第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)

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英政府は10月20日、同国のグラスゴーで開催する第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の日程を発表し、11月1、2の両日に各国首脳らが参加する「World Leaders Summit」を開くと明らかにした。英政府によると、バイデン米大統領やマクロン仏大統領、ドラギ伊首相ら120人以上の各国の指導者が参加する。 経済界の首脳らも出席する。

バイデン米大統領は十数人もの閣僚や高官を引き連れて参加する。

岸田首相は当初、衆院総選挙のためオンライン参加を検討していたが、議長国の英国からリモートでの参加を断られ、出席する方向に切り替えた。

ロシアのプーチン大統領は出席を見送る。  

産業革命前に比べた気温上昇を2度未満に抑え、1.5度以内を努力目標とするパリ協定の実現に向けた具体策などを議論する。

議長国である英国は石炭火力発電の早期廃止を主要議題にする意向で、英国として2024年までの廃止を決めるとともに、先進国には2030年まで、途上国には2040年までの廃止を求めている。

各国のスタンスは次の通り。

フランス:2022年までに廃止、カナダ:2030年までに廃止、米国:2035年までに電力部門の脱炭素化

中国の習近平主席は9月21日に、国連総会一般討論でビデオ演説を行い、国外では石炭火力事業を新たに行わない方針を表明した。

付記
中国政府は10月28日、COP26に向けCO2排出削減の国別目標を正式に提出したが、「2030年までに排出量を減少に転じさせ、60年までに実質ゼロにする 」との習近平指導部の公約が盛り込まれ、時期の前倒しはなかった。

岸田首相は10月13日、Boris Johnson英国首相と電話会談を行ったが、英国側発表ではJohnson首相は次の通り述べた。

(温室効果ガスの)Net Zero と石炭への国際融資の終止への日本の強いコミットメントを歓迎する。
COP26 Summit に先立ち、日本が、再生エネルギー・クリーンエネルギーへのグローバルな移行をサポートし、国内での石炭火力の使用終止を新たに約束することを希望する。

Johnson首相は議長国として石炭火力の早期廃止を強く主張しており、先進国のなかで最も遅れている日本に協調を求め、岸田首相との初の電話で、特にこれを取り上げた。

日本は10月22日に新たなエネルギー基本計画を閣議決定したが、2030年度の石炭火力はなお「約19%程度」となっており、先進各国と大きな差がある。2030年はもとより、途上国に求められる2040年までの廃止も考え難い。

会議の席上で批判の矢面になる恐れがある。


なお、日英首脳の電話会議の発表が異なっており、英国側は石炭火力の件を第一に挙げているが、日本側は全く触れていない。最後に「COP26に向けた気候変動対策 」での連携に触れている。
安保協力については双方が触れているが、EPAやTPP11などの貿易問題、アジアの地域情勢については英国側は全く触れていない。

英国側発表 外務省発表
The Prime Minister spoke to Japanese Prime Minister Fumio Kishida this morning.

He congratulated Prime Minister Kishida on his appointment and reiterated the importance the UK places on our strategic partnership and friendship with Japan.

冒頭、岸田総理大臣から、内閣総理大臣就任に当たり、外務大臣時代に関係を深めたジョンソン首相と協力していくことを楽しみにしており、グローバルな戦略的パートナーである日英関係を一層強固なものにしていきたいと述べました。これに対し、ジョンソン首相は、岸田総理大臣の就任に祝意を表するとともに、日英関係を一層深化させていきたいと述べました。
The Prime Minister welcomed Japan's strong commitment to Net Zero and to ending international financing for coal. He hoped to see a new pledge from Japan ahead of the COP26 Summit on ending the use of domestic coal power, supporting the global transition to renewable and clean energy.
They also discussed deepening coordination between the UK and Japan on security, defence and trade.
The Prime Minister noted the visit of the Carrier Strike Group to Japan and the emphasis on the Indo-Pacific region in the UK's renewed foreign policy approach, as set out in the Integrated Review.
両首脳は、日英安保・防衛協力が近年飛躍的に深化し、空母「クイーン・エリザベス」の日本寄港により新たな段階に入ったことを歓迎し、日英円滑化協定の早期交渉妥結に向けて共に取り組んでいくことを確認しました。また、両首脳は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、引き続き緊密に連携していくことで一致しました。
両首脳は、日英EPAの着実な履行を通じ、両国の貿易・投資の更なる促進に繋げていくことを確認するとともに、英国のTPP11加入交渉について意見交換を行いました。また、ジョンソン首相から、福島県産品を含む日本産食品に対する輸入規制の解除について前向きに検討を進めていく旨発言があり、岸田総理大臣から、これを歓迎するとともに、科学的見地から規制が一日も早く解除されるよう期待する旨述べました。
両首脳は、中国や北朝鮮等の地域情勢についても意見交換を行いました。その中で、両首脳は、拉致問題を含む北朝鮮への対応を含め、引き続き連携していくことを確認しました。
He looked forward to continuing to work together and hoped to welcome Prime Minister Kishida to Glasgow for COP26 in November. 両首脳は、COP26に向けた気候変動対策や新型コロナ対応など、国際場裡での連携も一層強化していくことで一致しました。

付記   

英国グラスゴーで開催されているCOP26で11月4日、190の国・企業が賛同する、石炭火力発電(排出削減対策が講じられていない発電設備が対象)を段階的に廃止し、新しい石炭火力発電への支援を終了する共同声明(Global Coal to Clean Power Transition Statement)が発表された。

公表時点では、46カ国を含む77の国と組織が声明に署名を済ませた。この中には、世界の石炭火力発電の使用量上位20カ国のうち、韓国(5位)、インドネシア(7位)、ベトナム(9位)、ポーランド(13位)、ウクライナ(19位)の5カ国も含まれている。日本に対する包囲網は一段と狭まった。

日本や米国、中国、豪州、インドなどは声明に加わっていない。

声明では以下の4点にコミットし、他国にも同様の行動を促すとした。

  • クリーン発電の導入を急速に拡大する。
  • 主要国では2030年代(またはその後できるだけ早く)、その他の国では2040年代(またはその後できるだけ早く)に、石炭火力発電を段階的に廃止する。
  • 国内外の新規石炭火力発電への投資を全て終了する。
  • 労働者や地域社会に利益をもたらすかたちで、石炭火力発電からの公正な移行を行う。

また、主要な国際銀行は2021年末までに、新たな石炭火力発電への国際的な公的融資を事実上、全て終了させることにコミットした。

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)さんは、COP26について「明白な失敗だ」と酷評し、各国が表明した取り組みを「みせかけ」と批判した。
"This is no longer a climate conference. This is now a global greenwashing festival."

米国の映画業界で白人以外の役柄に白人俳優が配役されることを whitewashing と呼ぶ。実際はGreenでないのをGreen と見せかけているだけのgreenwashing であるとした。

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