米、対EU鉄鋼関税を一部免除

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バイデン米政権は10月30日、EUから輸入する鉄鋼とアルミニウムに課す追加関税を一部免除すると表明した。EUは代わりに報復関税を取り下げる。

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トランプ前政権は2018年5月31日、安全保障上の脅威に対抗する米通商拡大法232条(国防条項)に基づき、EUや日本、中国など外国製の鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を上乗せした。

2018/6/2  米、EU・カナダ・メキシコに鉄鋼・アルミ関税発動 

欧州委員会は2018年6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

EUは被害を2017年ベースで64億ユーロ(71億米ドル)としている。

  米のEUからの輸入 追加税率 追加税額
Steel 製品 59億ドル 25% 15億ドル
アルミ製品 12億ドル 10% 1億ドル
合計 71億ドル   16億ドル

EUは直ちに28億ユーロ(32億ドル)相当の製品に課税する。

残りの36億ユーロ(38億ドル)相当の製品には、3年後又はWTOでの裁定のあった時のいずれか早い時期に課税する。

EUの報復課税

時期 製品リスト 追加税率
即時課税 鉄鋼・アルミ製品、オレンジジュース、バーボン、たばこ、化粧品、シャツ、ズボン、靴、バイク、ボートなど 25%
(1品目のみ10%)
後日 10%、25%、35%、50%


2018/6/7 EU、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ

残りの36億ユーロ(38億ドル)相当の製品への課税は本年6月に開始される予定であった。


バイデン米国政権と欧州委員会は本年5月17日、世界的な鉄鋼およびアルミニウムの過剰生産に対処すべく協議を開始するとの共同声明を発表した。2021年末までの合意を目指す。

米とEUは、第三国に起因する過剰生産が双方の国内産業に及ぼす影響に対する認識を共有し、また中国を名指しして、貿易歪曲的な措置を取る国に対して説明責任を負わせることで合意した。

これに伴い、EUは6月に開始される予定であった追加の報復関税措置を停止した。(12月1日まで延期)

米通商代表部(USTR)は10月12日、Katherine Tai USTR代表が訪問先のイタリアで、欧州委員会で通商を担当するDombrovskis執行副委員長と会談したと発表した。

鉄鋼とアルミニウムの世界的な過剰生産への解決に向けた対応を議論したとするが、米国が鉄鋼とアルミニウムに課している追加関税なども協議したとみられた。

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今回の合意は下記の通り。

米国は、鉄鋼とアルミにそれぞれ25%、10%上乗せしている追加関税は維持するが、一定の輸入量への関税は免除する。関税割当と呼ばれる仕組みで、具体的な数量枠は今後発表する。

報道によると、鉄鋼ではEUからの輸入の年330万トン分は関税を免除し、それを超えた分から関税を課す。

輸入制限を始める前の2017年の輸入量(英国を除く)は470万トンで、関税上乗せ後の2019年は390万トンまで減った。この場合、60万トン分だけに課税される。

アルミについては関税が免除される分は非常に少ないとされる。

輸入制限自体は形を変えて今後も続く。

また、関税が免除されるのは、完全にEU域内で生産("melted and poured")されたもので、米国への輸出前に中国やEU域外から輸入され、若干の加工を加えられたものは除外される。

見返りに、EUは米国から輸入する二輪車やウイスキーなどにかけている報復関税を撤廃する。12月1日に予定していた報復関税の拡大も取りやめる。


英国はEUを離脱したため、今回の措置の対象外で、今後も課税が続く。日本も同様である。 (米商務省は、日本とも協議すると述べた。)

韓国については、2018年3月に米韓FTAの改正・延長交渉で合意した際、鉄鋼に関しては25%の追加関税を免除する代わりに、韓国は米国向け輸出数量 2015~2017年平均輸出量383万トンの70%を限度とすることとした。

当時のホワイトハウスのNavarro通商製造業政策局長は、「鉄鋼関税が課されなかったすべての国はクォータ制に直面するだろう」と述べた。

2018/3/26 韓米FTA改正交渉妥結、鉄鋼の追加関税免除 

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