トランプ政権、Bannon主席戦略官を更迭

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米ホワイトハウスは8月18日、トランプ米大統領の最側近である Steve Bannon首席戦略官・上級顧問が同日付で退任すると発表した。

大統領はこの数日、Bannon氏へのいら立ちを内々に吐露していた。

Bannon氏は米メディアThe American Prospect とのインタビューで、

ホワイトハウス内で対立するGary Cohn 国家経済会議(NEC)委員長らの名前を挙げながら「毎日が闘いだ」と政権内の確執を暴露。
("That's a fight I fight every day here," he said. "We're still fighting. There's Treasury and Gary Cohn and Goldman Sachs lobbying.")

さらに「我々は中国と経済戦争中だ。(詳細後記) 北朝鮮問題は余興に過ぎない。軍事的解決などあり得ない。忘れて良い」と述べ、トランプ氏が排除していない北朝鮮問題の軍事的解決を否定した。

8月12日に、白人至上主義団体と反対派の衝突で女性が死亡したが、トランプ大統領の発言に各界から批判が強まり、米製造業評議会と戦略・政策評議会を解散する事態に発展した。

大統領の本事件についての発言:

8月12日
 「Alt right (alternative right ) を突撃したAlt left はどうなのか?彼らはゴルフクラブを振り回していた。彼らにも問題がある。」 
 「様々な側から(on many sides)もたらされる憎悪、偏見、暴力に、可能なかぎり最も強い言葉による抗議を表明する」

8月14日 上記を批判され、Whitehouseが準備
 「人種差別は悪だ。その名のもとで暴力を振るう者、KKKもネオナチも白人主義者も、そのほかのヘイト・グループを含む人々は、アメリカ人が大切にする全てのものと矛盾している」

8月15日 別件の会見で急に質問され、本音が出た。
 「責任は双方にある」「一方に悪い集団がいて、もう一方にも非常に暴力的な集団がいた。だれも言いたがらないが、私は今ここでそう明言する」

Bannonは白人至上主義者として知られ、反ユダヤ主義者として非難されてもいる。Alt rightの運動と密接な関係があり、大統領の発言はBannonと結びつけられた。

政権運営の安定化を図るため、人種差別的な言動で知られるBannon氏をKelly 大統領首席補佐官が事実上、更迭した。


右派系ニュースサイトBreitbartNewsは、Bannon氏が会長に復帰したと発表した。

大統領はTwitterで以下の通り述べた。

I want to thank Steve Bannon for his service. He came to the campaign during my run against Crooked Hillary Clinton - it was great! Thanks S

Steve Bannon will be a tough and smart new voice at BreitbartNews ... maybe even better than ever before. Fake News needs the competition!



Bannon氏は経済ナショナリストを自任、政権内のJared Kushner 大統領上級顧問 (Ivanka Trumpの夫)やGary Cohn米国家経済会議(NEC)委員長らの国際協調派と対立していた。
Cohn委員長は退任の噂があったが、残留するとみられる。

Bannon氏は白人至上主義者として知られ、反ユダヤ主義者として非難されてもいる。

右派系ニュースサイトBreitbartNewsの会長であったが、大統領選ではトランプ陣営の最高責任者を務め、白人労働者層にしぼった選挙戦術で大統領誕生に貢献した。

経済ナショナリストを自任、メキシコ国境の壁、イスラム圏からの入国禁止、パリ協定離脱などの政策を主導した。NAFTA即時離脱も主張した。

「中国との経済戦争が最も重要」とし、中国に対する301条調査(鉄鋼、アルミ、知財)を主導した。

The American Prospect とのインタビューで、次の通り述べた。

「我々は中国との経済戦争をしている。私には中国との経済戦争が最も重要だ。我々は熱狂的にここに集中しなければならない」とする。
  ("We're at economic war with China. To me the economic war with China is everything. And we have to be maniacally focused on that.)

「米国と中国のどちらかだけが25年か30年後に覇権国家として残ることになるだろう。我々がこの道で倒れたら、中国が覇権国になるだろう」と述べた。
 (One of us is going to be a hegemon in 25 or 30 years and it's gonna be them if we go down this path. )

具体的対策としては、今回の知財、前回の鉄鋼とアルミを対象とする301条調査を挙げた。

ーーー

トランプ政権は発足半年で、政権内の多くが入れ替わった。上記のとおり、Bannon氏と「国際協調派」との政策の争いも激化していた。

Kelly首席補佐官が7月31日に就任、「Whitehouseに規律を取り戻す」とした。今回のBannonの解任で、ようやく落ち着くとみられる。

就任 退任
2/13 Michael Flynn大統領補佐官(国家安全保障担当)辞任
(就任前にロシア駐米大使と協議した疑惑)
2/20 Herbert McMaster 陸軍中将 大統領補佐官(国家安全保障担当) 就任
6/2 Mike Dubke 広報部長辞任(ロシア疑惑)
Sean Spicer 報道官が広報部長兼務
7/21 Anthony Scaramucci (政権移行チームの幹部)、広報部長に就任(広報の経験なし)
Sean Spicer 報道官 辞任(Scaramucci 広報部長に反対)
Sarah Sanders副報道官、報道官就任
7/28 Reince Priebus 大統領首席補佐官 解任
  Scaramucci 広報部長に反対。ホワイトハウス内からの相次ぐリークに関して責任があるとされた。
7/31 John F. Kelly (前国土安全保障長官)、大統領首席補佐官 就任

「Whitehouseに規律を取り戻す」
  大統領執務室への自由な出入りを禁止

Anthony Scaramucci 広報部長解任(就任10日、Kelly首席補佐官が解任)

 退任後、Scaramucciは、Bannon首席戦略官がトランプ大統領のアジェンダ遂行能力を妨げていると批判

8/12 Charlottesville, Virginia 白人至上主義者と反対派の市民との間で衝突、女性死亡。

大統領の発言で、米製造業評議会と戦略・政策評議会から辞任が相次ぐ。

BannonはAlt rightの運動と密接な関係があり、大統領の発言はBannonと結びつけられた。

8/16 Sarah Sanders 報道官、暫定広報部長に任命(トランプの企業の広報を担当していた28歳の女性)
8/16 米製造業評議会と戦略・政策評議会を解散(実際には離脱が相次ぎ、存続不可能であった。戦略・政策協議会は解散を決めていた。)
Twitter : Rather than putting pressure on the businesspeople of the Manufacturing Council & Strategy & Policy Forum, I am ending both. Thank you all!

 
当初はメンバーの辞任に対し、代わりはいくらでもいるとしていた。
 For every CEO that drops out of the Manufacturing Council, I have many to take their place. Grandstanders should not have gone on. JOBS!

8/18 Steve Bannon首席戦略官 実質解任


しかし、問題は解決していない。

大統領の支持率は下がったが、30%程度でとどまっているのは、トランプに投票した Alt right や白人労働者などの支持層があったためとされる。これらが離反するリスクがある。

Bannonが去っても、大統領自身の考えが変わらないと、支持率は上がらないだろう。

政界も財界も、大統領と一線を画そうとしている。

とりあえず、9月末までに予算案と債務上限引き上げを通す必要がある。

2017/8/7 混迷の米議会、オバマケア代替法案を決められず、夏季休会入り 

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