米国、半導体SMICなど中国企業77社をEntity Listに追加

| コメント(0)
米商務省は12月18日、半導体メーカーの中芯国際集成電路製造(SMIC : Semiconductor Manufacturing International Corporation)を含む中国企業77社をEntity Listに加えたことを明らかにした。「国家の安全を守るため」だと理由を挙げた。


Entity Listは輸出管理法
(規則 744.11(b) )に基づき安保上懸念がある企業を指定するもので、海外企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

SMICについては発表時点以前に商務長官がインタビューで言及しているが、同社以外の対象企業名は12月22日に発表される。

SMICについては、「中国が軍民融合の国家戦略を進め、中国の軍産複合体でSMICと懸念される団体との活動が確認された」とし、他については、①中国での人権侵害、②南シナ海での軍事化、不当な領有権主張、③人民軍の計画支援のため米国原産品の取得、④米国の営業秘密盗用にかかわる企業となっている。

SMICは2000年に設立した半導体受託生産の中国最大手で、2019年の売上高は31億ドル、純利益は2億ドルに達する。中国国有通信機器大手や国策ファンドなどが大株主に名を連ねる。

同社は半導体生産に米Applied Materialsをはじめとした米企業の製造技術を活用している。輸出許可がでなければ、工場新設や増設が難しくなる可能性、半導体の生産などに悪影響が出る恐れがある。
SMICはHuawei傘下の半導体設計会社の海思半導体(HiSilicon Technology)から生産を受託し、Huaweiのスマートフォンや通信機器に半導体を供給している。


同社は、既に
10月4日に、同社の一部の米国サプライヤーが、同社が米追加輸出制限の対象であるとの通知を受けたと明らかにしている。

投資家向け開示資料で「輸出制限の生産や運営への影響の評価を始めた。一部の米国から輸出された設備や付属品、原材料の供給が遅れたり、不確実が生じたりして、将来の生産や運営に重要かつ不利な影響が出る可能性がある」と表明した。事業を展開する全ての国・地域で関連法規制を順守していると強調している。

SMICはまた、米商務省産業安全保障局と「予備的なやりとり」を行ったと明らかにした。

国防総省は9月上旬、安保上問題がある企業を並べたEntity ListにSMICを加えるか政権内で議論中だと明らかにしていた。SMICが中国人民解放軍の軍事プロジェクトに深くかかわり、防衛インフラの整備に加わっているのではないかという懸念があるためとしている 。

2020/10/8 中国SMIC、米輸出規制対象に  


なお、77社のなかにドローン(小型無人機)世界最大手の中国DJI が含まれていることが分かった。「ハイテク監視技術を通じて中国内での大規模な人権侵害を可能にした」としている。

ーーー

Entity Listはこれまで、大量破壊兵器(WMD)プログラム、テロリズム又はその他の行為のリスクをもたらす恐れのある企業が対象であった。

「知財戦争」に適用するものでは、2018年10月29日に中国の福建省晋華集成電路(Jinhua Integrated Circuit Company:JHICC)が初めてである。

米商務省は2019年5月15日、その2番目として華為技術(Huawei)を加えた。8月19日にはHuaweiへの米国製品の禁輸措置を強化、関連会社46社を追加した。

2019/5/16 米国、Huawei を対象に2施策
2019/8/21 米、Huawei 禁輸強化  

2019年6月21日には、スーパーコンピューター大手5社とそれぞれのグループ会社を追加した。スパコンが「核爆発のシミュレーション」などの軍事目的に利用されていると指摘した。

2019/6/24 米、中国スパコン大手を禁輸対象に指定

2019年10月には、監視カメラ世界首位の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などハイテク8社と、新疆ウイグル自治区各地区の公安部門など20機関をEntity Listに加えた。新疆ウイグル自治区の住民たちに対し先進技術を用いた監視によって抑圧、大量の恣意的な拘留などを強いるのに協力していたと判断されるとした。

2019/10/9 米、中国の少数民族弾圧でハイテク企業と公安部門をEntity Listに追加 

コメントする

月別 アーカイブ