JSR、腫瘍オルガノイドを用いた前臨床受託サービス開始

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JSRはライフサイエンス事業を石化事業、ファイン事業に次ぐ第三の柱と位置付け、医薬品開発プロセスの革新に貢献することで価値を提供し、同事業を拡大していくことを目指している。

石化事業は柱であったエラストマーを売却し、ABS等の合成樹脂だけが残る。

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JSR の ライフサイエンス事業のグループ企業である医学生物学研究所と Crown Bioscience は5 月12 日、日本国内で前臨床向けサービスを更に拡大するため、ジョイントベンチャーCrown Bioscience & MBL を設立した と発表した。医学生物学研究所は現在、Crown Bioscience の代理店としてサービスの販売を行っている。

Crown Bioscience オンコロジー、がん免疫、免疫媒介炎症性疾患(IMID) 分野における前臨床とトランスレーショナル研究の世界的な CRO 企業である。2006 年に創業され、Cayman Islandsに登記上の本社を持ち、米国、欧州、アジアにおいて 10 カ所の事業所を有している。JSRが2021年5月に買収した。

トランスレーショナル研究は、アカデミアで研究者らが基礎研究を重ねて見つけ出した新しい医療の種(シーズ)を、実際の医療機関等で使える新しい医療技術・医薬品として実用化することを目的に行う非臨床から臨床開発までの幅広い研究を指す。

世界でがん、炎症性疾患、心血管疾患及び代謝性疾患領域に対して、医薬品の基礎研究成果を臨床研究や実用化にまで高める創薬探索開発受託サービスを提供する。 腫瘍オルガノイド(tumor Organoid )を用いたサービスや、世界最大の商業向け PDX コレクション(患者腫瘍移植モデルPatient-derived xenografts)を有している。 (詳細後記)

医学生物学研究所臨床検査薬、創薬支援、研究用試薬を扱う。JSRは2013年よりJSRの抗体・抗原・遺伝子関連技術および試薬開発技術と医学生物学研究所の保有する技術を統合し、医療分野での協業を進めてきたが、2021年3月 に全発行済株式の取得を完了した。

両社は㈱Crown Bioscience & MBL を設立し、初期段階において、製薬企業に対し前臨床およびトランスレーショナル研究(橋渡し研究)関連サービスを提供する。

医学生物学研究所の国内製薬市場における深い知識と経験と、Crown Bioscience が提供する世界的規模の前臨床とトランスレーショナル研究サービスを掛け合わせることにより、シナジー効果を生み出す。
JVは
2022 年9 月のサービス開始を目指す。

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Crown Bioscience は、世界でがん、炎症性疾患、心血管疾患及び代謝性疾患領域に対して、医薬品の基礎研究成果を臨床研究や実用化にまで高める創薬探索開発受託サービスを提供する。

腫瘍オルガノイド(tumor Organoid )を用いたサービスや、世界最大の商業向け PDX コレクション(患者腫瘍移植モデルPatient-derived xenografts)を有している。

腫瘍オルガノイド(tumor Organoid )はがん組織由来 の培養細胞500以上の腫瘍サンプルを有する優位性を発揮してがん薬効試験などの需要を取り込む。

ソース:福島医薬品関連産業支援拠点化事業

PDX コレクション(患者腫瘍移植モデル )は、免疫不全マウスに患者の腫瘍組織をそのまま移植する手法。

従来より抗がん薬の有効性を評価する手段として、患者の腫瘍組織を細分化しシャーレで培養する細胞株が用いられてきた。細胞株をマウスへ移植して腫瘍を作成するのが細胞株移植モデル(CDXモデル)だが、これで有効でも実際にがん患者で有効性を示す抗がん薬の割合は低い。

PDXモデルでは、作成された腫瘍の組織構造が患者の腫瘍の組織構造と近似しており、腫瘍の不均一性が保たれ、さらに遺伝子異常が維持されるという特性があり、より患者での有効性を予測できるモデルとして注目されている。

Crown Bioscience は2020年4月、ワシントン大学のCoMotionとダナ・ファーバー癌研究所との合意により、必要性が高いが作成が困難な前立腺癌モデルとリンパ腫モデルの提供が可能となったと発表した。

ワシントン大学のCoMotionとのライセンス契約により、入手可能な前立腺癌PDXモデル数が大幅に拡大し、CrownBioの確立された前立腺癌PDXコレクションを補強する。

ダナ・ファーバー癌研究所との協業により、T/NK、マントル細胞、濾胞性リンパ腫、難治性または再発患者のDLBCL等の様々なリンパ腫がCrownBioのポートフォリオに加わる。

CrownBioでこれらの新しいモデルのバイオバンク化とデータ集積をまず確立した後、薬効評価、マウス臨床試験、CAR-T細胞療法評価、ヒト化、及びオルガノイド開発を含む腫瘍学及び免疫腫瘍学研究に利用可能となる。

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