血液中の微量がん細胞を検出できるデバイス

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熊本大学は5月21日、1mlの血液に含まれる微量ながん細胞を簡単に分離・補足できるマイクロフィルタデバイスを開発したと発表した。

がんに罹患した人の血液には、がんの原発巣から剥離したがん細胞がわずかに混入している。しかし、その量は血液1mL中に50億個ほど存在する赤血球や白血球などの血球細胞と比べて数個~10個程度と言われており、分離・捕捉(検出)するのは非常に困難で、がん細胞を検出するデバイスは開発されてきたが、高額な装置や試薬が必要であり、実用化する際のボトルネックになっていた。

今回、大型の装置を必要とせず、安価かつ簡便にがん細胞を分離・捕捉することを目的とし、独自のマイクロフィルタデバイスを開発した。

開発した機器は幅5マイクロメートルの細かな切り込みが入ったフィルターを備えており、がん細胞にくっつく「核酸アプタマー」と呼ぶ分子を表面に塗った。

血液を流すとフィルターが流体力によって動的かつ3次元的に変形し、切り込みの隙間が大きくなる。赤血球や白血球は通り抜けるが、 核酸アプタマーとくっついたがん細胞だけをこしとる。

がん細胞と核酸アプタマーとの選択的親和性を利用してがん細胞のみを捕捉する。


核酸アプタマーは特定の高次構造を形成することで、標的分子に対して抗体のように特異的かつ強固に結合する核酸のこと。

核酸アプタマーは一本鎖DNAまたはRNAから構成され 、分子内で相補配列に依存して熱力学的に安定な固有の立体構造を形成することで,標的分子に特異的に結合する 。


https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth/31/1/31_2020_JJTH_31_1_66-70/_pdf/-char/en



1ミリリットルの血液には、赤血球や白血球などの「血球細胞」が約50億個と大量にあることが分かっている が、 がん細胞の濃度を変えながら血液に混入させて機器で検出する実験をしたところ、がん細胞が5個だけでも見分けられる性能を確かめた。

血液検査のみの簡単な検査によるがんの早期発見や術後の管理、再発モニタリングなど、血液中のがん細胞を基にした新たながん診断技術実現への貢献が期待される。

がんの目印になる腫瘍マーカーを調べる検査で陰性と診断された患者(がんではないと診断)の血液からも、がん細胞を発見することができた。 がんを巡っては診断結果と異なる「偽陽性」や「偽陰性」の結果が出るケースも多いが、研究グループは腫瘍マーカーとの併用などによってがん診断の精度を向上できる可能性があるとみている。

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