米高裁、バイデン政権の民間へのワクチン義務化を差し止め 

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連邦政府が新型コロナウイルスの感染防止策として発表した民間企業従業員へのワクチン接種義務化について、ルイジアナ州の5th U.S. Circuit Court of Appeals(連邦巡回裁判所)が一時的に実施を差し止める暫定命令を出した。

義務化の発動にはまだ1カ月程度あるが、共和党が知事を握る他の多くの州も訴訟を起こしており、今後、混乱が続くと思われる。

最終的に本件が連邦最高裁判所に持ち込まれる可能性もある。

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バイデン政権は11月4日、従業員100人以上の民間企業などに対して従業員の新型コロナウイルスワクチン接種を義務付ける規定を導入すると発表した。

対象となるのは従業員100人以上の企業と、医療従事者や連邦政府機関の業務を請け負う業者などで、来年1月4日までに、Pfizerか、Modernaか、Johnson & Johnsonのワクチン接種を完了することを義務付ける。

大統領は声明を発表し、「ワクチンはこのパンデミックから抜け出す唯一最善の道だ。私は義務化が必要になることは望んでいなかった。だがワクチンをまだ接種していない人があまりに多い」と指摘した。そのうえで、ワクチン義務付けに起因する大量解雇や人員不足はこれまでのところ起きていないと強調、「雇用主に行動を呼びかける」と訴えた。

労働省は今回の措置導入に関して、2020年以降、新型コロナウイルスによる米国内の死亡者はおよそ75万人に達するが、その多くは職場で感染したとし、ワクチン未接種の労働者を守るために緊急措置が必要と判断した結果だとした。

ワクチン義務付け対象:

1) 従業員100人以上の大企業の従業員 8400万人

労働省の労働安全衛生局(OHSHA)が監督に当たる。

OSHAの規定では、従業員が自分の意思でワクチンを接種しないことも認めている。
その場合は週1回以上の頻度で検査の陰性証明を雇用主に提示し、職場ではマスクを着用する必要がある。

違反した場合は1回につき約14,000ドル以下の罰金などを命じることもある。順守を徹底させるため、立入検査も予定している。

2) 医療機関の医療従事者 1700万人

公的医療保障制度のMedicareおよびMedicaid(低所得者向け医療保険)を運用するCMS (Centers for Medicare & Medicaid Services)が監督に当たる。

ワクチン接種が必要で、ワクチンに代わる陰性証明の選択肢は認めていない。

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これに対し、共和党が知事を握る10州の司法長官が11月10日に各地の連邦裁判所に訴訟を起こした。

ミズーリ、ネブラスカ、アーカンソー、カンザス、アイオワ、ワイオミング、アラスカ、サウスダコタ、ノースダコタ、ニューハンプシャーの各州。

カンザス州の司法長官は「医療施設・従業員にこうした追加の義務を課せば、問題が悪化し、特に十分なサービスを受けていない地方の一部の施設が、必要な数の従業員を雇えず、閉鎖される公算が大きい」との声明を発表した。

10州は、バイデン政権が「州の規制権限」を侵害したと主張、意見公募期間を設けずに義務化を発表したのは行政手続法違反だとしている。

ルイジアナ州の5th U.S. Circuit Court of Appeals(連邦巡回裁判所)は11月6日、連邦政府が新型コロナウイルスの感染防止策として発表した民間企業従業員へのワクチン接種義務化について、 一時的に実施を差し止める暫定命令を出した。

連邦政府の措置に「法律上および憲法上の重大な問題がある」と指摘。連邦政府に対し、差し止め請求への反論を8日までに行うよう命じた。

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司法省は11月8日、裁判所に対し、命令開始には1カ月あり、一時的に実施を差し止める暫定命令は必要がないと伝えた。非接種者のマスク着用義務は12月5日以降であり、ワクチン接種義務は1月4日からである。

また、連邦法では5つ以上の州が同様の訴えをする場合、1つの州を選ぶことが必要であるとした。

その場合、「くじ引き」によって一本化する制度がある。今回の連邦高裁の差し止め命令は今後、訴訟が別の高裁に一本化されれば、その高裁によって解除される可能性もある。

原告側の主張については、命令の否定のメリットが、数千人の命を救い、数十万人の入院を防ぐ命令のメリットを上回らないとした。命令を否定すると、1日当たり数十人、数百人の死者が出るとしている。

ホワイトハウスの副報道官は、「バイデン政権には労働者を守る権限がある。接種の義務化は命を守り新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことを目的とするものである」と述べた。

労働省の弁護士は、法律は「労働者が重大な危険にさらされており、労働者を保護するために新しい基準が必要であると当局が判断した緊急時に、迅速に行動する権限をOSHAに明示的に与えている」と述べた。

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政府の回答を受け、5th U.S. Circuit Court of Appealsは11月12日、 ワクチンの義務化を、規制が広すぎる(staggeringly overbroad)とする 判決を下した。

3人の裁判官は、バイデン大統領の義務化は「OSHAの法的権限を著しく超えている」とし、「この義務化は、繊細に扱われたメスというよりも、職場と労働者の違いをほとんど考慮していない、なんでも叩く大きなハンマー("a one-size-fits-all sledgehammer)であり、義務化が対処しようとしているとされる「重大な危険」に対する労働者の感受性の度合いの違いをみていないとした。

We next consider the necessity of the Mandate. The Mandate is staggeringly overbroad. Applying to 2 out of 3 private-sector employees in America, in workplaces as diverse as the the country itself, the Mandate fails to consider what is perhaps the most salient fact of all: the ongoing threat of COVID-19 is more dangerous to some employees than to other employees.

All else equal, a 28 year old trucker spending the bulk of his workday in the solitude of his cab is simply less vulnerable to COVID-19 than a 62 year-old prison janitor. Likewise, a naturally immune unvaccinated worker is presumably at less risk than an unvaccinated worker worker who has never had the virus.

The list goes on, but one constant remains --- the Mandate fails almost completely to address, or even respond to, much of this reality and common sense.

各判事は、義務化は企業に経済的負担を強いるものであり、憲法に違反する可能性があるとし、「義務化は、OSHAの規制スキームへの参加を代行することで企業に経済的負担を強いるものであり、遵守を拒否したり怠ったりした場合には深刻な経済的リスクに晒され、不本意な従業員に注射やテストを受けさせたり、路頭に迷わせたりすることで、労働力および事業の見通しを衰退させる恐れがある」とした。

この高裁は保守的なことで知られ、判事3人はいずれも共和党政権時に任命されている。

連邦政府は、各州の異議を申し立てを1か所の裁判所で併合して審理すべきだとし、「その裁判所が決まるまで、ワクチンの義務化を見合わせる理由はない」という立場を維持している。


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