ADNOC / ENEOS / 三井物産、UAEと日本間のクリーン水素サプライチェーン構築に向けた共同事業化検討契約を締結

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UAEのアブダビ首長国国営石油会社(ADNOC) とENEOS、三井物産3社は6月7日、共同事業化検討契約書を締結し、UAEと日本間のクリー水素サプライチェーン構築に向けた協業検討を開始すると発表した。

第一段階ではアブダビのRuwais工業地域内所在すADNOC製油所・石油化学工場由来の副生水素 を、 第二段階では天然ガスから生産されるブルー水素、効率的な水素の輸送形態であるメチルシクロヘキサン(MCHに変換日本輸出することを目的としている。

化石燃料由来の水素を「グレー水素」、再生可能エネルギー由来の水素を「グリーン水素 」と呼ぶが、化石燃料由来の水素だがCO2を回収するものを「ブルー水素」と呼ぶ。  

水素を海外から運ぶためにはセ氏零下253度まで冷やして液化し、専用の運搬船を使う必要がある。今回は水素をトルエンに反応させてメチルシクロヘキサンとし、常温で日本に輸送し、日本でこれから水素を取り出す 。

これまでメチルシクロヘキサンから水素を取り出すのは不可能とされていたが、千代田化工が開発した触媒がこれを可能にした。


2017/8/5 千代田化工ほかの国際間水素サプライチェーン実証事業



ADNOC、ENEOS、
三井物産3年間5万トン規模の水素生産設備の技術実証と、商用段階を想定した年間20万トン規模への拡張可能性に関するフィージビリティスタディ実施する。

ADNOC脱炭素ビジネスへの取り組みを加速させており、油田を活用したCO2回収・貯留に加え、製油所・石油化学工場などの既存設備を活用した競争力の高いブルー水素供給事業の確立を目指している。

2016年11月に中東で初となる商業規模のCO2回収プラントが、UAEのEmirates Steel Industriesの製鋼所において操業を開始した。ADNOCとMasdar(Abu Dhabi Future Energy Company)のJVが、Al Reyadah CCUS((Carbon capture, utilisation and storage) プロジェクトとして開発したもので、現在、年間80万トンのCO2回収能力を有している。

CO2は陸上油田での原油回収促進(CO2 EOR)に利用する。

ADNOCは、2030年までに年間500万トン- CO2を達成することを目指している。

ENEOSは水素とトルエンを反応させてMCHに変換し、石油と同じように常温で運ぶ研究を進めている。

LNG開発のノウハウを持つ三井物産がプロジェクトの管理を担当する。

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なお、JXTGエネルギー現 ENEOS)、千代田化工、 東京大学、 クイーンズランド工科大学は2019年3月15日、オーストラリアにおいて有機ハイドライドを低コストで製造し、日本で水素を取り出す世界初の技術検証に成功したと発表した。

2021年11月2日、世界で初めて実際に使用できるレベルまで規模を拡大し、燃料電池自動車充填することに成功したと発表した。
実際に使用できるレベル(約6kg)にまで規模を拡大し、日本においてMCHから水素を取り出し、実際に燃料電池車に充填、走行させることに成功した。

水とトルエンから一段階の反応でメチルシクロヘキサン(MCH) を製造する、ENEOSが開発した「有機ハイドライド電解合成法(Direct MCH)」を採用している。

これは、太陽光発電などからのグリーン水素を輸送するためのものであり、今回は使用しない。

2019/3/18 CO2フリー水素を低コストで製造する世界初の技術検証

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別途、INPEX、JERA、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2021年7月、ADNOCとの間で、アブダビ首長国におけるクリーン・アンモニア生産事業の事業化可能性に関する共同調査契約を締結した。

アブダビにおいて、天然ガスを改質して製造した水素を基にアンモニアを合成し、同時に排出される二酸化炭素(CO2)をINPEXが参画するアブダビ陸上油田でCO2を用いた原油回収促進(CO2 EOR)に利用することで、CO2排出量を大幅に抑制したクリーン・アンモニアを日本に輸送する事業の事業化可能性を調査する。


INPEX
は2021年8月、ADNOCとの間でクリーンアンモニアの売買契約を締結した。ADNOCが既存のアンモニアプラントで天然ガスから生産されるもので、アンモニア生産時に排出されるCO2を回収し、INPEXが参画するアブダビ陸上油田においてCO2圧入することで、CO2排出量を抑制したクリーンアンモニアとなる。

クリーンアンモニア液体輸送用のコンテナアブダビから日本に輸送、発電燃料として実証を含めエネルギー分野で使用

参考 2018/10/25 日揮、再生可能エネルギー由来の水素を用いたアンモニア合成と発電に世界で初めて成功

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