欧州司法裁、「法の支配」違反国へのEU資金停止を合法と判決

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EUの最高裁判所に当たる欧州司法裁判所は2月16日、加盟国が「法の支配」の原則を順守しない場合、資金の支払いを停止できるとの規定は合法との判決を下した。

法の支配の後退が目立つハンガリーとポーランドの異議申し立てを退けた。両国は強く反発している。

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EU首脳会議は2020年7月17~21日、90時間以上にも及ぶ連続協議の末、「歴史的」とも評される復興パッケージ(新型コロナウイルスで傷んだ経済の再生を目指す復興基金と中期予算)に合意した。

中期予算計画(多年度財政枠組み)の議論で、予算の主要拠出国だった英国のEU離脱を受けて大幅な歳入減となる中、復興パッケージの予算規模などをめぐって加盟国間の対立が先鋭化していた。

復興基金の総額のうち返済が不要な補助金が3900億ユーロ、残り3600億ユーロが低利融資となる。 

さらに「倹約4カ国」(スウェーデン、デンマーク、オーストリア、 オランダ)に、EU予算に拠出した分担金を払い戻す「リベート」の金額の積み増しを行なう。この結果、気候変動対策や技術革新などに割り当てられるはずだった分は削られた。

2020/7/23 EU、新型コロナ復興基金案で合意 

しかし、復興基金案の成立が遅れた。

ハンガリーとポーランドは11月16日、大使級会合でこの基金を組み込んだ次期中期予算(2021~2027年)案の承認手続きへの同意を拒んだ。
権力の乱用を防ぐため「法の支配」が順守されているかどうかを資金配分の条件とする仕組みに反発した。

ハンガリーやポーランドの政権は近年、国民の反移民・反難民感情やEU内経済格差への不満を背景に、権威主義的な体制を強めている。両国の司法介入がEUの基本価値に違反するとして問題になっている。

EU基本条約第7条に基づく制裁手続きについて、加盟国の権利停止につながる重大且つ持続的な基本価値違反があるかの決定には、問題国を除く加盟国による全会一致の同意が必要となる。これを特定多数決(国数で55%以上、人口規模65%以上)の投票に基づき決定することが可能になるように変更しようとしているため、両国は拒否権を発揮した。


その後、交渉が続き、EU首脳会議は12月10日、復興基金と中期予算を7月の案のままで合意した。承認を拒否してきたハンガリーとポーランドが妥協に応じた。

基金の分配条件として権力の乱用を法で縛る「法の支配」を条件としたが、ポーランドとハンガリーに配慮し、同メカニズムの対象や条件を明確にしたガイドラインを作成するほか、両国が同規則案の適法性に関してEU司法裁判所へ付託した場合に、その判断を待った上で運用を開始するとした。

2020/12/21 EU、コロナ復興基金と中期予算でようやく合意 


ポーランドとハンガリーは2021年3月、条件の無効を求め、EU司法裁に提訴した。(今回、これに対する判決があった。)

その後、欧州委員会と欧州司法裁判所は両国の行為を問題視した。

欧州委員会は2021年7月15日、ハンガリーとポーランドでLGBTQ(性的少数者)市民に対して差別的とされる措置が導入されたことを受け、両国の保守政権に対する法的措置を開始した。
欧州委員会はEU加盟国に対し、違反手続きを開始する権限を持っており、最終的には欧州司法裁判所への提訴と経済制裁につながる。

ハンガリーは前週、EU指導部や加盟各国の首脳からの警告を押し切り、「反小児性愛法」を施行し、未成年者に対して同性愛や性別移行を「助長」する行為などを禁止した。
ポーランドでは、国土の3分の1ほどを占める約100の自治体が「反LGBT」決議を採択している。

欧州委員会は2021年9月7日、ポーランドが導入した裁判官の懲戒制度をめぐり、同国に制裁金を科すようEU司法裁判所に請求すると発表した。 

「司法の独立性侵害」として制度の停止を迫った司法裁の命令にポーランドが背いたと判断した。

欧州司法裁判所は2021年7月20日、ポーランド南西部トゥルフの褐炭鉱山について、5月に下した操業停止命令に従うまで1日50万ユーロの制裁金を欧州委員会に支払うようポーランド政府に命じた。

環境悪化を懸念する隣国チェコが2021年2月に、ポーランドが適切な環境アセスメントを経ずに操業延長を承認しEU法に違反したなどとして提訴し、司法裁は判決まで操業を停止させる仮処分措置を決定したが、ポーランドは抵抗してきた。

ポーランド憲法裁判所は2021年10月、「EU司法裁判所による同国の司法制度への介入はポーランド憲法の優越性の原則に違反する」と判断した。

「EU法が加盟国の法律に優先される」とするEUの原則に反しており、欧州統合の基盤が揺らぐ事態となった。欧州委員会委員長は、「ヨーロッパの法秩序の一体性に真っ向から挑戦するものだ」と指摘した。

EU司法裁判所は2021年10月27日、EUが求めた裁判官の懲戒制度の中止にポーランドが応じていないとして、同国に1日あたり100万ユーロの制裁金の支払いを命じた。

欧州委員会は2021年12月22日、ポーランドの憲法裁判所がEU法の一部を「違憲」と判断した問題などをめぐり、EU法違反だとして法的措置に着手すると発表した。
ポーランドが2カ月以内に十分な回答をしなければ、EU司法裁判所に提訴する。

今回、欧州司法裁判所は「法の支配」を無視するポーランドとハンガリーに対する資金提供の停止を合法とする判決を下した。

EUは、両国が司法やメディアを政治支配し国民の権利を制限することで、欧州の法の支配に違反していると主張しており、順守しない場合には、両国への資金提供を停止する方針を示していた。
両国は異議を申し立てていたが、司法裁がこれを退けた。

EUの欧州委員長は、「EUが正しい軌道に乗っていることが確認された」と歓迎、欧州委員会が数日中に対応を決めると述べた。

両国に対する数十億ユーロの資金提供停止に道が開かれたが、両国は強く反発しており、EU内部の対立が強まる恐れもある。

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