バイデン米政権、中絶禁止法でテキサス州を提訴 

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バイデン米政権は9月9日、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を原則禁止するテキサス州法に異議を唱え、テキサス州西部地区連邦地方裁判所に同州を提訴した。


米連邦最高裁は9月1日、妊娠6週
目以降の中絶を禁じたテキサス州の法律に対する差し止め請求を退けた。同法は同日施行され、大半の中絶が禁止される見込み。

判決は5対4で保守派のロバーツ最高裁長官とリベラル派3人が反対に回った。

最高裁は法律の合憲性に基づいた決定ではないとして、異議申し立てを進めることが可能とした。

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テキサス州のAbbott知事は5月19日、胎児の心拍確認後の人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁止する法律に署名した。 発効すれば国内でも最も厳しい水準の制限となる。

レイプや近親相姦による妊娠の場合も例外を認めない。 事実上の全面禁止である。

中絶の手術を行った人に加え、手術費や処方薬の支払いを援助したり、女性をクリニックまで乗せたタクシーの運転手さえも、たとえわずかでも中絶に関わった人は訴えられる可能性がある 。

州内外の民間人は誰でも違反者を訴えることができる。(民事訴訟の私訴を許可)
告発した人が勝訴した場合は1万ドルが与えられ、裁判費用もカバーされる。

米連邦最高裁判所は 、人工妊娠中絶を不当に規制する州法を違憲とする1973年のRoe v. Wade判決で、胎児が子宮外で生育可能になる時点まで、女性が中絶を選ぶ権利を認める判決を下した。一般に妊娠24週ごろまでと解釈されてきた。

今回のテキサス州法では胎児の心拍が確認できる妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を禁止する。(「ハートビート(心臓音)法」とも呼ばれる)

妊娠は「最後の生理が始まった初日」を0週のはじめと数えるが、6週目ごろでは妊娠に気づいていない女性も多い。 妊娠に気が付いた時点では、中絶は出来ないことになる。


宗教上の信念などを理由に人工中絶に反対する保守派は、人工中絶を制限する法律を州レベルで成立させ、合憲・違憲の判断を最高裁に持ち込むことで、1973年の最高裁判決 (Roe v. Wade判決)を覆す機会を得ることを目指している。

米国では、共和党が主導する州のうち少なくとも10州で、胎児の心拍が検出されて以降 (妊娠6週ごろ以降)の人工妊娠中絶を禁止する法案が可決されている。 しかし、これらはすべて、妊娠22~24週ごろまでは中絶を容認するとした米連邦最高裁の判断に反するとして、裁判所で施行を差し止めている。

連邦最高裁判所は2020年6月29日、人工妊娠中絶を規制する南部ルイジアナ州法は女性に不当な負担を強いるものだとして、違憲とする判断を下した。

ルイジアナ州法では中絶手術を行う医師に対し、施設から48キロ圏内にあるほかの病院と、手術で問題が生じた場合に患者を受け入れてもらう入院特権を保持することを義務付けている。しかし、この法が州内で中絶手術を提供する施設の数を制限し、女性の中絶を受ける権利を侵害しているとの批判が上がっていた。

判決は賛成5、反対4で、保守派のジョン・ロバーツ最高裁長官が4人のリベラル派判事を支持し、違憲とした。

連邦最高裁判所は本年5月17日、人工妊娠中絶を制限する南部ミシシッピ州の法律の合憲性について審理すると発表した。


ミシシッピ州では2018年、妊娠から15週間を過ぎた場合に中絶を原則禁じる州法が成立した。中絶可能な期間を短くすることを狙ったが、連邦地裁や控訴裁はミシシッピ州法をめぐり1973年の最高裁判決を踏まえて違憲と判断した。

連邦最高裁は今年秋に審理を始め、2022年6月までに判決を下す。

2020年6月時点では保守派5、リベラル派4で、保守派の長官がリベラル派の側に立ち、ルイジアナ州法を違憲としたが、その後にリベラル派のGinsburg判事の死去に伴い、保守派Amy Barrett 判事が就任、保守派6、リベラル派3となった。保守派が1名反対しても形勢は変わらない。
Amy Barrett
判事は中絶制限を強く支持してきたことで知られる。

今秋に連邦最高裁が審議するミシシッピ州法は、妊娠15週以降の中絶禁止で、Roe v. Wade判決 の24週以降の禁止を早めるものである。(それまでの間の中絶は認める)

今回のテキサス州法は妊娠に気が付く前の妊娠6週以降の中絶禁止で、事実上、中絶の禁止である。

テキサス州法は今後、連邦地裁、高裁を経て、連邦最高裁で審議されると思われるが、ミシシッピ州法で連邦最高裁がどのような理由でどういう判断をするかで、テキサス州法についての判断が推定できることになる。

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