国の洋上風力発電公募入札の評価基準が問題に

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国の洋上風力発電公募入札の評価基準が問題になっている。


日本で洋上風力発電の導入が進んでいなかったのは、①海域の占用に関する統一的なルールがない、②先行利用者との調整の枠組みが存在しないのが問題である。

これらの課題の解決に向け、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(「再エネ海域利用法」)が成立、2019年4月に施行された。
選ばれた事業者はその区域内で最大30年間の占用許可を得る。

 政府による基本方針の作成→「促進区域」の指定→公募による事業者選定→固定価格買取制度(FIT)→占用許可(最大30年間)

「促進区域」: 自然的条件が適当であること、漁業や海運業等の先行利用に支障を及ぼさないこと、系統接続が適切に確保されること、等の要件に適合した一般海域内の区域のこと

現在、促進区域に5か所が指定され、それぞれ入札により4か所の事業者が選定された。 

選定事業者
促進地域 ①長崎県五島市沖 1.7万kw 戸田建設グループ
②秋田県能代市・三種町・男鹿市沖 47.88万kw 三菱商事連合 @13.26 (次点 @18.18)
③秋田県由利本荘市沖 81.9万kw 三菱商事連合 @11.99 (次点 @17.00)
④千葉県銚子市沖 39.06万kw 三菱商事連合 @16.49 (次点 @22.59)
⑤秋田県八峰町・能代市沖 36万kw
有望な区域 ⑥長崎県西海市江島沖 30万kw
⑦青森県沖日本海(南側) 60万kw
⑧青森県沖日本海(北側) 30万kw
⑨秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖 21万kw
⑩山形県遊佐町沖 45万kw
⑪新潟県村上市及び胎内市沖 35 & 70万kw
⑫千葉県いすみ市沖 41万kw
一定の準備段階に進んでいる区域 ⑬北海道檜山沖
⑭北海道岩宇及び南後志地区沖
⑮北海道島牧沖
⑯青森県陸奥湾
⑰北海道松前沖
⑱北海道石狩市沖
⑲岩手県久慈市沖
⑳福井県あわら市沖
福岡県響灘沖
佐賀県唐津市沖

②~④の公募入札で2021年12月、三菱商事を中心とする企業連合がすべてを勝ち取った。上の表のとおり、最安値は11.99円/kWhで、次点とは5円程度の差があった。

小泉進次郎前環境相は「運転開始時期が早いことはどのくらい評価されたのか」と疑問をぶつけた。2月3日の自民党の会合で河野太郎前規制改革相が「明らかに配点がおかしい」と経済産業省幹部に詰め寄った。

入札応募は供給価格評価120点、事業実現性評価120点の合計240点満点で順位が付けられる。

供給価格評価は、最低価格/入札価格 x 120 で、最低価格業者は120点を獲得する。

事業実現性評価は次の通りで、各項目で、トップランナーは10割、ミドルランナーは7割、最低限3割は必要



   

②~④の入札結果は次の通りであった。

  https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/contents/column0284.html

小泉進次郎前環境相の質問に対し、経産省の幹部は「早い方がいいし、点数もつけた」と説明した。

しかし、240点満点のうち120点が電気の供給価格で、運転開始時期は事業能力80点のうち「事業計画の実現性」20点分の一部(点数不明)に過ぎない。

価格は最も安ければ自動的に120点を獲得できるが、運転開始はどれだけ早めても最大20点までしかとれない。 (「最も確実に事業を実現」が20点で、「早く」は評価するのか不明)

三菱商事側は2028~30年の運転開始を掲げたが、数年早い計画を提案した企業連合もあったという。自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟は「今のままでは運転開始を早めても評価されない。より安く入札するために後ろにずらそうとするだろう」と問題視している。

金銭では解決できない立地地域の地元対応が大変だが、点数は小さい。「今後、地元調整など定性面へリソースを割きにくくなる。合理的な考えにならざるを得ない」との声がある。

今後、経産省は有識者会議でルールの見直しを検討するという。

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