ロシア、英企業のソユーズでの人工衛星の打ち上げを拒否

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米欧の経済制裁に反発し、ロシアの国営宇宙公社 Roscosmos State Corporation for Space Activities は3月3日、英企業 OneWeb LLC のソユーズでの人工衛星の打ち上げを中止した。

OneWebカザフスタンのバイコヌール宇宙基地における同社の衛星打ち上げ全てを一時的に停止することを決定したと発表した。3月5日にも新たに36機が打ち上げられる予定であったが、衛星を搭載した「ソユーズ2.1b」ロケットは発射台から撤去された。

OneWebは自社の通信サービスを提供するために、648機の通信衛星からなる衛星コンステレーションの構築を地球低軌道で進めている。衛星の打ち上げはバイコヌール宇宙基地およびフランス領ギアナのギアナ宇宙センターから「ソユーズ」ロケットを使って実施されており、打ち上げ済みの衛星数は2022年2月の時点で428機に達していた。

Roscosmos は3月4日、ツイッターに「西側の制裁への私たちの報復だ」と投稿、人工衛星の打ち上げをとりやめたのは、英政府のせいだと正当化した。

Roscosmos は打ち上げの条件として、英政府がOneWebから出資を引き揚げることと、衛星が軍事目的でないことを証明することをOneWebに要求した。(英国のものは打ち上げない)

しかし英政府は「政府はOneWebの株を売却しない」として拒否、Roscosmos は英側が条件に応じなかったので中止を決めたとしている。


ソユーズが使えないため、三菱重工には欧米を中心とする衛星運用会社からの問い合わせが引きも切らないという。


影響は米国、ロシア、日本、欧州、カナダの計15カ国で運営される国際宇宙ステーション(ISS)にも及んでいる。

ISSには現在、米国、ロシア、ドイツの宇宙飛行士計7人が滞在している。Roscosmos は3月3日、ドイツの宇宙機関に対し、ISSでの共同科学実験を終了するとの書簡を送った。

地上から約400キロ上空を周回するISSの高度維持や姿勢制御は、ロシアが打ち上げるISSへの補給船とロシアのモジュールが担っている。

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OneWeb LLCは、米国に本社を置く低軌道衛星コンステレーションを用いた衛星通信を計画する衛星通信会社であった。

ソフトバンクグループなどから総額約30億ドルを調達し、2019年2月には、試験機となる衛星6機の打ち上げに成功、2020年2月と3月にもそれぞれ34機の衛星を打ち上げていた。また、地上局の一部も完成し、400Mbpsを超える通信速度と、32msの小さなレイテンシ(遅延時間)をもつブロードバンド・システムの実証実験に成功している。ソフトバンクグループは19億ドル出資し、同社株式の5割近くを保有していた。

しかし、2020年に入ってから、事業の継続に必要な新たな資金調達に失敗、2020年3月27日に連邦破産法第11章に基づく会社更生手続きを申請した。

申請時点で、サービス開始に必要な衛星648機に対して、打ち上げ済みは74機に留まっていた。同社は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に関連した財務上の影響や市場の乱高下により、資金調達プロセスが停滞したため」と説明している。

同社は2020年7月3日、インドの移動体通信大手Bharti Global と英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省からなるコンソーシアムによって買収された。落札額は10億ドルで、両者がそれぞれ5億ドルを出資したという。運営権はBharti Global がもつ。

これによりOneWeb は衛星コンステレーションの構築を続けるための資金を獲得、英国政府は、EU離脱によってアクセス権を失った衛星航法システム「ガリレオ」の代わりに、"英国版GPS" としても利用することを目指す。

同社は2021年1月、ソフトバンクグループと米ヒューズ・ネットワーク・システムズから投資を受け、総額14億ドルの資金を確保したと発表した。今回調達した資金で、2022年末までの整備を計画している計648基の人工衛星ネットワークの費用を賄う。

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