COVID-19の治療に一酸化窒素の鼻スプレイ

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カナダの SaNOtize Research and Development Corp.は1月10日、同社がCOVID-19 対策に開発した一酸化窒素の鼻スプレイ:SaNOtize Nitric Oxide Nasal Sprayの英国での臨床試験が英国の Ashford and St Peter's Hospitals NHS Foundation Trustで始まると発表した。

ウイルスを上気道で殺し、肺に広がるのを防止する。Utah State UniversityのAntiviral Research Instituteのテストで、COVID-19の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を2分以内に99.9%殺すことが認められたという。現在、カナダでPhase 2 の治験を実施中。

原料は一酸化窒素で、光化学スモッグや酸性雨の成因に関連するが、体内でも生成し、血管拡張作用を有する。

SaNOtize Research and Development Corp の共同設立者でCEOのカナダ系イスラエル人 Dr Gilly Regevは、「ウイルスは鼻から入り、拡散する。身体に入る段階でウイルスを殺せば、病気にかからない」と述べている。


2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)による肺の障害に対して、以下の点から一酸化窒素(NO)吸入療法の有効性が認められた。

① 感染細胞内のコロナウイルス増殖抑制
血管拡張による肺換気血流改善とそれによる動脈血酸素化改善
炎症抑制(白血球粘着抑制、血小板凝集抑制、血栓形成の抑制など)

COVID-19のウイルス(SARS-CoV-2)は、SARSのウイルス(SARS-CoV)の姉妹種である。

COVID-19対策としても、一酸化窒素を利用して各地で試験が行われている。

FNNプライムオンライン(2020/4/28)に、マサチューセッツ総合病院で一酸化窒素をコロナ患者に吸入させる臨床試験を行っている麻酔科医の市瀬 史医師のインタビューが載っている。

一酸化窒素は私たちの細胞も出しているガスで、おもに血管を拡張させるものです。
それが最初に注目されたのは、新生児の肺高血圧という肺の血圧が上がってしまう病気で、一酸化窒素を吸入させることで効果が見られた。大人の肺疾患にも一酸化窒素吸入は行われている。

2003年に中国で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の患者に使用し、一定の効果が認められた
当時のSARSウイルスと、今回の新型コロナウイルスはもちろん違うものだが、かなり似た点もある。

新型コロナウイルス肺炎になると患者の肺の近くの血管は細くなったり血栓ができたりして流れが悪くなって酸素を取り込みにくくなる。そこに一酸化窒素が吸入されると、肺の近くの血管に達し、血管を広げて血栓をできにくくするので血液の流れを良くすることができる。流れが良くなった血管には、肺から十分に酸素を取り込むことができるから息が楽になる。


城西大学薬学部・城西大学薬学研究科の小林 順 教授・村田 勇 助教を中心とした研究グループは、クラッシュ症候群(腎不全やサイトカインストームから起こる多臓器不全による致死的病態)にNO供与体が病態改善の効果と著明な救命効果があることを動物実験などで報告している。

COVID-19の肺障害を介したサイトカインストームに着目し、ECMOへの移行を減らすため、NO吸入療法を提案している。 上記のSARSへのNOガスの有効性の3つのポイントを根拠にしている。

ドイツの救急医療専門雑誌のAnnals of Intensive Careに2020年5月20日付で投稿した。

Nitric oxide inhalation as an interventional rescue therapy for COVID-19-induced acute respiratory distress syndrome


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COVID-19の治療に一酸化窒素が有用との資料は多いが、これまでは、COVID-19の患者の治療である。

今回は鼻から入ったウイルスを一酸化窒素で殺し、予防するというものである。

これが有効であれば素晴らしく、治験の効果が期待される。

発表されたのはウイルスを殺す効果(99.9%)であるが、COVID-19防止の効果が示されるであろうか。

素人の疑問として、

・一酸化窒素の効果がどれだけ続くのか、どんな頻度でスプレイする必要があるのか?

・唾液検査が有効なのは口からのウイルス侵入があるためと思われるが、これはどうやって防ぐのか?




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