、新型ウイルスがより多くの人に感染しながら、同時に適応も続けていることを示している。

英グラスゴー大学の教授は、「新型ウイルスはおそらく、ワクチンを逃げ延びる変異をするだろう」と結論づけた。

インフルエンザのように、絶えずワクチンを最新のものにしていく必要があることを意味する。

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