英政府、英国の原発計画から中国広核集団の排除を検討

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英紙Financial Times は7月25日、英国内での全ての原子力発電所の新設計画について、中国国有企業の広核集団:広東核電集団 (China Guangdong Nuclear Power Holding Co.)関与を排除することを英政府が検討していると伝えた。

英政府は香港や新疆ウイグル自治区での人権問題などを巡り中国への批判を強めており、両国の関係悪化が英側の方針の背景にあると指摘している。

英国は昨年、高速通信規格「5G」のネットワークで、中国の通信機器大手、華為技術(Huawei)の排除を決めている。

2020/7/16 英国、次世代通信規格「5G」から Huawei 排除 

同紙によると、中国国有の中国広核集団が中心的な役割を果たすはずだった英南東部Essex州のBradwell B 原子力発電所で排除が検討されている。
また、同社の出資が決まっている同じ南東部Suffolk州の
Sizewell C 原発についても、事業者の再選定が行われる模様で、いずれの原発もフランス電力公社(EDF)が参画している。

このほか、広核集団はSomerset州に現在建設中のHinkley Point C 原発にも33.5%出資している。

現在、英国政府は広核集団と共同でこれら3原発の開発を行っているEDFとの間で、広核集団排除について話し合っているとされるが、他社がすべて撤退する中で、EDF単独での事業継続を引き受けるであろうか。

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英国では2009年時点で19基の原発が稼働していたが(その後、4基が廃止され、現在は15基)、英国政府は2009年11月に原発拡大策を発表した。
10か所に原発を新設し、2025年までに全電力の25%(当時は全電力の13%)を原発で賄う計画(後記)であった。

しかし、福島事故で原発の安全確保のためのコストが見直された結果、2012年以降、ドイツ、英国の企業が原発計画から撤退した。

英国政府はこのため、原発推進のため自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を原発に導入した。

これを受け、日本勢(日立、東芝)と、フランス電力(EDF)/中国広核集団連合が残ったが、日本勢はその後、採算面から撤退を決めた。

東芝:Sellafield 原発 2018/11/9 東芝、英原発事業を清算

日立:Horizon Project:Wylfa原発(計画段階)、Oldbury原発(構想段階)

          2020/9/18 日立製作所、英国原子力発電所建設プロジェクト事業運営から撤退

現在残っているのは、フランス電力(EDF) と広核集団の連合の3計画だけである。

フランスのEDF と英国政府は2013年10月、2つの原発の建設で合意、その後、1つが追加となった。

① Hinkley Pointに欧州加圧水型原子炉(EPR) 2基(総出力320万kW)のHinkley Point C 原発を建設する。
② 続いて、Sizewell に2基のEPRの建設を進める。
③これにBradwell原発が加わった。

運営体制としては、機器メーカーのAREVA、提携している中国の広核集団と核工業集団公司 (CNNC) に加え、他社の参加を交渉していたが、最終的にEDFと広核集団による事業となった

英国政府とEDFはこの時、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。

Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合    £92.50/MWh(約14.6円/kWh)

これは現在の卸価格の約2倍になる。

英国を訪問している中国の習近平国家主席は2015年10月21日、フランス電力公社(EDF)のHinkley Point Cの建設プロジェクトに広核集団が33.5%を出資することで正式に合意した。

中国はまた、EDFがイングランド東部のサフォーク州 Sizewell とエセックス州 Bradwellで予定する新規原発建設計画にも参画することで合意した。

Bradwell新原発は資本の66.5%を広核集団から受け入れるとともに、欧米で初めて中国製の原子炉を採用する。採用するのは「華龍1号」と呼ぶ新型原発で、フランスから技術供与を受けた中国国有大手の中国広核集団と中国核工業集団が中心となって開発した。主要部品の国産化率は85%を超えるという。

出資

EDF 広核集団
Hinkley Point C Somerset 66.5% 33.5% 欧州加圧水型原子炉(EPR)
Sizewell Suffolk 80% 20% 欧州加圧水型原子炉(EPR)
Bradwell Essex州 33.5% 66.5% 「華龍1号」

2013/12/27 英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入、東芝と中国企業が計画に参加

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英国の原発の現状と政府の計画

英国では2019年時点で19基の原発が稼働していた(その後4基を廃止)が、英国政府は2009年11月に原発拡大策を発表した。
10か所に原発を新設し、2025年までに全電力の25%を原発で賄う計画(当時は全電力の13%)。

新計画のうち、現在進行しているのはEDF/広核集団の3計画だけである。 広核集団排除で、EDFが単独で引き受けるだろうか。新規計画がゼロになる可能性もある。

稼働中 廃止 新設案 現状 今後
Berkeley  2基 
Bradwell  2基  EDF / 広核集団、「華龍1号」 広核集団排除?欧州原発?
Calder Hall  4基 
Chapelcross  4基 
Dounreay DFR 2基 
Dungeness  2基   2基 
Hartlepool  2基  構想段階
Heysham  4基  構想段階
Hinkley Point  2基   2基  EDF / 広核集団 広核集団排除?
Hunterston  2基   2基 
Oldbury

(2基)

→2基 日立(Horizon Project) 撤退
Sizewell  1基   2基  EDF / 広核集団 広核集団排除?
Torness  2基 
Trawsfynydo  2基 
Windscale  1基 
Winfrith SGHWR  1基 
Wylfa (2基)  →2基 日立(Horizon Project) 撤退
Braystones 構想段階
Sellafield 東芝 撤退
Kirksanton 構想段階
合計  15基   30基 

10原発

構想段階 4原発
撤退   3原発
今回問題 3原発

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