中国もインターネット企業を規制

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中国政府は、国内で最も影響力のあるインターネット企業のパワーを抑えにかかっている。

中国の市場監督管理総局は12月14日、過去の買収案件で当局に申請して承認を得なかったとしてAlibaba(阿里巴巴)阅文集团(China Literature)に罰金を科すと発表した。Alibaba、China Literatureともに50万元(約800万円)の罰金が科される。

Alibabaは2017年1月、中国大手モール運営会社Intown の買収を明らかにした。Intownは中国に29の百貨店と17のショッピングモールを運営している。3年前に一部出資したが、100%買収し、上場廃止とするもの。

阅文集团(China Literature) はTencentからスピンオフ したオンライン文学プラットフォームの運営に従事する会社で、読者に簡単なアクセスで各種コンテンツ・ライブラリを提供し、オリジナル文学をオンラインで作成・公開することを可能にするもの。同社は2018年に映画制作会社の新麗伝媒(New Classic Media)の株式をすべて買収した。

AlibabaとChina Literatureは当局に買収を申請しなかった。しかし買収はいずれも「マーケットの競争を阻害するもの」とみなされず、中国の独禁法に則って買収を破棄するのではなく罰金を科した 。

AlibabaとChina Literatureは、市場集中違反で「持分変動事業体(VIE)である企業に中国が罰金を科した初のケースとなる。投資者がVIE(変動持分事業体)から経済的便益の提供を受けるならば、議決権の半数によらず連結対象とみなされる。

AlibabaやTencentをはじめ、中国のインターネット企業の多くは、中国人によって創業され、経営陣も中国人が中心となっているが、海外で上場しており、その株の過半数が外国投資家によって保有されるという意味において、中国にとって「外資企業」である。

中国政府は、インターネット産業に対して、外資の参入を制限しているが、多くのインターネット企業は、VIEスキームを採用することを通じて、これらの規制を回避している。

VIEスキームでは、当該企業が、(1)事業を行う内資運営会社と、(2)融資プラットフォームと海外上場の主体となる海外登記の持株会社に分割される上、外国投資家を含む持株会社の株主は、出資ではなく、子会社や一連の契約を通じて内資運営会社を支配し、その株主とほぼ同等の権利を享受する。

しかしこれは規制の抜け穴となるとして議論を呼んでおり、2019年1月にパブリックコメントの募集を開始した中国の独禁法は現在、見直しが進んでいる 。

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Tencent(騰訊控股)が出資しているゲームストリーミング大手HuyaとDouYuの合併もまた当局の調査を受けている。

「Huya(虎牙)」と「DouYu(斗魚)」 は、中国では1位と2位の座にあるゲームストリーミングプラットフォームで、市場シェアは2社で約80%を占めるが、Tencent Holdingsは、Huya と DouYuの合併を提案しており、100億米ドル以上の企業価値を持つゲームストリーミング大手となることが期待されている。

Tencent は Huya 株式36.9%、議決権50.9%を保有していたが、Huya の親会社である Joyy(歓衆集団)から持株を買収し、株式比率を51%、議決権比率を70.4%に引き上げた。

また、DouYu の筆頭株主でもあり、38%の株式を保有している。

両社は既に合併契約を締結しており、2021年上半期に合併、DouYuはHuyaの100%子会社となり、NASDAQ上場を廃止する。

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中国の規制当局は12月24日、中国ネット大手のアリババ(阿里巴巴)集団を独禁法違反の疑いで調査を始めたと発表した。アリババ集団傘下の金融会社Ant Group螞蟻集團に対しても近く指導する。

中国で独占禁止法を管轄する国家市場監督管理総局 は、取引先の企業にライバル企業と取引しないよう求める「二者択一」などが独禁法に違反した疑いがあるとして立件に向けて調査を始めたと発表した。家電大手との取引が問題となっていた経緯がある。

独禁当局は12月14日にアリババに対して過去のM&A(合併・買収)の際に当局への申請がなかったことが違反に当たるとして罰金を科した が、今回はネット通販という中核事業そのものにかかわる調査のため、アリババのネット通販事業に大きな影響を与えることは避けられない。

中国人民銀行(中央銀行)も12月24日、近くアントを聴取すると発表した。法律など原則に基づいて公平な競争や消費者の合法的な権利を守るように指導するとしている。

アントは11月に上海と香港に上場し、4兆円規模の資金を調達する予定だった。だが、直前にアリババ創業者の馬雲(Jack Ma)氏とアントの幹部が金融当局の聴取を受け、急きょ上場延期が決まった。今回の指導を通じて、アントへの統制を強める。

スマートフォンの決済サービス「アリペイ」などを運営する「アントグループ」は11月3日、上海と香港の証券取引所で同時に行うことになっていた株式の上場を延期すると発表した。

Wall Street Journalは、アリババ集団系列の金融会社アント・グループによる新規株式公開(IPO)の延期について、決定したのは習近平国家主席だったと報じた。
アント・グループの実質的オーナーである Jack Maは10月下旬、講演で金融当局の監督姿勢に不満を述べたが、習氏はアリババ創業者Jack Maによる政府批判に激怒、自身による支配や安定性への挑戦と受け止めたという。

中国人民銀行(中央銀行)など金融当局は12月26日、アント・グループを聴取した。「企業統治が不健全」など問題点を指摘、決済という本業への回帰を求めた。十分な資本の確保も指示した。
企業統治に加え、順法意識の希薄さ、優越的な地位を利用して同業他社を排除したこと、消費者の利益を損ねた点を挙げた。

金融当局はアントが受け取る高額の手数料が銀行の経営体力を奪い、金融システムのリスクになり得ると問題視してきた。

金融当局はアントに5項目の改善要求を突きつけた。本業回帰や資本の充足、金融持ち株会社の設立などに加え、「監督当局の要求に基づき、規則に反する与信と保険、資産運用業務を見直すこと」を求めた。できるだけ早期に業務の改革案とスケジュールを作成するよう指示した。アントは「すでに改革案とスケジュールの策定に着手した」などとするコメントを発表した。

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中国当局は12月30日、アリババグループの傘下企業などに対し、価格法に違反したとして罰金50万元(約800万円)を科す決定を出した。
11月11日の「独身の日」に展開したセールの際、関与する通販サイト「天猫」で不当に価格を操作する行為があったとしている。


通販大手、京東集団(
JD.com)の傘下企業と、割引販売サイト「唯品会」の運営会社も対象となった。


アリババは傘下のネット通販「天猫(Tmall)」で、セール価格として27.9元でコメを販売していたが、実際には前日に24.9元で販売していた商品を値上げしていた。京東、ネット大手の騰訊控股(テンセント)が出資する唯品会も同様の違反があったとしている。

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