半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設

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半導体受託生産会社(foundry)世界最大手のTSMC:台湾積体電路製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)は10月14日、日本に新工場を建設すると発表した。

1990年代以降、ゲート長が250nm、180nm、130nm、90nm... と短くなるにつれ、装置のコストだけでなく、クリーンルームの清浄度の向上も必要となり、クリーンルームの建設・維持・管理には莫大なコストが必要となってきている。

このため、各社がそれぞれ一貫生産をすることが難しくなり、設計と製造が分業され、半導体の設計は行うが生産ラインを持たないfablessと、半導体チップ製造専門のfoundryに分かれた。

半導体受託生産会社(foundry)として、TSMCは世界のシェア50%と圧倒的である。他に、韓国のSamsung電子が18%、台湾のUMC(聯電)が8%で続く。

なお、回路幅が10nm未満の先端半導体では、世界シェアの9割超を握る。

同社は 2022年に工場を建設を始め、2024年から量産する計画で、魏哲家CEOは「当社の顧客および日本政府の双方から、このプロジェクトを支援するという強いコミットメントを得た」と話した。

総投資額は1兆円程度になるとされ、日本政府は先端半導体工場を国内に誘致する意向を表明しており、総事業費の半分程度を補助できるよう調整に入った。関連費用を今年度の補正予算案に盛り込む方針 とされる。

政府は6月に「半導体・デジタル産業戦略」(下記)を策定し、半導体のてこ入れに「国家事業として取り組む」と宣言している。

建設地は熊本県菊陽町にあるソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの画像センサー工場の隣接地が検討されている。ソニーや自動車部品大手のデンソーなどと協力する可能性もある。

なお、TSMCはつくば市に研究開発拠点を新設し、最先端半導体の開発を進めると発表している。開発には、半導体の製造装置や素材に強みがある日本メーカーや研究機関も参画する。総事業費は約370億円で、日本政府が約半分の190億円を補助する。

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TSMCは現在、台湾内外に17の製造工場を持つ。海外での大規模工場は、稼働中の中国と建設中の米国(2021年から建設開始、2024年の稼働)に続き日本が3カ国目となる。

米国にはテキサス州Austin とカリフォルニア州San Joseに設計センターを持つ。

なお、同社は7月に、ドイツ政府から工場誘致の話があり、検討を開始していると述べた。
工場建設がドイツ国内の主要クライアントにとって重要かつ効果的かどうかを確認している段階で、まだ何かを公表できる段階には至っていないとした。

台湾 中国 USA
12-inch GIGA FABs
  (300mm)
本部/R&D:Fab 12A/B(新竹Science Park) TSMC Nanjing Company, Fab 16
(南京)
建設中
アリゾナ州 Phoenix
Fab 14(台南Science Park)
Fab 15(中部Science Park:台中市)
Fab 18(台南Science Park)
8-inch Fabs
  (200mm)
Fab 3(新竹Science Park)  TSMC China Company, Fab 10
(上海)
WaferTech L.L.C., Fab 11 
(ワシントン州 Camas) 
Fab 5(新竹Science Park) 
Fab 6(台南Science Park) 
Fab 8(新竹Science Park) 
6-inch Fabs
  (150mm)
Fab 2(新竹Science Park)
Backend Fabs Advanced Backend Fab 1(新竹Science Park)
Advanced Backend Fab 2(台南Science Park)
Advanced Backend Fab 3(桃園市)
Advanced Backend Fab 5(中部Science Park:台中市)
Backend Fab:半導体製造における2番目の工程で、それぞれのデバイス(トランジスタ、キャパシタ、抵抗など)がメタル層によって配線される。


中国では前世代型の工場(南京は28nm)を稼働させている。
米国アリゾナでは回路線幅が小さい最先端型の工場(5nm)を建設中で、更に3nmの工場の建設を計画している。
台湾では台南で3、5nmの工場を建設中で、新竹では2nmの新工場を計画している。

これに対し、日本で生産するのは、演算用のロジック半導体で22~28nmの前世代型技術を想定している。

スマートフォンなどに用いられる10nm前後の最先端半導体の供給確保は、今後も課題として残る。

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半導体戦略」(経済産業省 2021年6
 https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210604008/20210603008-4.pdf

(参考)

エルピーダメモリは破綻し、米国のマイクロンメモリが引き取った。

ルネサスはその後、過剰な設備や人員を抱え、最終赤字が続き、産業革新機構その他の出資を仰いだ。

当初 2014/3/31 2018/6/30 2021/6/30
産業革新機構 69.15% 33.38% 20.26%
三菱電機 25.1% 6.26% 4.53% 3.91%
日立製作所 30.7% 7.66% 3.71% 3.20%
NEC 33.4% 0.75%
デンソー 0.49% 4.99% 7.92%
トヨタ自動車 2.49% 2.99% 2.58%
日産自動車 1.49%

2018/9/4 ルネサス、IoT中核技術の米半導体メーカー買収へ 後半

日の丸半導体凋落の主要因

・ 日米貿易摩擦によるメモリ敗戦
・ 設計と製造の水平分離の失敗
・ デジタル産業化の遅れ
・ 日の丸自前主義の陥穽
・ 国内企業の投資縮小と韓台中の国家的企業育成

国内のロジック半導体工場  

国内の半導体製造基盤の確保・強化に向けて

半導体は、デジタル社会を支える重要基盤・安全保障に直結する戦略技術として死活的に重要。

   経済安全保障の観点から、国家として整備すべき重要半導体の種類を見定めた上で、必要な半導体工場の新設・改修を
   国家事業として主体的に進めることが必要。


具体的には、先端半導体を国内で開発・製造できるよう、海外の先端ファウンドリの誘致を通じた日本企業との共同開発・生産や、
  メモリ・センサー・パワー等を含めた半導体の供給力を高めるための我が国半導体工場の刷新等について、
 他国に匹敵する大胆な支援措置が必要


国内対策①
先端半導体製造技術の共同開発とファウンドリの国内立地


国内対策② デジタル投資の加速と先端ロジック半導体の設計強化

国内対策③ 半導体技術のグリーンイノベーション促進

国内対策④ 国内半導体産業のポートフォリオとレジリエンス強靭化

経済安全保障上の国際戦略

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