Bayer、Monsantoを買収

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Bayerは9月14日、Monsantoの1株128米ドルの現金での買収で合意したと発表した。

債務を含む買収総額は約660億ドル、債務除きでは570億ドルの買収で、9月6日に提示した1株 127.50ドルからさらに引き上げ、ようやく合意にこぎつけた。
買収価格は、Bayerが書面で初めて提案を行う前の5月9日のMonsanto株価に44%上乗せした水準である。

買収は2017年末までに完了する見通し。

買収資金は債務と株式の組み合わせで賄う方針で、株式部分に関しては強制転換社債と株主割当発行を通じて約190億ドルを調達する。金融機関が、570億ドルのつなぎ融資を行うという。

統合会社の農業部門は、種子関係と北米の営業本部は(Monsantoの)St. Louis, Missouri に置き、本部と農薬部門はMonheim, Germany に置く。

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Monsanto は5月18日、Bayer から買収提案を受けたと発表した。Bayer の5月23日の発表では、1株当たり122米ドル、総額620億ドルで買収 で、これは5月9日の終値に37%のプレミアムとなる。

Monsantoは取締役会がBayerの提案内容を吟味していると述べたが、Bayerは7月初めに、買収価格を 122ドルから125ドルに引き上げると通知した。5月9日の終値に40%のプレミアムを乗せたものとなる。全株を取得すれば635億ドルとなる。

Monsantoは7月19日、この提案を安すぎるとして再度拒否した。交渉は続ける。

Bayer は9月6日、127.50ドルに引き上げた。

今回、128ドルで決着した。

Bayer の一部株主は買収額が高過ぎ、製薬事業軽視につながる恐れがあるとして、警戒感を示している。

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Bayerは2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を Lanxess として、2015年9月にはMaterial Science部門をCovestro として分離独立させ、純粋なLife Science 会社になっている。

2015/9/2 Bayer のMaterial Science 部門、Covestro として分離独立

2015年の(Covestro分を除いた)Life Science の売上高は343億ユーロ(うちCrop Science が30%、Healthcareが67%)であるが、Monsantoを含めると471億ユーロとなる。
統合では Crop Science が49%と約半分を占めることとなる。

世界の農業会社では、Syngentaを買収したChemChina、DuPont/Dow合併後のDuPont/Dow Agriculture、BASFの各社を大きく上回ることとなる。

2016/2/5 中国化工集団(ChemChina)、スイス農薬のSyngentaを買収

2015/12/14 Dow と DuPont、経営統合を発表

また、将来の事業の元となる投資額についても、他社を大きく上回る。

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問題は各国の独禁当局がどう動くかである。

DowとDuPontの合併は難航している。

両社は本年6月22日に欧州委に合併計画を提出した。問題点を指摘されたため、7月20日に欧州委の予備的な懸念を解決するため対応策を示したが、同委は深刻な懸念の払拭には不十分だとみなした。

欧州委員会は8月11日、農薬 (Crop protection) や種子、特定の石油化学製品などの分野で市場の寡占を招く可能性があるとして、合併の是非を見極める 精密調査(in-depth probe)に着手したと発表した。調査期間は90日で、12月20日までとなっている。

しかし、欧州委員会は9月初め、調査を中断した。
合併の詳細と、欧州の農業市場での競争への影響について、もっと資料が必要としている。

今回のケースも、米国やカナダ、ブラジル、EUなどの規制当局が時間をかけて、買収を精査する公算が大きい。Monsantoでは買収承認申請を約30地域で行う必要があるとの認識を示した。

規制当局が買収を認める確率は5割と予想するアナリストもいる。

7月初めの値上げ提案時には、Bayerは「独禁当局の認可取得に自信があり、もし認可が得られない場合、15億ドルの "reverse antitrust break fee"を支払う 」としたが、最終交渉ではこれが20億ドルとなっている。 


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