Shell、米国のPermian シェール資産をConocoPhillips に売却 

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Shell は9月20日、テキサス州とニューメキシコ州にまたがるシェールの最大鉱区、Permianシェール事業をConocoPhillipsに現金95億ドルで売却する契約を締結したと発表した。


ShellのPermian事業は、約225千エーカーで、現在の生産能力は原油換算で日量175千バレル。このほか、600マイル以上の原油・ガス・水のパイプライン、インフラを含む。
(ConocoPhillipsでは2022年の生産量を原油換算で日量200千バレルと期待している。現在は約半分が稼働している。)

2020歴年の税引前損失491百万ドルであった。

2020年はコロナ禍で原油価格が下落し、多くの企業が苦しんだ。2021年に入り、原油価格は上昇している。  

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Shellは売却により、24~26億ドルの税引後利益を計上する見込み。

売却による現金収入95億ドルのうち、70億ドルは株主への追加配当に使い、残りはバランスシート強化に使う。事業からのCash flow の20~30%を配当しているが、それに追加するものである。

Shellでは、これまで100年以上に亘り米国でエネルギーを供給しているが、Permian事業売却後も何十年にも亘り米国でのエネルギーリーダーであり続けるとしている。

Permian事業では2017年以降、インフラや技術への投資により、温室効果ガスやメタン濃度を80%減らしたとしている。

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Shellは2月11日に温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする中長期戦略を発表した。これまでの計画から踏み込み、販売する製品の消費で生じる分も含めた。

エネルギー1単位あたりのCO2の純排出量を2016年比で、2023年に6~8%、2030年に20%、2035年に45%それぞれ減らす中間目標も立てた。

同社は2020年4月にも2050年までに実質ゼロを打ち出したが、これは自社の操業や電力消費などで生じる排出量 (スコープ1 & 2)が対象で、他については達成は顧客動向次第としていた。

今回の目標は、販売したエネルギーが使われることで生じる分など (スコープ3)も含む。石油への依存度を徐々に下げ、天然ガスや、再生可能エネルギーによる電力などの販売を増やすとともに、CO2の回収・貯留(CCS)、CO2を吸収する森林育成・保全への投資も進める。排出量全体の約9割を占める供給網にも広げて脱炭素に取り組む。

Shellに対しては、環境保護団体グリーンピースや「地球の友」など7団体が2019年にオランダの1万7千人の市民を代表して温暖化ガス削減を求めて訴訟を起こしていたが、ハーグの裁判所は2021年5月26日、Shellの温暖化ガス削減目標は十分でないとし、2030年までに2019年比で45%削減するよう命じる判決を言い渡した。

裁判所は、まず、成文化されていない社会通念上の規範に違反して振る舞うことは不法行為であるとした。
そして、
・Shellの CO2 排出量が大きいこと、
・危険な気候変動の影響からの保護も人権の中に含まれ、
企業は人権を尊重しなくてはならないという国際的コンセンサスが形成されている こと、
・Shell自身 CO2 排出がもたらす危険な結果と、気候変動の危険なリスクを長年にわたり認識していたこと等を理由に、
Shellには
CO2を削減する義務があるとした。

そのうえで、同社の戦略は「明確ではなく、さまざまな条件が付けられている。これは十分でない」とし、削減義務と相容れず、削減義務 に違反(不法行為)があったと判示した。

判決詳細は
https://www.burenlegal.com/sites/default/files/usercontent/content-files/Oranda%20Hanrei%20Sokuho%28JulyAugust%202021%29_0.pdf 

これに対しShellは、判決内容には不服とし、控訴するとしながらも、二酸化炭素排出量削減を加速させると宣言した。

Shellは7月20日、判決を不服として控訴すると発表した。脱炭素に取り組む重要性には同意する一方で、一企業への削減命令では気候変動問題に効果はなく受け入れられないと強調した。
同社は最終的な結審まで2~3年かかるとみている。

Shellは今回、こうした司法判断も考慮し、さらに踏み込んだ事業転換が必要だと判断した模様。

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ConocoPhillips側は、この買収により、6月30日に発表した10か年計画を大幅に上乗せすることになるとしている。


同社は2020年10月に同じくPermian
を地盤とするシェール大手の米Concho Resourcesを総額97億ドルで買収すると発表した。同業のM&A(合併・買収)や資産取得を加速している。

Conchoの1株につきConoco株1.46株が支払われる。買収額は 最初に報道された日の前日のConcho株終値を15%上回る水準。

Concho Resourcesの生産量は日量319千バレル。(今回、Shellからの買収で200千バレルが加わる。)

買収で企業価値600億ドルの企業が誕生する。合わせた資源量は石油換算で230億バレルに達する。

パーミアン盆地での原油生産量は、Pioneer Natural ResourcesやChevronに匹敵する生産者の1つとなる。

2020/2 のConocoPhillipsの米加でのシェール事業は下記の通り(Concho、Shell 資産買収で、これに500千バレルが加わる。)


 

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