カリフォルニア州裁判所、ギグワーカー規制緩和のプロポジション22は「州憲法に違反」

| コメント(0)

カリフォルニア州Alameda County Superior Court のFrank Roesch判事は8月20日、プロポジション22を無効とするよう求める国際サービス従業員労働組合などが起こしていた裁判で、プロポジション22の州の立法府の将来の権限を制限する特定の条項が「州憲法に違反する」との判決を出した。

ただし、ネットワーク企業側は控訴するとしており、控訴が認められれば控訴中は判決は効力が生じないため、上級審で係争が続く間は各社の事業に影響しないとみられている。

ーーー

本件の発端は、カリフォルニア州が2020年1月に施行したギグワーカーらの権利を保護するCalifornia Assembly Bill 5 (AB5) で、州内の企業にギグワーカーらを原則、従業員として扱うよう求めた。

ギグワーカーらを業務委託先の個人事業主として分類するには一定の条件を満たす必要があると定めた。

gig とはライブハウスなどでギタリストやサックスの演奏者がゲストとして一度限りのセッションを行なうことで、ギグワーカーはネットを介して、運転や配達など単発の仕事を請け負う人。

カリフォルニア州で対象となるのは、下記の各社など:

Uber(フードデリバリー等)
Lyft(運転)
DoorDash(フードデリバリー)
Instacart (食料品の即日配達サービス)
Uber 子会社のPostmates(
調理された食事のローカルデリバリー)

これまで個人事業者として扱われていたが、2018年にDynamex Operations West, Inc. を被告とする裁判で、California Supreme Court は「独立事業者」の判断に3つの基準を設けた。

  1. 会社のコントロール、指示なしに自由にサービスを実施
  2. 会社の事業活動の範囲外の仕事をしている。
  3. 通常、同じ仕事を独立してやっている。

California Assembly Bill 5はこれを法律にしたもので、3つを充足しない場合は従業員とみなすとした。

ギグエコノミーの企業はドライバーや配達員を従業員として雇用し、ヘルスケアや疾病手当、労災保障などを含む通常の手当を支払うことになった。

州司法長官や州内の自治体は2020年5月、運転手を個人事業主に分類して社会保障費などの負担を免れるのはAB5に違反するとして、Uber とLyft を相手に訴訟を起こし、州の控訴裁判所での二審は2020年10月、両社に運転手を従業員として扱うよう命じる判決を下した。

これに、各社が猛反発、AB5が自社のビジネスモデルに壊滅的な影響を与えると主張し、一部の企業は抗議のために州外に出ると述べた。

2020年11月3日開票の住民投票に、ライドシェアや料理宅配などを例外扱いとし、独立した個人事業主と定める法案Proposition 22が提出された。

上記各社は合計2億ドル(約210億円)の活動費を投じて承認をめざし、最終的に有権者の58パーセントが承認し、成立した。

ライドシェア企業はドライバーを従業員ではなく独立した請負業者として扱い続けることができ、同州の労働法AB5の適用を免除される。

企業は、最低賃金の少なくとも120%の収入、業務中の1マイルあたり30セントの経費支払い、医療費、業務中の事故に対する労災保険、差別・セクハラからの保護、そして自動車事故および賠償責任保険を保証する。但し、そうした収入保証や経費支払いはドライバーが仕事に従事している間だけに適用され、乗車やデリバリーの合間は考慮されない。

今回、1月にProposition 22を無効とするよう求めて国際サービス従業員労働組合、3人の運転手、1人のRidehailの顧客が起こしていた裁判で同州Alameda County Superior Court のFrank Roesch判事は、州の立法府の将来の権限を制限する特定の条項が「州憲法に違反する」との判決を出した。

Proposition 22 のなかに、「修正には立法府の8分の7の賛成を要する」との条文があり、これが州憲法に違反するとし、条項の他の部分と分離できないため、全体が施行できないとした。

ギグワーカーの団体交渉の禁止を問題視し、分断された非組合員の労働者をもつネットワーク企業の経済的利益を保護するだけだと批判した。

ーーー

ウォルシュ米労働長官は4月29日、「ギグワーカー」について、米国では大半が「従業員」に分類されるべきだとの考えを示した。

ロイターのインタビューで「検討を行っているところだが、多くの場合、ギグワーカーは従業員に分類されるべきだ」と述べた。「丁寧な待遇を受けている場合もあるが、そうでないケースもあり、一貫性が必要だ」と指摘した。

また、ギグワーカーを雇用する企業が収益を上げていることに反対するわけではないとした上で、労働者にも成功が分配されるようにしたいと語った。

長官は、安定した賃金や病気休暇、医療保険など「米国の平均的な従業員がアクセスできる全て」の待遇にギグワーカーもアクセスできるよう、企業側と今後数カ月間に協議を行う方針を示した。

ーーー

英最高裁は2021年2月の判決の中で「運転手はUberに従属し、依存している」などと指摘し、運転手は個人事業主だとするUberの主張を退ける判断を示した。

これを受け、Uberは3月16日、英国内で同社のライドシェアサービスを担う約7万人の運転手を英国の雇用法に基づく「Woker」として扱うと発表した。運転手らには最低賃金を保障するほか、休暇手当や年金への加入機会も提供する。

「Worker」の区分は英国の雇用法に固有のもので、雇用主の指示に従って働く「Employee」とは異なる。税務上は自営業者として扱われ、運転手らは好きな時間に自由に働く柔軟性を維持することができる。

コメントする

月別 アーカイブ