ファーウェイ幹部裁判、カナダで最終審理、中国は逮捕したカナダ人に相次ぎ有罪判決

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中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)の米国への身柄引き渡しをめぐる裁判が8月4日、カナダで最終審理に入った。

イランとの違法な金融取引をめぐり銀行に虚偽の説明をした罪などで米国は2019年に孟氏を起訴し、カナダに身柄引き渡しを要請している。

付記

バンクーバーの裁判所で行われてきた審理が、逮捕から2年半以上たった8月18日、全て終了した。

裁判所の判断は、2021年10月以降に出される予定だが、仮に引き渡しが認められても、孟被告側は控訴するとみられ、長期化する可能性もある。

中国政府は、孟被告が2018年12月に逮捕されたわずか9日後、カナダ人2人を拘束した。
元外交官で独立系シンクタンク「国際危機グループ」に勤めていたMichael Kovrig と、中国を拠点とする実業家で北朝鮮旅行の手配をしていたMichael Spavor で、2019年5月に正式に逮捕された。

2020/1/22 カナダ、Huawei 孟晩舟・副会長の審理開始 

中国北部・丹東市の裁判所は2021年8月11日、Michael Spavor 被告に対し、スパイ罪と国家機密を違法に外国に提供した罪により、懲役11年の刑と、5万元(約85万円)相当の所有物の没収、強制送還を言い渡した。強制送還がいつ実施されるのかは不明。

Michael Kovrig 被告もスパイ罪に問われ3月に裁判が始まったが、まだ判決に至っていない。


これとは別に、遼寧省の高級人民法院(高裁)は8月10日、麻薬密輸罪に問われ、差し戻し審で死刑を言い渡されたカナダ人 Robert Lloyd Schellenberg 被告の上訴を棄却した。

2014年に拘束され、中国からオーストラリアに覚醒剤約230キロを密輸しようとしたとして起訴された。

裁判で2018年11月に懲役15年の刑が言い渡された。その数日後の2018年12月1日 にカナダ司法省がHuaweiの孟晩舟をバンクーバーで逮捕した。

中国はカナダに対し、孟氏を解放しなければ何らかの結果が生じると警告した。

高裁は一審の刑が軽過ぎると判断、差し戻し審は2019年1月、死刑を言い渡した。

今回、高裁は上訴を棄却し、死刑の判断を維持した。

中国は二審制だが、死刑の場合、最高人民法院(最高裁)の審査を経た後に確定する。

カナダはこれまで、中国が「人質外交」を展開していると非難してきた。中国政府は、孟晩舟の事件と中国の裁判に関連性はないとしている。

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カナダ司法省は2018年12月1日、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei Technologies )の創業者 任正非(Ren Zhengfei)の娘である孟晩舟(Meng Wanzhou)副会長 兼 最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕した。

米司法省は、イランへの輸出に対する米国の制裁にもかかわらず、華為技術が同国に製品を販売したかどうかについて捜査を始めていた。 2018年8月22日に孟氏の逮捕状を取り、11月29日に孟氏がバンクーバーに立ち寄ることを把握し、犯罪人引渡協定に基づき、カナダに逮捕と身柄引き渡しを求めていた。

カナダの裁判所は2018年12月11日、同氏の保釈を認める決定を下した。 条件として1000万カナダドル(約8億5千万円)の保釈金を支払ったり追跡装置を身につけたりする。夜間の外出は禁じられ、パスポートは押収される。

2018/12/10 華為技術(Huawei Technologies )の副会長の逮捕

米司法省は2019年1月28日、Huawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した。米国は孟副会長の引き渡しを正式に要請し、カナダ司法省は受理した。

司法省の起訴はは2つの案件で行われた。

 1) イランとの取引関係

被告 銀行詐欺 通信詐欺 IEEPA違反 資金洗浄 司法妨害
Huawei Technology
Huawei Devices USA
Skycom Tech
孟晩舟 Huawei副会長

 2) 米企業 T-Mobile からの技術窃取

被告 企業秘密窃盗 通信詐欺 司法妨害
Huawei Device
Huawei Devices USA


2019/2/1 米司法省、Huawei を起訴 

孟被告は2019年3月1日、ブリティッシュ・コロンビア上級裁判所に提出した訴状で、カナダ政府と王立カナダ騎馬警察(RCMP)、カナダ入国管理局(CBSA)による公民権侵害を訴えた。

カナダ政府は3月1日、米国への身柄引き渡しに関する審理を認めると明らかにした。

一般に、引渡し請求の対象となる行為は双方の国において重大犯罪とされていなければならないという「双方可罰性の原則」がある。また、基本的に他国からの引き渡し請求に応じる義務はない。

カナダの法律では同国の法律で違法とみなされない限り、身柄を他国に引き渡すことを禁じている。

カナダの前駐中国大使はイラン制裁違反に関して「カナダはイラン制裁措置に署名していない」としており、犯罪人引渡条約の対象にならない可能性がある。しかし、カナダ当局は、カナダでも詐欺罪に該当すると主張している。

ブリティッシュコロンビア州の上位裁判所は2020年5月27日、双罰性要件は満たしているとして被告の主張を退ける判決を下した。

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今回、8月4日の審理では、孟氏側は
①トランプ前大統領が司法に干渉した
②逮捕手続きで人権侵害があった
③米国がカナダの裁判所に起訴内容について「信頼性が低く、誤解を招く」説明をした――
といった不法行為があったと主張した。

「米国は誤った説明で印象操作し、カナダの訴訟手続きの公平性を損なった」と指摘、「孟氏の無実に自信がある」として帰国の実現を求めた。

最終審理は20日まで行われる予定だが、最終審理を経た判決が出るのは秋になるとされる。
仮に引き渡しが決まっても、控訴すれば、引き渡しには数年かかる可能性もある。

裁判終了後、最終的に国益などを考慮して身柄の引き渡しを決めるのはカナダの法相となる。カナダ司法省は最終審理に先立ち「裁判所の判断が下されるまでいかなる決定もしない」との声明を発表した。

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