中国とイラン、25カ年協定調印 

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中東歴訪中の中国の王毅国務委員兼外相は 3月27日、訪問先のイランで25年間に及ぶ両国の包括的協力協定に署名した。

イラン外務省報道官は協定について「今後25年間の両国関係のロードマップ」と位置付け、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」へのイランの参加など、経済面を中心に多岐にわたる協力強化が含まれるとした。

王毅外相は「イランとの関係は足元の状況に左右されず、恒久的で戦略的なものだ」と述べた。

本件は、2016年にイランを訪問した中国の習近平国家主席が提案し、ロハニ大統領と合意した「全面戦略パートナーシップ共同声明」で動き出した。

その後、米国が2018年5月に核合意から離脱し、原油の禁輸を含む制裁を再発動した。

このため、各国はイランとの経済協力から手を引いたが、中国が支援に乗り出した。
中国はすでに、米による制裁で低迷するイラン経済を支えている。オマーン産などと偽りイラン原油を輸入しており、中国のイラン産原油の輸入量は今月、米政権が全面禁輸に踏み切って以降で最高となる日量90万~100万バレルに達する とされる。

今回の包括的協力協定の詳細な内容は明らかにしていないが、関係筋によると、2020年7月にNew York Times が報じた内容と大差ないという。

それによると、25年に及ぶ貿易・軍事などの包括的な内容で、中国が今後25年間で、 金融、通信(5G移動通信システムなど)、港湾、高速鉄道、ヘルスケア、ITなどで4000億ドル相当をイランに投資し、見返りとして格安で原油の供給を受けるとされる。さらに合同軍事訓練や武器の共同開発、情報共有なども含まれる。

4000億ドルのうち、2800億ドルをエネルギー部門、1200億ドルを輸送、通信、製造部門に投じるとの報道もある。

本件については、イラン内部でも外国との協力に否定的なイラン保守強硬派が反発し、アハマディネジャド前大統領は2020年6月下旬 に、協定を「疑わしい秘密取引」と一蹴し、「25年の秘密合意は認めない」と批判していた。

 

米欧の反発は必至である。

バイデン大統領は3月26日のジョンソン英首相との電話協議で、中国の「一帯一路」に対し「民主主義国家で同様のイニシアチブを作り上げ、世界中の民主主義陣営を支援する構想」について提案した。「民主主義国も同様の構想を持つべきで、支援を必要とする国を支えることを提案した」としている。

中国については、支援対象国を「借金漬け」にするとの批判が根強い。一部の国では港湾の運営にも関与し、将来、軍事的な目的に使われる恐れがある 。

バイデン大統領は米中の対立を「民主国家と専制国家の争い」と位置付けている。 構想の詳細には触れなかったが、中国に対抗し、質の高いインフラ投資を主導する狙いとみられる。

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