東芝 「3分割」を「2分割」に見直し

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東芝は、企業価値を高めようと打ち出した「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とする。2月7日に発表した。

背景は下記の通り。

東芝は2021年11月12日、事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定した。

戦略委員会があらゆる選択肢を検討し、東芝と株主にとり最善となるスピンオフ計画を提案、取締役会が全会一致で承認した。

戦略委員会の委員は全員が社外取締役である。

 智 会長、社長CEO
Paul J. Brought 社外 元 KPMG 委員長
Ayako Weissman 社外 元 投資会社 委員
Jerry Black 社外 イオン顧問 委員
George Zage Ⅲ 社外 元 投資銀行 委員
畑澤 守 代)副社長
綿引 万里子 社外 元 裁判官
橋本 勝則 社外 元 デュポン

委員


2つの会社をスピンオフし、残る東芝は事業は営まず、キオクシアと東芝テックの株式を保有する。

1) インフラサービス Co.:カーボン・ニュートラルの目標の達成およびインフラレジリエンスの向上に貢献する会社

2023年度には2兆2,300億円となる見込み。営業利益率は同期間に5.1%から5.2%に伸長する見込み。

2) デバイス Co.:社会・ITインフラの進化を支える会社

2023年度には8,800億円となる見込み。
 注力領域であるパワー半導体は、2021年度950億円を2023年度には1,200億円に
 ニアラインHDDは、2021年度2,000億円を、2023年度2,800億円に大きな成長を見込む。
営業利益率は2021年度の7.1%から、2023年度には6.1%となる見込み。


2021/11/15 東芝、3つの独立会社に戦略的再編


しかし、「モノ言う株主」(海外の資産運用会社)が「結論に至るプロセスが透明性に欠ける」、
「収益向上の機会が何ら見られない」「"小さな東芝"を3つ生み出す」などと分割案に反対の声が上がっており、実現が不透明な情勢となっている。

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東芝は2017年12月に約6000億円の第三者割当による新株式の発行をおこなった。

公募増資を実施するのは事実上 困難なため、第三者増資を行った。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てた。「物言う株主」も多い。

これにより2期連続の債務超過による上場廃止を回避することができた。

2017/11/24 東芝、増資を決定 

しかし、この後、現在に至るまで、「物言う株主」に振り回されることとなった。

現在の主な株主は次の通り。(日経報道、Quickファクトセット調べ 2022/1月末)

Effissimo Capital Management 旧村上ファンドの幹部3人がシンガポールで設立 10.41%

3D Investment Partners

シンガポール拠点 日本特化型の独立系資産運用会社 7.57%
Farallon Capital Management 米国の資産運用会社 6.75%
BlackRock Inc. 世界最大の資産運用会社 3.08%
Vanguard Group 世界最大規模の資産運用会社 2.65%


2021年3月の臨時総会で、定時総会の運営の適正性について独立した調査を求める筆頭株主 Effissimo の株主提案を可決

  調査の結果、東芝は経済産業省と一体となって筆頭株主Effissimo の株主提案権の行使を妨げようと画策したなどと指摘された。

同臨時総会で、Farallon Capital Managementは東芝の新経営方針をめぐり、定款の変更などを求めた。(賛成少数で否決)

2021年6月の株主総会で、株主の反対で、当初取締役候補とした2人を撤回したが、総会で永山治取締役会議長と監査委員会の小林伸行委員の再任案が否決された。

2022年1月、3D Investment Partnersは3社分割案に反対し、臨時株主総会を要求 。

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「モノ言う株主」から3分割案に反対意見が出るなか、東芝 は一転してこの3分割の方針を見直した。

具体的には、東芝グループから半導体などのデバイス事業だけを切り離して新たに上場させる一方、分割するとしていたインフラサービス事業は東芝本体に残す。



キオクシアに対し、できるだけ早期のIPOを正式に要請した。

当初の「インフラサービスCo.」のうち、ビルソルーション東芝エレベータ、東芝ライテック、東芝キヤリア) 、及び当初の「東芝本体」の東芝テックは、注力事業との関係性が弱く、「非注力事業」とした。

ビル3社については、成長ポテンシャルを実現できるパートナーとの再編や外部資本の導入によって価値を顕在化すべきと判断した。
うち、空調の東芝キャリアについては下記の通り、売却した。残り2社は2022年度中の売却契約締結を目指す。

東芝テックについては、同社自身の中長期の成長プランを促進すべく、実務上可能な限り短期のうち同社と協働する。

両社の事業計画(億円)

2021年度 22年度 23年度 25年度
東芝/インフラサービス 売上高 15,200 15,400 16,100 18,700
営業利益 540 650 900 1,200
デバイス Co. 売上高 8,600 8,600 9,100 10,100
営業利益 550 560 600 800

本事業計画の円滑な遂行を前提に、今後2年間で3,000億円の株主還元を想定した。


果たしてこの案で「物言う株主」を満足させられるであろうか。

会社分割は、株主総会で2/3以上の賛成が必要な「特別決議」が必要だが、東芝は産業競争力強化法の特例措置を申請する方針で、認められれば取締役会で決められる。

東芝では株主総会に諮るとしているが、「特別決議」か、「普通決議」(多数決)かを決めていない。

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なお、同社は空調子会社の東芝キヤリアについて、JV相手の米空調大手Carrier Corporation に保有する株式60%のうち55%を2月7日に譲渡した。保有比率は5%になる。

同社の空調事業の価値を顕在化するためには、その成長ポテンシャルを最大化できる強いパートナーとの再編が最善との結論に達したとしている。

売却額は約1,000億円。

東芝は1998年に世界最大の空調設備機器メーカーである米国Carrier Corporation との間で、 空調設備機器分野におけるグローバルな戦略的事業提携を行ない、1999年4月に東芝60%、米社40%出資で日本に東芝キャリアを設立した。

Carrier CorporationはUnited Technologies Corporationの空調設備事業部門会社で、 世界最大の空調設備機器メーカーとして、大型空調設備機器やコールドチェーン製品等を主製品とする。
東芝は小型エアコンや業務用マルチエアコン等を空調設備機器の主製品としていた。




付記 東芝のRestructuring 推移

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