貧困国へのCOVID-19 ワクチン供給

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貧困国へのワクチン供給について、この数日間で多くの動きがあった。

WHOのTedros Adhanom 事務局長は1月18日、COVID-19ワクチン接種の状況について、分配の不平等が起きていると懸念を示した。

WHOなどが主導する枠組み「COVAX ファシリティー」で貧困国・低所得国にワクチンの供給を 行なうこととしているが、一部の先進国はCOVAXに先回りして自国分を確保するため、ワクチン価格を押し上げて製薬会社と取引している、と苦言を呈した。

また、これまでに少なくとも49の高所得国で計3900万回分以上が投与された一方、アフリカのギニアを想定して「最低所得国での投与はたったの25回だ」とも指摘し 、「世界は悲惨な道徳的失敗の危機に瀕している」として、先進国や製薬企業に公平なアクセスへの貢献を求めた。

直後の1月22日、WHOは「COVAXファシリティー」を通じた新型コロナウイルスのワクチン供給を2月に開始すると発表した。
このたびPfizer /
BioNTechが開発したワクチンについて、4000万回分の供給を受けることで合意し、開始のめどが立った

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2020年4月24日にWHOとCEPI、GAVI(下図参照)が国際協働の仕組み「Access to COVID-19 Tools Accelerator」(ACT Accelerator を立ち上げた。この柱の一つのワクチン分野をCOVAX(COVID-19 Vaccine Global Access)ファシリティが担当する。

CEPI「感染症流行対策イノベーション連合」が開発GAVIワクチンアライアンスが供給を取りまとめる


COVAXの目標は、2021年末までに、規制当局の承認やWHOの事前承認を受けた20億回分の安全で効果的なCOVID-19ワクチンを提供する。各参加国の20%を占める弱者に対して収入レベルに関わらずワクチンの平等な分配を実現しようとするもので、10年前のパンデミックから得た教訓をもとにしている。

資金を出して参加する国は一定額を前払い金として支払う。ワクチン開発に取り組む複数の製薬企業の研究開発などに使われ、開発に成功した場合、出資国は人口の20%分を上限にワクチンを確保できる。
途上国はGaviを通じてワクチンの提供を受ける。

日本政府は2020年9月1日、「COVAXファシリティ」に参加する方針であると発表した。

ホワイトハウスは9月1日、WHO主導の「COVAX」には参加しない方針を明らかにした。

トランプ政権は2020年7月6日、国連のグテーレス事務総長にWHOからの脱退を正式に通知し、1年後の2021年7月6日に脱退すると表明した。

COVAXの参加表明の期限だった9月18日までに日本を含む150カ国以上が加わったが、米国やロシア、中国は参加を見送っていた。

しかし、中国外務省は10月8日、「COVAX」に正式に加入した。「実際の行動でワクチンの公平な分配や発展途上国への供給確保を促進するためだ」と説明した。

2020/8/5 政府、ワクチン確保へ国際共同購入を検討

5月中国の習近平国家主席はWHO総会で演説し、途上国を中心とする国際的な感染対策のために今後2年間で20億ドル(約2100億円)を提供すると表明。ワクチンの開発に成功すれば「国際公共財」とする考えも示した。


Trump大統領は不参加を決めたが、Biden新大統領は1月21日、大統領令でCOVAXへの参加を表明した。

National Security Directive on United States Global Leadership to Strengthen the International COVID-19 Response and to Advance Global Health Security and Biological Preparedness

Sec. 2. United States Leadership in the Global Response to COVID-19

The Secretary of State and the Secretary of HHS shall inform the WHO and Gavi, the Vaccine Alliance, of the United States' intent to support the Access to COVID-19 Tools (ACT) Accelerator and join the multilateral vaccine distribution facility, known as the COVID-19 Vaccine Global Access (COVAX) Facility.

米国立アレルギー感染症研究所のAnthony Fauci 所長は1月21日のWHO執行理事会で、米国がCOVAXを含むWHOの包括的な新型コロナ対策支援策「ACTアクセラレーター」に参加し、WHOへの拠出金を出す義務を果たすと表明した。

米国のCOVAX加入で途上国などへのワクチンの公平な配分が進む可能性がある。

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「COVAX」は1月21日、本年に18億回分を貧困国・低所得国に供給するとの最新目標を明らかにした。
ワクチン買い取り補助金事前保証制度(AMC)を通じ、92カ国に供給する。対象国の総人口の約27%への接種が可能になるという。

今年後半には、これと別に自国で資金の工面ができる参加国との供給契約を履行したいとの期待も示した。


WHOは1月22日、「COVAXファシリティー」を通じた新型コロナウイルスのワクチン供給を2月に開始すると発表した。
既にAstraZenecaなどとは合意に達していたが、このたびPfizer /
BioNTechが開発したワクチンについて、4000万回分の供給を受けることで合意し、開始のめどが立った。

PfizerのCEOは1月22日、WHOのテドロス事務局長らとともにオンラインで会見し、同社が年内に製造する20億回分のうちCOVAXに供給する分は「利益を度外視する」と述べ、今後、追加供給する意向も明らかにした。


中国政府は1月20日、「COVAX」に国内のワクチンメーカー3社が参加を申請したと発表した。

シノバック・バイオテック(科興控股生物技術)、中国医薬集団(シノファーム)、康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)がCOVAXを通じたワクチンの供給を申請したと明らかにした。ワクチンの供給量等は明らかにしていない。

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