米下院、3.5兆ドルの予算決議案を可決

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米下院は8月24日、3兆5000億ドルの予算決議案を可決した。

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バイデン大統領は3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドルを投入する新たな計画 American Jobs Plan を発表した。

2021/4/2 バイデン大統領、American Jobs Plan 発表、8年間で2兆2500億ドル投資

この計画は最終的に2つに分けられた。

米上院は8月10日、5500億ドル規模のインフラ包括法案を賛成69、反対30で可決した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 19 48 2 69
反対 30 30
棄権 1 1
合計 50 48 2 100

政府と民主党は、これから除外された教育や子育て支援、気候変動対応などの10年間で3.5兆ドルの予算を予算決議案の形で提案した。

予算の内容と、財源として増税を含んでいることから共和党の賛成は見込めず、過半数の賛成で通せる予算決議案の形をとった。

上院は8月10日、3兆5000億ドル規模の予算決議を50対49の賛成多数(民主党のみの賛成)で可決した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 0 48 2 50
反対 49     49
棄権 1     1

2021/8/11 米上院、5500億ドル規模のインフラ包括法案を可決、下院採決時期は不透明 


これを受け、下院は夏期休会中であったが、開会した。

政権と民主党のペロシ下院議長は3兆5000億ドル規模の予算決議を先に通すことを決めた。

予算決議案は上院で可決されたが、この後、各委員会がこれに基づき財政調整法案を策定し、予算委員会でまとめられ、一つの包括的な法案として議会で審議され、両院で可決することが必要である。

インフラ包括法案を棚上げし、上院での3兆5000億ドル規模の予算成立の担保にしようというもの。

しかし、民主党内の進歩派の9人(その後1人が加わる)が自らが優先課題として掲げる項目を多く盛り込んだインフラ包括法案をさきに可決することを求めた。双方の折り合いがつかず、24日未明に採決を見送った。

その後、ペロシ議長が、超党派のインフラ投資法案を9月27日までに採決すると約束し、下院はインフラ法案などの審議を進める手続き上の採決と一体にして予算決議をようやく可決した。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 220 220
反対 212 212
棄権
合計 212 220 432 3

予算決議では、決議に基づき具体的な税制・支出法案を策定する委員会の期限を9月15日に設定している。非常に厳しい日程である。

その後、財政調整法案は上下両院で採決が行われる。財政調整措置では、共和党のフィリバスター(議事妨害)はないため、民主党は上院での賛成多数(50対50だが、同数の場合は上院議長である副大統領が投票する)で可決することが想定されている。

但し、民主党内にも増税や 財政膨張を懸念する議員は多い。上院では民主党議員全員の賛成が必要だが、インフラ投資法案を9月27日までに採決してしまうと、増税などへの慎重論を抑える手立てはなくなる。このため、内容の修正を迫られる可能性もある。

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下院は同日、共和党優位の州における投票権制限に向けた動きに対抗するために民主党議員が提案した法案を賛成多数で可決した。ただ、上院では10人の賛成が必要だが、現在支持を表明している共和党議員は1人だけであり、可決する見込みは薄い。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 219 219
反対 212 212
棄権 1 1
合計 212 220 432 3

法案は1965年に制定された人種差別を禁じる「投票権法」の主要な保護規定の効力を復活させる内容。

投票権法では、各州などの投票に関する規則変更を阻止する権限が盛り込まれていたが、2013年の最高裁判断で無効とされた。この権限を司法省に改めて与えるのが法案の柱である。

投票権法の第4条では、「投票に関する法律を変更する際に、連邦政府または連邦裁判所の承認を得なければならない」としていた。差別が顕著だった9州や郡などを指定して、選挙の実施方法の決定などの管轄権を連邦政府に移管、選挙に関する手続きを変える際は事前に連邦政府の許可を得ることを義務づけ、差別の復活を阻止していた。

米連邦最高裁判所は2013年6月25日、この投票権法第4条を無効とした。

差別が顕著だった9州や郡などを指定して いるが、同条項は当初5年の期限だった。しかし、連邦議会が繰り返し延長、投票権法が成立した1965年から50年近くが経過した現在、南部の「状況は劇的に変わった」と述べ 、無効とした。

状況が大きく変わっているのに、50年前に問題であった特定地域の扱いを継続するのは問題であるとするもの。

なお、連邦最高裁は2021年7月1日、アリゾナ州で指定投票所以外での投票や第三者による票の回収を規制する州法について、選挙に関する人種差別を禁止した投票権法には違反せず、合法と判断した。

今回の法案は投票に関する規則変更を阻止する権限を司法省に改めて与えるのが柱。

今年に入り少なくとも18州が投票権を制限する州法を制定した。 期日前投票の期間を制限し、郵便投票で提出が必要な本人確認書類を増やし、各党による投票所監視要員の権限を強化するなどで、不正対策に必要との議論がある一方で、民主党側は人種的少数派が投票するのを困難にする狙いで成立させていると批判してきた。

共和党上院トップのマコネル院内総務は、投票に関するルールは州レベルの決定に委ねるべきだと述べている。

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