新型コロナワクチンの委託生産 広がる

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世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は2月5日、新型コロナウイルスワクチンの生産量を増やすため、生産能力に余裕がある製薬会社は他社のワクチンを作るよう呼びかけた。
既に仏 Sanofiが米 Pfizerのワクチンを生産すると決めるなど徐々に広がっているが、さらなる協力を促した。

「Sanofi と Pfizerの事例に他社もならってほしい。生産が拡大すれば、低所得国が所得の高い国にワクチンを頼る構図も解消に向かう」などと語った。

Bayer も、ワクチンを開発する独新興企業CureVac のワクチンを生産すると発表している。

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Sanofiは1月27日、ドイツのBioNTech と米Pfizerが共同開発した新型コロナウイルスワクチンを生産することで合意したと発表した。

Sanofi が BioNTech に対し、125百万回分のワクチンを生産するため設備と技術を供与する。まず、2021年夏からSanofiの独フランクフルトの工場で生産する。


SanofiはGSKと組んで新型コロナワクチンを開発しているが、問題が生じ、実用化は2021年末になる見込みである。世界中でワクチンが不足するなか、BioNTechに協力する。

SanofiとGSKは2020年4月14日、両社の技術を活かし、COVID-19に対するアジュバント添加ワクチンを開発すると発表した。

Sanofiでワクチンを担当するSanofi Pasteurは、遺伝子組換えDNA技術をベースとするS-タンパク質COVID-19抗原を提供する。
遺伝子組換えDNA技術により、ウイルスの表面に検出されたタンパク質と正確に一致する遺伝子配列を作成することができる。抗原をコード化するDNA配列を、Sanofiが米国で開発に成功し承認された遺伝子組換えインフルエンザワクチンの基盤となったバキュロウイルス発現プラットフォームに組み込む。

GSKは、実証済みのパンデミックアジュバント技術を提供する。

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing Route
Sanofi Pasteur/GSK Protein Subunit S Protein (baculovirus production)

2

0, 21 days IM


Sanofiの遺伝子組換え技術をベースとするCOVID-19ワクチン候補の開発は、米国保健福祉省(HSS)の一部門である米国生物医学先端研究開発局(BARDA)との協力の下で、同局の資金提供を受けて実施された。

SanofiとGSKのワクチンは、米政府の爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)の対象に選ばれている。2020年7月31日に米政府が21億ドルを支払い、5000万人分を確保した。

しかし、SanofiとGSKは2020年12月11日、試験計画を遅らせると発表した。

第1/2相臨床試験で、18~49歳の被検者においてはCOVID-19から回復した人に匹敵する免疫応答が示されたが、高齢者において十分な免疫応答が得られなかったことから、すべての年齢層において十分な免疫応答を得るために抗原の濃度を改善する必要性が示された。

2021年2月に改善された抗原を用いて第2b相臨床試験を実施する。開発計画が成功すれば、2021年第4四半期に実用化の見込みとしている。

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Bayerも2月1日、CureVacが開発中の新型コロナウイルスワクチン生産支援に向けた契約を締結し、2022年に1億6000万回分のワクチンを製造すると発表した。

CureVacは1月7日、開発中のワクチンについて、当局の承認獲得や配布で Bayerと提携すると発表した。
Bayerは、臨床、規制対応、医薬品の安全性対策、医療情報、サプライチェーン、特定の国での支援などの分野において専門知識と確立されたインフラを提供する。
EU域内と、域外の特定市場への販売はCureVacが担当し、Bayerはこれを支援する。一方、その他の市場については、Bayerが販売権取得のオプションを付与された。

この時点では生産協力については考えていなかったが、その後、生産面で協力できないか検討してきた。

Bayer はドイツ政府との協議のなかで、ワクチンの製造能力を増やすことが必要ということが明らかになったため、協力することとなった。同社自身はワクチンの生産の経験はないが、バイオ製品の開発で多くの治験を持つ。

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フランス政府が動いた。

フランスの誇りである医薬大手 Sanofi のワクチンが年末までかかると発表され、ワクチン接種の遅れで政府への批判が高まっている。

このため、Agnès Pannier-Runacher 産業担当大臣が奔走している。業界が知的財産の秘密を共有することに強い抵抗を示したが、それを押切り、幅広いワクチン生産を進めた。

Macron大統領は2月2日、フランスの4か所で間もなくワクチン生産を始めると約束した。

3月に欧州各地に生産設備を持つCDMO(Contract manufacturing organization)大手のスウェーデンのRecipharmがModernaのワクチンを製造

4月にはSanofi とCDMO大手のDelpharmがそれぞれ、BioNTech/Pfizerのワクチンを製造

5月にCDMOのFarevaがCureVacのワクチンを製造する。

別途、フランスはロシアのワクチン Suptnik V の採用も考えている。外相はSputnikが European Medicines Agency で承認を受ければ、なんの障害もないと述べた。

英国の医学誌 Lancet に掲載された論文ではロシアでのテストで約92%の効果があったとしている。

国立ガマレヤ研究所が中心となって実施し、1万9866人の被験者が参加した後期臨床試験で、21日の間隔で2回投与した場合の有効率は91.6%に上ったほか、60歳以上の被験者2144人に対する有効率も91.8%に達し、重篤な副作用などは見られなかった。被験者のうち4人が死亡したが、いずれもワクチン投与とは無関係であった。


日本も状況はフランスと同じだが、政府の動きは鈍い。




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