英政府、「中外製薬のリウマチ治療薬が新型コロナに有効」

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英政府は1月7日、関節炎治療薬の「トシリズマブ」と「サリルマブ」が新型コロナウイルス感染症の治療にも有効だと発表した。

8日から、英国全土の病院の集中治療室に入院中のコロナ患者を対象に投与する。コロナの治療薬としては抗炎症薬「デキサメタゾン」などに続くものとなる。

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抗炎症薬「デキサメタゾン」

英オックスフォード大は2020年6月16日、抗炎症作用のある一般的なステロイド剤デキサメタゾンが、新型コロナウイルスの重症患者の死亡率を減らすのに効果的だとする臨床試験の結果を公表した。

これを受けて英国の保健・社会福祉相は同日、新型ウイルス感染症の標準治療に午後からデキサメタゾンを含めると表明した。

日本の厚生労働省は、7月に新型コロナウイルス感染症の診療ガイドラインに「デキサメタゾン」を新たに掲載した。
効果が検証され国内で使用が認められた治療薬は、5月に特例承認された「レムデシビル」に続いて2例目。

既に承認、保険適用されていて、肺の疾患や重症の感染症も投与の対象となっている。低価格で手に入りやすいのが利点。

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英政府が支援した臨床研究では、集中治療室の患者に対して抗炎症薬「デキサメタゾン」の投与など通常の治療をした場合の死亡率は35.8%だったのに対し、搬送から24時間以内にトシリズマブなども追加で使った場合は27.3%まで低下した。

この結果、2つの薬を追加で投与した場合に死亡リスクが24%下がると結論づけられ、患者が集中治療室に入る期間も7~10日間短縮できたという。
英国では今後、集中治療室に運ばれた患者に対して使用する。

英政府はこの2剤を輸出制限リストに掲載した。英国民向けの供給を守るため、英国民用の薬を購入し、他国で高値で販売することを禁じる。

2剤の概要は次の通り。

「トシリズマブ(Tocilizumab)」(中外製薬の製品名 アクテムラ)

トシリズマブは大阪大学と中外製薬が共同開発した日本発の治療薬で、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体 。関節リウマチ, 若年性特発性関節炎, 成人スチル病, 高安動脈炎・巨細胞性動脈炎, キャッスルマン病の治療に使われている。

日本では2020年5月から、新型コロナで肺炎が重症化した入院患者を対象に治験が実施されている。海外ではコロナ治療薬のレムデシビルと併用する治験が行われている。
中外製薬はこれらの治験結果を踏まえ、2021年中に日本で新型コロナ用として承認申請することを目指している。

欧州では中外製薬の親会社であるスイスのRocheが製造・販売している。英政府はRocheと連携する。

「サリルマブ(Sarilumab) 」(Sanofi の製品名 ケブザラ)

ヒト型モノクローナル抗体で、アクテムラに次ぐIL-6阻害薬。炎症を引き起こすIL-6の活性を抑制することで関節の炎症を改善し、全身症状(関節の破壊や変形から生じる機能障害、疲労、骨粗鬆症など)を緩和することが期待される。

Sanofiと米国のRegeneronが共同で開発を行い、米国、カナダ、欧州2017年に承認され た。日本ではサノフ2017927日 に既存治療で効果不十分な関節リウマチ」の効能・効果において製造販売承認を取得した

サノフィは2017年12月に旭化成ファーマと日本でのライセンス契約を締結した。サノフィおよびRegeneron社が製造を担い、旭化成ファーマが流通・販売を 担う。

これらの薬の有効性は下記の研究で明らかになった。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長は2020年4月15日、北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授と共同で、新型コロナウイルスに関する論文を発表した。

COVID-19で肺炎を起こしても軽い症状で治る場合もあるが、重篤化する人もいる。特に重症化したCOVID-19に発症する急性呼吸器不全は致死率が高い。この原因は免疫系の過剰な生体防御反応のサイトカインストームが原因であることを見付けた。

感染後期に見られる致死的な急性呼吸器不全症候群の治療には、すでに遺伝子導入T細胞(CAR-T)療法におけるサイトカイン放出症候群の治療に使用されており、かつIL-6アンプを阻害できる抗IL-6受容体抗体も有望である。

有望視されるのが、中外製薬のIL6 阻害薬「アクテムラ」(ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体)とされた。

2020/5/6 COVID-19の致死的急性呼吸器不全症候群の原因はサイトカインストーム

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