クラレの2012年3月決算と樹脂事業概況

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クラレの2012年3月期決算は好調で、営業損益は2008年3月期を上回り、2期連続最高益となった。
配当も年6円の増配とした。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2008/3 4,176 481 428 256 11 11
2011/3 3,632 531 511 287 13 14
2012/3 3,690 547 539 315 16 17
前年比 58 16 29 27 3 3
2013/3予 4,000 600 585 350 18 18

セグメント別ではポバール、PVB、エバール等の酢酸ビニル系の「樹脂」が好調で、500億円程度の営業利益を計上している。
特に、液晶向け「ポバールフィルム」が安定的に利益を稼いでいる。

  11/3実績 12/3実績 13/3予想 対象製品
樹脂 508 499 550 ポバール、PVB、エバール等の樹脂・フィルム
化学品 87 91 95 MMA樹脂、熱可塑性エラストマー、イソプレン関連、メディカル関連製品
繊維 -2 11 20 合成繊維、人工皮革、不織布
トレーディング 33 35 40 合成繊維・人工皮革の加工・販売、グループ製品等の販売
その 49 57 60  
全社 -144 -145 -165  
合計 531 547 600  

ーーー

ラレの「樹脂」セグメントは酢ビ系の樹脂・フィルムで、以下の製品がある。

ポバール樹脂はクラレが世界で初めて事業化した機能性樹脂で、世界トップシェアを誇る。

水溶性、造膜性、接着性、乳化性、耐油性、耐薬品性などの特性をもち、紙加工剤、接着剤、塩ビ重合安定剤をはじめ、自動車のフロントガラス用中間膜原料などの様々な用途で使用されている。

ポバールフィルムは、大型薄型テレビをはじめモニター、パソコン、携帯電話等のLCDの表示に欠かせない偏光フィルムのベースフィルムで、同社の製品は30年以上前からほぼ独占的にこの分野に使用されてきた。

光学用ポバールフィルムの世界シェアで約8割を占める。
日本合成化学工業がこれに続き、世界市場でもこの2社でほぼ独占している。

PVB(ブチラール)樹脂はポバールを主原料とする樹脂で、安全ガラスの中間膜、燃料電池用セルなどファインセラミックス用のバインダー、塗料・インク用のバインダーなどの用途に幅広く用いられる。

PVBフィルムは、その優れた透明性、ガラスとの接着性、耐貫通性を生かし、建築用の安全合わせガラスや自動車のフロントガラスなどの中間膜に使用されている。近年は太陽電池の封止材用途へも拡大している。

EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)樹脂のエバールはプラスチックの中で最高の気体遮断性をもつ機能性樹脂で、酸素を遮断して内容物の劣化を防ぐことから、各種食品包装材に広く使用されている。またプラスチック製ガソリンタンクや、床暖房用のパイプなど食品包装以外の分野でも需要が広がっている。

1972年にクラレが世界で初めて工業化した。クラレの世界シェアは約65%。


同社は酢ビ系事業の世界展開を図っている。
欧州のポバールとPVB樹脂及びPVBフィルム事業は買収事業を拡大した。
更に北米とアジアでの新設を検討している。

    付記

クラレは6月5日、クラレアメリカ(クラレ100%間接出資子会社)によるポバール樹脂生産設備の新設を決定したと発表した。

立地:テキサス州ラ・ポルテ市(工場用地は先行取得済)
生産能力:第一期 40,000トン/年
時期: 2014年9月完工予定

 

クラレの世界展開  数字は能力(単位:千トン)
  日本 アジア 欧州 北米 合計
酢ビ 岡山 150             150
PVA(ポバール)樹脂 岡山・新潟 124 Kurare Asia
Pacific

40

Kurare Europe
    (増強中)
70
+24
(決定*1)   234
+24
ポバールフィルム 玉島・西条
(増強中)
*2                                          
PVB樹脂         Kuraray Europe 39     39
PVBフィルム     (検討中)   Kuraray Europe
  (増強中)
34
    34
エバール 岡山 10 (検討中)   Eval Europe 24

Kuraray
 America
(増強中)
 

35

+12
69
  (+12

*1  Kuraray America は2011年1月、酢ビ・ポバール事業の拡大のためエバール工場の近くの土地を購入した。
  上記 付記参照

*2 ポバールフィルム能力
        2007年初めは西条3100万m2、玉島3000m2の合計6100万m2であったが、
    現状は 1億8000万m2となっており、2013年6月には西条増強で合計2億1200万㎡まで拡大する。
        西条工場の増強では大型液晶テレビ用偏光フィルムのための幅5000mmの広幅タイプの生産ができる。

   

クラレはポバール原料の酢ビを岡山工場で生産している。
なお1983年に中条工場の
天然ガス法酢ビ(86.4千トン)を休止した。

2006/5/20 酢酸業界


同社の海外拠点は以下の通り。

Kurare Asia

クラレは1996年10月、シンガポールに日本合成化学との50/50JVのPoval Asia を設立したが、2008年1月付けでクラレ 100%になった。

2008年7月にアジア・オセアニアのポバール樹脂販売会社Kuraray Specialities Asia と統合し、Kuraray Asia Pacificとした。

Kurare Europe

 1) PVA、PVB事業

クラレは2001年にClariantのPVA、PVB事業を買収、Kuraray Specialities Europe GmbH を設立した。
工場はフランクフルトで、能力はPVA 50千トン、PVB 16千トンであった。その後増強。


2006年
9月に
Kuraray Europeが吸収合併した。

 2) PVBフィルム

2004年11月にRütgers AGの子会社HT Troplast社から買収した。
工場はドイツのトロイスドルフで、能力は26千トンで、2007年に34千トンに増強した。 
これにより、PVA樹脂→PVB樹脂→PVBフィルムの一貫体制を完成

2012年3月、世界的なPVBフィルムの需要拡大(特に新興国を中心に伸長する自動車用途)に対応し、増強を決定(能力非公表)。2013年11月稼働目標。

Eval Europe

1999年にベルギーのアントワープでエバールの生産を開始した。

Kuraray America

当初、Eval Company of America を設立し、1986年にテキサス州パサディナでエバールを生産開始した。
その後、
Kuraray Americaに吸収合併した。

 

付記

クラレは5月22日、米国のポバールフィルムのメーカーのMonoSol社を買収すると発表した。
MonoSolは、洗剤・農薬・染料などの個包装、人工大理石離型用など産業用ポバールフィルムではリーディングカンパニーの位置にある。
本件買収により、クラレはポバールフィルムに関し、偏光フィルム向けの光学分野だけでなく、広範な産業分野においてもグローバルリーダーとなるとしている。

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