農薬・種子業界の合併に関する米国上院のヒアリング

| コメント(0)


米国上院司法委員会が9月20日、農薬・種子業界の合併についてのヒアリング("Consolidation and Competition in the U.S. Seed and Agrochemical Industry")を行い、最近、合併・買収を決めたBayer と Monsanto、DuPont と Dow Chemical 、及び Syngenta のトップが出席し、証言した。


Syngenta を買収したChina National Chemical Corp.は出席を求められたが拒否した。

2016/8/15 EU、Dow とDuPont の合併で調査開始

2016/2/5 中国化工集団(ChemChina)、スイス農薬のSyngentaを買収 

2016/9/19 Bayer、Monsantoを買収

米国でも上院の委員会が合併についてヒアリングをするのは異例で、通常は大きな合併の件でも小委員会が扱う。なお委員会は合併を承認するかどうかを決める権限は持たない。

開催を決めたアイオワ(農業州)選出の上院議員で委員長のChuck Grassley は開会に当たり、次のとおり述べた。

バイオ種子産業には大企業が6社ある。Monsanto, DuPont, Syngenta, Bayer, Dow and BASFで、これらが互いに争いつつ、クロスライセンスで協働している。

Big Six のうち、5社が買収や合併を進めており、さらに集約される。

最近は、カナダの肥料会社 Potash Corp. とAgrium が合併を発表した。

2016/9/16 カナダ肥料大手2社が統合 世界最大に

農産物の価格が下がり、農民は苦しんでいる。そのなかでの合併の波はツナミとなった。

大企業が同時に統合するのが競争に悪影響を与えるのを懸念する。農民の選択の余地が減り、価格が上がり、結果として消費者の選択とコストに影響を与えるのを懸念する。農業セクターの技術進展を導く研究開発が減るのを懸念する。

ChemChinaによるSyngentaの買収は別の懸念を生む。ChamChinaは中国の国有企業であり、中国政府がいろんな点で関与する懸念がある。

司法省とFTCは農務省の意見も入れて協力して対応して欲しい。(司法省がDow - DuPont 合併を担当、FTCがChemChina - Syngenta を担当)

各社の証言は次のとおり。

DuPont (Executive Vice President)

・合併は補完的である。
・合併は成長を産む。
・農民に比類のないイノベーションを与えることが選択ではなく必須である。
・米国の農民に高い生産性と収益性をもたらす強力なグローバルメーカーを創るのが必要

合併は、優れた製品をその価値に合った価格で供給することで農家に影響を与える変化に対応し、最終的に農家の生産性と収益性を高める。

Dow (President and CEO of Dow AgroSciences)

我々の合併は競争を減らすのではなく、競争を増やすものだ。

・Dow とDuPont の製品は補完的で、これまで余り競合していない。
・合併で規模と効率が上がり、コストが低減、利益がイノベーションと農民にとってより価値ある製品をつくるのに使われる。
・合併はR&D能力を高め、更なるイノベーションを産む。

合併は米国の農民、国にとって、真の win-win の解決策である。

Syngenta (CEO)

誰が所有者かに関係なく、農家は需要家であり友人である。ChemChina とSyngenta はグローバルな食糧安定保障に寄与する。

ChemChinaによるSyngenta の買収は競争上の問題を生まない。地域的な競合はない。

ChemChinaの投資でSyngenta のR&Dの強化ができる。ChemChina は上場企業でないため、長期的な投資が可能となる。

株主が替わるだけで、Syngenta はSyngenta であり続け、今までと同じ戦略、マネジメント、従業員、文化のSyngentaである。

合併は既に先月に、外国企業による米国事業の買収の審査をする対米外国投資委員会(CFIUS)による審査を通っており、国家安全保障問題はクリアした。

合併は、米国の農民にとって、需要家にとって、従業員にとって、業界にとって良いものである。

Bayer (President & CEO, Bayer CropScience)

Bayer と Monsanto の組み合わせは完璧なもの
・Bayer は農薬のリーダーで、70%は北米以外
・Monsanto は種子のリーダーで、70%は北米。

Bayer はデジタル農業を進めているが、農家の将来のニーズに対応する新しいカスタマイズされたツールを共同で開発したい。

委員長と同じアイオワ生まれであり、農民である私は将来に楽観的である。

* Degital Farming:
Bayerは
作物の生育状況の診断ソフトを提供する独企業を買収、農地ごとの最適な農薬選びや投与する量・時期、感染病対策などを伝えるサービスとして展開する。
また昨年にはカナダ企業から、衛星画像を使った地質情報システムを買収した。地質データとも結びつけ、農薬の効率的な使用や、土壌への影響を抑えた農法の提案につなげる。

Monsanto (Executive VP, Chief Technology Officer)

絶えざるイノベーションにより農家に真の価値をもたらして初めて、我々の事業は行える。

新しい技術に投資し、R&Dのペースを加速することで農家の役に立つし、それはまた競争を生む。


このほか、American Farm Bureau Federation、National Corn Growers Association、National Farmers Union の代表とAmerican Antitrust Instituteの会長の証言があった。


個別の証言は http://www.judiciary.senate.gov/meetings/consolidation-and-competition-in-the-us-seed-and-agrochemical-industry


コメントする

月別 アーカイブ