米、ガスパイプライン計画「Nord Stream 2」を容認

| コメント(0)

米ロ両政府は5月25日、首脳会談を6月16日にスイスのジュネーブで開くと発表した。バイデン米大統領はNord Stream 2 計画の完了を容認する立場を表明した。

バイデン大統領は、「私は初めからNord Stream 2に反対してきた」と述べつつ、一方で、同プロジェクトは自身が大統領に就任した際にはほぼ完成していたと指摘した。

その上で、「そのため、現在さらに制裁を科し続けることは、米国の欧州との関係の観点から非生産的となり得ると考えている」と発言した。

付記

米国とドイツは7月21日、Nord Stream 2 の建設計画をめぐる合意を発表した。米独両政府の共同声明では、ロシアが天然ガスなどのエネルギーを、敵対関係にあるウクライナなど他国を揺さぶる「武器」として使用した場合、ドイツが独自の制裁措置をとるほか、EUにも制裁を働きかけることを明記した。

米独は共同声明で、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合やウクライナ東部への軍事介入を念頭に「ロシアによる悪意のある行動の責任を追及する決意を共有している」と指摘し、「ウクライナの主権に対する米独の支持は揺るがない」と表明した。

ブリンケン米国務長官は5月19日、ロシアとドイツを結ぶガスパイプライン計画 Nordstream 2の事業会社Nord Stream2 AG と、その最高経営責任者(CEO)でプーチン大統領に近いMatthias Warnig 氏(ドイツ人)に対する制裁を "national interest" を理由に見送ったと明らかにした。

米国務省が議会に送った報告書は、同社とそのCEOが制裁対象となり得る活動に関与したと結論付けていた。

バイデン政権はトランプ前大統領の下で悪化した米独関係の修復を目指している。制裁免除に期限は設けられていない 。

一方、米国務省は、パイプライン敷設に携わるロシア船Akademik Cherskiyなど4隻と、ロシアのRussian Marine Rescue Serviceなど5団体に制裁を科した。

ーーー

米国では2019年12月20日、トランプ大統領の署名で「国防権限法」が成立した。

米国は、欧州のロシアへのエネルギー依存が深まることで「欧州の安全保障上の脅威」になると懸念しており、国防権限法で「Nord Stream 2」への制裁を決めた。敷設事業に関係する企業が制裁対象になると見られた 。

米国の決定を受け、敷設事業に参加するスイス拠点のAllseasは12月21日、作業の停止を発表した。

パイプラインの総延長約1200kmのうち、残りは約130kmとなっている。Allseas社の離脱で、事業を主導するガスプロムは関係企業に代行させる検討を始めた。

2020/1/10 トルコストリーム開通 


トランプ大統領はこの計画でドイツのMerkel 首相を批判していた。

トランプ大統領はNATOに関して、欧州諸国の防衛支出が低いことを盛んに批判したが(米国は欧州のために多額の防衛費用を出しているが、ドイツを初めほとんどの欧州メンバーが協定で決めたGDP比率を大きく下回るものしか出していない)、特にドイツのMerkel首相に対し、防衛支出が低いだけでなく、Nord Stream 2 建設でNATOの仮想敵であるロシアに多額の資金を供与していると批判した。

2021年1月20日に就任したバイデン大統領もNord Stream 2は欧州にとって悪い取引だと信じていると語り、トランプ政権で成立された法案に含まれるプロジェクトの制限を再検討するとした。

米国務省は、2021年1月19日、Nord Stream 2の建設に関与しているとして、ロシアのパイプライン敷設船 Fortunaと保有者のKVT-RUS社をSDNリスト(List of Specially Designated Nationals and Blocked Persons)に追加にすると発表した。

2019年12月にスイス企業のAllseas社が米国制裁の懸念から事業から撤退したことを受け、ロシアが代替のパイプライン敷設船として準備し、2020年12月にドイツの排他的経済水域内でのパイプライン敷設作業を行った。デンマーク領海でのパイプライン敷設開始を予定していた。

コメントする

月別 アーカイブ