バイデン次期大統領、1兆9千億ドル規模の追加経済対策案を発表

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バイデン次期大統領は1月14日、1兆9千億ドル(約197兆円)規模の追加経済対策案American Rescue Plan を発表した。

この対策案にはCOVID-19への対応、COVID-19の影響に苦しむ家計支援、COVID-19の影響を受けたコミュニティへの支援など、世界最大の経済を再生するための多くの措置が含まれている。

デラウェア州ウィルミントンで演説したバイデン氏は、「こうした雇用や人種間の平等に対する投資は、長期的な経済損失を防ぐことにつながり、その利益は投資費用をはるかに上回る」と訴えた。「この危機的状況の中で、(中略)何もしないわけにはいかない 。」

さらに、「われわれは税金を米国の再建に使う。米国製品を買い、米製造業界で働く数百万人の雇用を支え、競争が激化する世界で米国の競争力を高める」と言明した。

政権移行チームは政策案発表に当たり、「時間との闘いだ。追加の政府支援がなければ経済と公衆衛生の危機が今後悪化する恐れがある。学校は安全に再開できず、ワクチン接種は進まないままとなる」と警告した。

バイデン次期大統領は1月20日の大統領就任直後に第2の「回復」計画(報道では下記のようなもの)を議会に提出する意向だという。

・再生エネルギーへの投資と雇用創出(選挙中は4年で2兆ドルと公約)
・バイアメリカン(連邦政府の物品調達などで)
・育児・介護支援(保育園無償化、子育て世帯の税優遇など)

問題は、共和党がこれまで反対してきた支出が多数含まれていることである。トランプ大統領が主張した一人当たり1400ドルの追加支給は下院が可決したが、上院では共和党が握りつぶした。州などの支援は主に民主党系知事の州への支援だとして共和党は反対してきた。最低賃金引上げなども、州レベルでは多く引き上げられているが、国レベルでは2009年から引き上げられていない。

下院は民主党が多数であるが、上院が問題である。決選投票での勝利で民主党(民主系無所属2名を含め)は共和党と同じ50票を獲得し、賛否同数の場合は上院議長である副大統領が投票するルールで辛うじて多数を得た。

失業給付や最低賃金などの措置は「財政調整措置」として知られるプロセスを用いれば単純過半数で可決が可能であるが、州・地方自治体支援やワクチン向け資金などの上院通過には60の賛成票を要する。
(共和党議員ののフィルバスターによる実質否決を避けるには 3/5の60票が必要である。)

共和党から10名の賛成票が得られるかどうかがキイとなる。

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American Rescue Plan は3つの部分からなる。

1.コロナ対応(ワクチン計画、COVID-19抑え込み、学校再開)
   
Mount a national vaccination program, contain COVID-19, and safely reopen school

2.コロナ危機に苦しむ勤労家庭の即時救済
   
Deliver immediate relief to working families bearing the brunt of this crisis

3.COVID-19の影響を受けたコミュニティの支援
   
Support communities that are struggling in the wake of COVID-19

詳細は下記の通り。                                             予算 億ドル

コロナ対応 全国的なワクチンプログラム 全国にワクチンセンター設置、遠隔地には移動ワクチン隊
全国民に無料接種
200
COVID-19検査体制 検査の拡大(急速検査購入、ラボ能力増強投資など)、学校と地方政府が常時検査できるよう支援 500
サポート体制 10万人のヘルスワーカー雇用 900
対策での差別排除等々 Community Health Center設立などを通じ、対策での差別を排除
(コロナ対策 合計) 1600
学校の再開支援 学校の安全な再開 1300
Higher Education Emergency Relief Fundの拡大
 カレッジなどの学生に1人当たり1700ドルまでの支援
350
深刻な影響を受けた学生支援のため知事向けのファンド 50
緊急有休休暇 ウイルス拡散防止のため106百万人に14週の緊急有休休暇(週1400ドル)を与える。
2021年9月末まで継続
 子供の学校、保育所がクローズの場合の両親、家族が症状 等々
 連邦職員 2百万人
雇用者には政府が補填
家計支援 直接給付金 増額 直接給付金を昨年12月承認の600ドルから計2000ドルに1400ドル増額  

トランプ大統領は少なすぎるとして当初認めなかったが、その後承認し、同時に議会に対し、無駄な支出を避け、国民に成人には2000ドル、子供には600ドルを渡すよう、伝えた。
下院は追加の1400ドル支給法案を通したが、与党共和党主導の上院は認めず、1人当たり600ドルで確定した。

失業保険の州支給分への上乗せ 昨年は週600ドルであったが、追加景気対策予算では週300ドル上乗せとした。
これを400ドル上乗せとする。
住宅支援 被害の大きい家族に、強制立ち退き、担保権執行などの9月末までの延期
被害の大きい賃貸人に賃貸料や光熱水道料補助に300億ドル供与 300
ホームレス回避に50億ドルの緊急支援 50
飢餓対策 Supplemental Nutrition Assistance Programの15%増
女性、幼児、子供の食品確保に30億ドルの投資 30
レストランと組み、米国の家族に食を与え、同時にレストラン従業員の雇用継続
Supplemental Nutrition Assistance Programで州の拠出を一時的にカット
米国海外領土の住民のため10億ドルの追加の栄養支援 10
最低賃金の引き上げ 連邦法では2009年7月以降、時給は7.25ドルのまま、これを15ドルに引き上げ

州法ではワシントン州の13.50ドル以下、10ドル以上が10州以上ある。
従業員は連邦と州の高い方を受け取る権利がある。
市でも決めているところがあり、NY市は2020年から15ドル。 

essential workersへの対応 必要不可欠業務従事者は黒人等が多いが、リスクの割に報酬が少ない。業務に見合った報酬を払うよう、雇用者に要求
高品質で低価格のchild care 業者の業務継続支援のため250億ドルの緊急安定化ファンド 250
両親が職場に戻れるよう、支援を拡大
費用の補助のため税額控除を拡大
家計補助 勤労所得税額控除の拡大など
健康保険 失業者は健保がなくなるが、COBRAプログラム( 雇用時と同様の保険を継続)の適用を検討など
コミュニティの支援 中小企業支援 事業再建の支援
被害の大きい100万以上の中小企業に150億ドルの補助金 150
350億ドルの政府資金をテコに、1750億ドルの低利融資 1750
州等への支援 職員の雇用を継続し、COVID-19に対応するための支援として州や市町村に3500億ドルの緊急支援 3500
同じ目的で Economic Development Administrationに30億ドルの資金供与 30
公共交通の将来を保護 公共交通機関の支援 200
インデアン 部族政府のコロナ対策支援 200
サイバーアタックに対応し情報技術を保護 Technology Modernization Fundの拡大 90
サイバーセキュリティ技術向上と専門家採用 2
Technology Transformation Servicesの投資 3
セキュリティモニター、事故への対応 7
総合計 1兆9000

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バイデン次期大統領は1月15日、地元デラウェア州で演説し、新型コロナウイルスのワクチンの接種が進んでいないとして「アメリカのワクチン接種は今のところ惨めな失敗だ」とトランプ政権の対応を批判した。

トランプ政権は12月中に2000万人に接種を受けさせるとしていたが、1月14日朝の時点で各州に届けられたワクチンは約3000万回分で、接種を受けたのは1110万人にとどまっている。

そのうえで、ワクチンを接種できる施設を就任後1か月間で新たに全米100か所に設け、最終的には数千か所に増やすほか、遠隔地には医師などを派遣して接種を進める方針を明らかにした。

また、人手不足を補うため、退職した医師などに協力を求め、接種の対象者もこれまでの医療従事者などに加え、65歳以上の高齢者や、教師、食料品店の従業員などにも広げる 。また、低所得地域でのワクチン接種拡大や、ワクチンに懐疑的な国民向けに接種を奨励するマーケティングキャンペーンを打ち出す。

さらに、列車や航空機で州をまたぐ移動をする人や、連邦政府の職員にマスクの着用を義務づける大統領令を出すことも明らかにし、感染対策に力を入れると強調した。

マスクを着けるのは「愛国的な行動だ。皆さんにお願いしたい。われわれはこのウイルスとの戦いの中にある」と強調した。

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