GM、電気自動車Bolt を全量リコール

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General Motors は8月20日、火災が相次いだ電気自動車「Chevrolet Bolt EV」について、バッテリーの製造上の欠陥による火災の危険性を理由に、事実上全面リコールを決定した。

GMはBolt EVで火災が数回発生したことを受け、昨年11月、バッテリーの最大充電量を90%に制限するソフトウェアアップデートを行った。

しかし、アップデート後も火災が発生したため、バッテリーモジュールを交換することにし 、本年7月23日にリコールを届け出、2017-19年の生産分(約6万9千台 、うち米国で5万1千台)についてバッテリーモジュールの部品を交換するリコールを実施してきた。

最近のGMによる調査では、2019年以降の生産分でも製造上の欠陥が見つかった。陽極タブの破れやセパレーターが曲がる可能性があると述べた。充電中に発火につながる危険性がある。

今回、リコール対象を直近の生産分まで拡大し、2019年以降に生産され、販売されたBolt EVと派生モデルのBolt EUV 7万3千台に対する追加リコールを発表した。これでGMが生産したすべてのBolt EV がリコールの対象になる。

2019年モデルの残り 9,335台(うち米加 8,201台)
2020-2022モデル 63,683台(うち米加 61,422台)

新たにリコール対象となった車両には充電率を90%に制限するアップデートを行い、その後の精密診断を通じ、欠陥が発生したバッテリーモジュールを交換する。交換するバッテリーモジュールには8年間/10万マイル(16万km)の保証をつける。

GMは「Bolt EVの所有者は、火災リスクと被害を防ぐため、リコール前までは最大充電量を90%に制限し、 従来より頻繁に充電し(残り運転距離を70マイル以下にはしない)、充電後、直ちに屋外に駐車すること」と伝えた。

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Bolt EVはLG Energy Solutionが生産したバッテリーセルをLG電子がモジュール化したバッテリーを搭載している。

LG Energy Solutionは、忠清北道清州市の梧倉工場と米ミシガン州Holland工場 (LG子会社Compact Power)でバッテリーセルを生産し 、複数のバッテリーセルをまとめてモジュール化し、GMに納入して いる。

LG Chemは2020年12月1日に電池部門を分社化し、LG Energy Solutionを設立した。

2020/9/19 LG Chem、電池部門を分社化

本年10月にIPOを予定していたが、最近、上場予備審査終了期限が延期された。本件が影響している可能性がある。

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GMとLG Chemは2020年5月に折半出資でUltium Cells LLCを設立、オハイオ州Lordstown の近辺に23億ドルを投資してEV用バッテリー工場を建設している。

Ultium Cells LLCは2021年4月16日、テネシー州 Spring Hillに約23億ドルを投資し、新型電池Ultiumバッテリーの工場を建設すると発表した。Lordstown 工場に次ぐ米国で2カ所目のEVバッテリー生産工場となる。

2020/1/3 GMとLG Chem、世界最大級のEV用電池工場建設計画を発表 付記

ロイター通信は、GMがLGからリコール費用の賠償に関する約束を取り付ける方針だと報じた。

GMが今年7月にバッテリーモジュールの交換を決めた際には、リコール費用を8億ドルと想定し、LG電子が約2億ドル、LG Energy Solutionが0.8億ドルのリコール引当金を4-6月期の業績に反映させた。
今回、GMはリコールに10億ドルを投じる。合計18億ドルになる。

LGは「顧客企業と共にリコール措置が円滑に取られるよう積極的に協力していく。原因調査の結果が出れば、費用負担率と引当金の額が決まる」と説明した。

EV業界関係者は「現在は完成車メーカーがバッテリーメーカーの責任を追及した場合、たとえ不服でも賠償責任を逃れるのは難しい。バッテリーの完成度を高めることがカギになる」と語った。

付記 

LG Energy Solution は10月12日、リコール費用の負担額でGMと合意したと発表した。

リコール費用は全体で2兆ウォン程度と見られるが、LG側が1兆4千億ウォン(約1300億円)を支払う。

今回のリコールは、LG Energy Solution製のバッテリーを搭載したフォルクスワーゲンAG ID.3 EV で火災が発生して1週間後から始まった。

事故は8月14日にオランダのフローニンゲンで発生した。充電を終えた状態で運転手は後輪の方から出ている煙を確認した。運転手と子どもはすぐに車から出て人命被害はなかったが、車両は全焼した。

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現代自動車とLG化学は3月4日、火災が相次いだ電気自動車(EV)のリコール費用の負担比率を巡って最終合意した。世界で計8万1700台のリコール費用約1000億円のうち、電池を供給したLG化学が約7割、車両メーカーの現代自が約3割を負担する。

対象車種は現代自が韓国や米国、欧州で販売したEV「Kona Electric」と「IONIQ」など。電池システムをすべて交換する。

LG Energy Solutionは当初、同社が提案した急速充電のロジックが現代のバッテリー管理システムで誤って利用されたと主張し、バッテリーセルを出火リスクの直接的な原因とみなすべきではないと表明した。しかし、係争が長引けばブランドイメージの低下につながると判断し、早期の幕引きを図った。

現代自は「顧客の不便と市場混乱を最小化すべきだとの意見でLG化学と一致した」とコメント。LG化学側も「消費者安全を最優先とし、リコールに積極的に協力する」と語った。

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