建設アスベスト訴訟で国が3度目の敗訴 

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建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込んで健康被害を受けたとして、大阪や兵庫などの元建設労働者や遺族ら計30人が、国と建材メーカー41社に計6億9300万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は1月22日、規制に遅れがあったとして国の責任を一部認め、原告14人に計9746万円を支払うよう命じた。

同様の集団訴訟は全国6地裁で起こされ、判決は4件目で、国の違法性を認めたのは2012年の東京、2014年の福岡両地裁判決に続いて3件目。
メーカーの賠償責任はいずれも認めていない。これについて弁護団は控訴するとしている。

1月29 日には京都地裁で5件目の判決が言い渡される予定。


判決のポイントは以下の通り。

1)労働者が防塵マスクを着用するよう事業者に義務づけるべきだった時期 (国が実際に義務化したのは1995年)

   今回の判決

・国は遅くとも1975年には、石綿吹き付けなどに従事した作業員が石綿関連疾患を患う危険性を認識できた。
・国は1975年時点で、事業者に対して労働者に防じんマスクを使用させるべき義務を明示的に定めるべきだった。

東京地裁
 
石綿の吹き付け作業では1974年、切断などでは1981年に規制の義務を負っていた。

福岡地裁
 
国は遅くとも1975年から罰則付きでマスク着用を義務づけるべきだった。

2)「一人親方」

 今回の判決

個人で仕事を請け負い、企業に雇われる労働者に当たらない「一人親方」は、労働関係法令の保護対象ではないとして賠償を認めず。

 東京地裁
 
 零細事業主や個人事業主について国は責任を負わない。

 福岡地裁
  
一人親方は個人事業主で労働基準法が適用される労働者に当たらない。

3)メーカーの責任

福岡地裁訟の判決が、どの企業の製品で健康被害を受けたかが具体的に示されていないとしてメーカーへの請求を退けたことから、今回の原告側は、従事していた作業内容などから原告ごとの原因企業41社を絞り込んだ。

 今回の判決

それぞれの被害者が実際に扱った石綿建材を具体的に特定するものではない。
石綿含有率が低い建材が一律に除外されていることも問題とした。

 東京地裁
 
 石綿を含有した建材の製造販売企業に共同不法行為は成立しない。

  福岡地裁
 
  加害企業の特定が出来ない。
   「建材メーカーは製造販売の時期や製品がそれぞれ異なり、加害行為の一体性を一律に認めることはできない」
   「42社以外に損害を与える企業がなかったと証明されていない」

4)1995年にクロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)の製造を禁止した際、クリソタイル(白石綿)を禁止しなかったのは著しく合理性を欠くとした。

国内で危険性が明らかになり、海外でも規制が進んでいたのに、2006年まで販売が続けられていた。

ーーー

過去の判決は下記の通り。

屋外型の横浜建設アスベスト訴訟
横浜地裁 (2012/5/25)
訴訟 建設現場でアスベストを吸い込み、肺がんなどを発症した建設労働者や遺族計87人が、国と建材メーカー44社に総額約29億円の損害賠償を求める。
結論 原告の請求を全て棄却
理由 「1972年時点で、石綿粉じん曝露により肺がん及び中皮腫を発症するとの医学的知見が確立した」

2006年に至るまでアスベスト建材の使用を全面禁止しなかったこと等について、「著しく合理性を欠く」と言うことまではできない。

屋外型の東京建設アスベスト訴訟
東京地裁 (2012/12/5)
結論 国に対する請求を一部認容
賠償金 170人に総額10億6394万円の賠償命令
理由
1) 国は石綿の吹き付け作業では1974年、切断などでは1981年に規制の義務を負っていたが怠り、違法だ。

遅くとも1981年以降は
・事業者に防じんマスクの着用を罰則つきで義務づける
・建材に「肺がんなどを生じさせる」と警告表示する――
などの対策をとれば、多くの被害を防止できたと結論づけた。

2) この時期以降に屋内で建築作業に従事した労働者に限り、国の賠償責任がある。
3) 屋外作業では危険性を容易に認識できたと言えず、零細事業主や個人事業主についても国は責任を負わない。
4) 石綿を含有した建材の製造販売企業に共同不法行為は成立しない。
詳細 2012/12/10 建設労働者アスベスト訴訟、国に初の賠償命令
屋外型の九州建設アスベスト訴訟
福岡地裁 (2014/11/7)
結論 国に対する請求を一部認容
建材メーカーへの訴えは却下

「一人親方」などの原告15人については認めず。
賠償金 36人に総額1億3700万円の賠償命令
理由 建設現場での防じんマスク着用は「被害防止対策としては唯一有効な手段」

国は遅くとも1975年までには石綿被害の危険性を認識できた。
同年から罰則付きでマスク着用を義務づけるべきだった。
危険性を知らせる警告表示について、建材や建設現場などで義務づけるべきだった。

1995年まで国がこうした規制を怠ったのは「違法」

一人親方は個人事業主で労働基準法が適用される労働者に当たらない。

建材メーカーについては加害企業の特定が出来ないとした。
「建材メーカーは製造販売の時期や製品がそれぞれ異なり、加害行為の一体性を一律に認めることはできない」
「42社以外に損害を与える企業がなかったと証明されていない」

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大阪府の泉南地域のアスベスト紡織工場の元従業員とその遺族89人が、規制の遅れで肺がんになったなどとして国に賠償を求めた2件の集団訴訟(大阪アスベスト訴訟第1陣、第2陣)で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は2014年10月9日、規制権限を行使しなかった国の対応を違法とする判決を言い渡した。

「粉じん排気装置の設置義務化」で原告主張を認めたもので、「濃度規制強化」と「マスク着用義務化」の遅れを理由に2審で賠償が認められた1名は逆転敗訴となった。

アスベストの健康被害では、全国で830人余りが14の裁判を起こし、国や企業に対し総額で265億円余りの賠償を求めている。

最高裁判決は、原告によっては直ちには影響しない。

アスベスト工場従業員 影響を与える可能性あり
周辺住民 影響を与える可能性あり
但し、1975年以前に周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見がなかったことをどう判断するか。
建設現場でのアスベスト製品の使用(屋外、屋内) アスベスト製品の使用であるため、「排気装置義務付け」とは関係なし。

「防じんマスクの着用義務づけ」は「石綿工場の粉じん対策としては補助的手段に過ぎない」が、建設現場では主な手段であるため、裁判での争点となる。


2014/10/10 アスベスト訴訟、最高裁 「国に責任」の判断

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