レナサイエンス、開発中のコロナ薬の優先交渉権を第一三共に供与

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レナサイエンスは1月17日、同社の開発品目であるRS5614(PAI-1阻害薬)について、第一三共とオプション契約を締結した と発表した。

RS5614のCOVID-19肺炎及びその他肺傷害等の呼吸器疾患治療薬の全世界を対象とした開発及び商業化の独占的実施許諾(ライセンス)に関する優先交渉権を第一三共に供与 する。

同社は本契約締結後も、COVID-19肺炎に対する国内における多施設第II相医師主導治験を進めるとともに、米国及びトルコで独立して実施中の第Ⅱ相医師主導治験についても推進 する。


レナサイエンス(Renascience)は東北大学大学院医学系研究科 宮田教授等の研究成果を用いて、老化に伴う疾病及びメンタル疾患等の医薬品の開発と実用化を目指し、2000年2月に大学発の創薬ベンチャーとして横浜市に設立 された。

同社では、「老化」あるいは加齢に伴い生じる種々の疾患の原因分子 として、PAI-1(Plasminogen Activator Inhibitor-1)に注目した。

これは、血管内皮細胞や肝臓、血小板、脂肪細胞などに存在し、血管内皮障害や血小板の崩壊により、血中に多く放出され る血栓の形成に必要な分子であり、血栓症治療の標的として研究が進められてきた。

PAI-1は、形成された血栓を溶解するプラスミンの生成反応を助ける組織プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)を特異的かつ即時的に阻害することで、線溶系反応を制御するはたらきがあ る。


近年ではこれが「老化」あるいは加齢に伴い生じる種々の疾患の原因分子として、その関与が強く示唆されてい る。

同社ではこのPAI-1の阻害薬を何とか開発したいと考え 、ヒトのPAI-1分子の結晶構造から、活性を阻害できる医薬品(低分子)を、コンピューター工学を利用して推測した。
そして、理論上、活性を阻害できる新規化合物を、10年以上かけてこれまで1,300個以上合成し、それらの活性や安全性、薬物動態などを評価する中で、RS5614 という候補を 得た。

動物での安全性試験を終了して、ヒトでの安全性試験(第一相試験)も終了した。

現在、RS5614を慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、新型コロナCOVID-19感染症の重症化の治療薬として臨床試験の段階 。


今後は、当初の目的である代謝疾患など、加齢に伴い生じる疾患にも、順次研究開発を進める予定 。


COVID-19感染症の重症化 )

高齢者や糖尿病などの基礎疾患を有するCOVID-19感染患者では、肺の炎症、線維化、肺気腫などが背景にあるため、 COVID-19による肺の傷害が急速に進行する場合がある。
また、肺傷害には微小血栓が著明に認められるなど、COVID-19感染患者は血栓症リスクが高く、血液凝固能が高まっていることが報告されている。

2020年5月18日に厚生労働省が発行した『診療手引き・第2版』においても、新型コロナウイルス感染症の患者での血栓症予防が重症化を回避するための重要な治療と考えられている。

開発しているRS5614(PAI-1阻害薬)は、微小血栓の溶解を促進することが分かっており、動物試験で肺の気道炎症、線維化、肺気腫を有意に抑制 する。

したがって、特に肺に基礎的障害を持つ高齢者や、代謝性疾患、動脈硬化、心疾患、腎疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患を持ち、COVID-19感染症が悪化しやすい患者のARDS (急性呼吸窮迫症候群) への悪化を防ぎ、肺を保護する新薬として有用である可能性が強く示唆されている。

現在、軽症から中等症の肺炎を伴うCOVID-19感染患者を対象として、RS5614の治療効果と副作用を確認するための第二相試験(医師主導治験)を日、米、トルコの3地域で独立して実施中 。

(がん治療)

がんの大きな問題は、一旦治療したがんが「再発」してしまうことで、同社では、血液のがんである慢性骨髄性白血病を対象として、がんの再発を防ぐための新しい治療法の開発に取り組んでい る。

がん細胞は、がんの幹細胞から増えるが、がん幹細胞は微小環境(がんニッチ)という環境に守られているため、これまでの抗がん剤の治療法ではがん幹細胞を攻撃することは出来 ない。

RS5614(PAI-1阻害薬)は、がん幹細胞をがんのニッチから追い出す効果が期待され、抗がん剤と併用することでがん幹細胞を滅ぼし、がんの再発を防げると考えられ る。


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